二次創作小説

劇場の君(1)


パチパチパチ・・・

まばらではあるが、拍手が沸き起こる。舞台上では愛しのあの人が優雅にお辞儀をして袖へと去っていった。今日もまた、彼は舞台上の誰よりも美しかった。

私は彼が見えなくなったのを見届けてから立ち上がった。



『今日こそは絶対に中に入れてもらうんだから!!』




――――――

彼と出会ったのは、つい数日前にこの廃墟のような建物にぞろぞろと人が入っていくのを見かけた時だ。その時偶然入ったこの場所で、私は絶世の美女と・・・舞台に立つ彼と出会った。

西ブロックの住民がこんな何もない所に集まってくるなんて・・・。と、なかば訝しみながら列に続いて入って行った。食べ物があるわけでも、ましてや服があるわけでもない。何の変哲もない建物。前方にお粗末なステージがあるだけの殺風景な館内。

何よ。ただの空家じゃない。来て損したわ。
私は静かにそこを立ち去ろうとした。と、入れ違いに入って来た客らしき男に声をかけられた。



「何だ?舞台はまだ始まってもいないだろう?どうして帰るんだ?」

『・・・舞台?』



私はその時、相当間抜けな顔をしていたんだと思う。



「何だ?そんなことも知らずにやって来たのか?よし、今日は特別に俺がおごってやるよ。ちょっと見て行けって。






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