NO.6小説
紫ネズ★ぶつかる視線(1)・・・一体何度、繰り返したことだろう。
先程からこちらを見つめる視線。気になって振り返るが、目があったとたんに逸らされる。何が目的なのかもさっぱり分からない。ただ、自分が本に熱中している時に感じる無言の視線は、間違いではないはずだ。
『はあー。』
一つ溜息をついて立ち上がる。ああ、もう何度溜息をつかないという禁を破ったことだろう。こいつといると、緊張感というものが少しずつ欠落していくような気がする。
立ち上がると、気配で彼が驚いたようだと感じた。一体何に驚く必要があるというのか。背後は気にせず、そのまま扉へと向かう。