短編小説
彼女こそが獣である(1)「シャーッ!」
僕の彼女が唸り声をあげた。
同棲を始めて早1ヶ月。未だに僕に慣れてくれる気配はない。
「はい、今日の夕食だよ。まだ熱いかもしれないから気をつけて食べてね。」
僕が皿の側を離れたのを見計らって、彼女が近づいてきた。用心深く皿の中身と臭いを確認し、ペろりと一口味見する。
と、どうやら味がお気に召したらしくガツガツと食べ始めた。
「あ、そんなに急いで食べたら・・・」
「んにゃっ!?」
熱さに飛びのく彼女。ようやく落ち着くと、また僕に向かって毛を逆立てた。
僕の彼女は猫舌だ。だからちゃんと注意したのに。舌を火傷したのは僕のせいじゃないんだけどなー・・・。
しばらくすると、やはりお腹が空いていたのか食事に戻っていった。そして綺麗に完食すると、いつもの場所へと歩いていった。僕は一度皿を片付け、彼女の後を追った。
ふかふかのベッド。そこに、彼女はいた。身体を丸めてすやすやと眠っている。僕は隣に座り、優しくその背中を撫でた。
小さく柔らかい。そして気高く美しく心を持った僕の愛しい彼女。
いつしか僕も隣で眠ってしまっていた。