NO.6小説

カネズ★今もあの場所に(1)


今も、あの場所に

彼はとても、そうとても綺麗な目をしていた。

初めて彼に出会ったのは劇場で。さほど多くはないけれど、それでもこの西ブロックという恵まれない地域のわりには充分な客が入っていた。お粗末ながら、舞台に一筋の照明が差し込む。
そしてそこに優雅に現れたのが、“イヴ”そいつだった。



俺はすぐに惚れたね。
優雅な物腰に、魂をさらわれるような歌声。どれをとっても申し分ないほど素晴らしい。わざわざ娯楽のためだけに金を支払うこの客にも、なるほどこれは納得だ。

それから俺は、すぐにそいつのことを調べた。元新聞記者の腕を舐められちゃ困る。

一日目。イヴの身内を探すも手がかりなしだった。
二日目。一部の客に意見を求めたが、情報料をとられたうえ舞台の感想しか聞けなかった。
三日目。劇場舞台裏に忍び込もうとして、支配人に見つかり逃げ帰ってきた。

・・・とまあ、意気がってはみたものの、彼に関する情報はほとんどが闇のままだった。
分かったことといえば、彼が男でネズミという名の凄い俳優だということだけ。ちきしょう、俺の能力はこんなもんだったのかよ!




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