短編小説
殺してくれと、私は言った(1)『殺してくれないかな?』
余計な物が一切ない、シンプルな彼女の部屋。コーヒーを飲み終えると、そう彼女が話を切り出した。
「えっと、それは何の冗談・・・?」
『・・・』
彼女の目は真っすぐこちらを見ていた。少しもふざけているようには見えない。
「・・・正気か!?ちょ、待ってくれよ。俺達付き合ってもう半年だろ?お互いの悪い所も良い所もいい加減分かってる。これから結婚して一緒になろうって時に、それが彼氏に対して言う台詞かよ?ふざけるなよ。俺にはお前を殺すことなんか出来ない。」
勢いよくテーブルを叩いた勢いで、コップがカタカタと揺れた。
『別に、今すぐにってわけじゃないよ・・・。』
ぽつりぽつりと彼女は語り出す。
『もう知っていると思うけど、私病気なの。今の医学では、治ることはない。』