短編小説
水槽に入った金魚達は(1)別れを切り出すのは容易だったの。だって私は何とも思ってなかったから。
水槽に入った金魚たちは
無意識に汗が流れ落ちるような暑い夏の日のことだった。
朝の9時を過ぎたころ、大欠伸をしながら女性が寝室から出てきた。薄手のタンクトップに下は下着という、何ともラフな格好だった。
「あれ?もう出るの?」
その言葉に玄関にいた男が振り返る。肌の大部分が露出した相手を見ても、特に表情を変えることはなかった。
「夕方には帰るよ。今夜は・・・そうだな、ピザでもとっといてくれ。」
「種類は?」
「任せるよ。」
女性は話をしながら冷蔵庫を開けて、目当てのものを探した。次に冷凍室を開けて舌打ちをする。
「・・・ねえ、あと帰りにアイス買ってくるのも忘れないでね。それから今日近くで夏祭りあるらしいから――」
「今日は大事な会議があるんだ。もう行かないと。」
言葉を遮って男性は扉を閉めた。それを見て女性は心の中で悪態をついた。
(まったく、これだから男ってやつは嫌なのよ。)