いつも同じ夢をみる。
夢の中でわたしは呼ばれる。
それがわたしの名前かどうかも
わからずに振り返る。
その人はひどくかなしげに、
それでいて怒ったように
わたしを呼び続けるのだ。
ごめんね
ごめんなさい
泣きながら謝罪のことばを叫び続ける。
きりきりと、締め付けられるように
胸が痛くて。
ごめんなさい、ごめんなさい。
叫び続けることがわたしの贖罪。
なのにそれは叶わないー。
目を開けると緑男の幼生、
ちいさな使い魔が心配そうに覗き込んでいた。
「…大丈夫だよ」
慰めるように、ちいさなからだを押しつけてくる
使い魔を両手で包み込む。
やさしいみどりの薫りに安堵する。
「しえみ」
気配もさせずに彼は後ろに立っていた。
身を屈めてわたしの顔を覗き込む。
「またこわい夢をみたのですか?」
「…ううん、大丈夫だよ。」
彼を心配させるのはいやだ。
わたしの大切な人。
わたしの唯一の家族で伴侶。
わたしの望みを叶えてくれる、わたしのかみさま。
きれいなお花、
みずみずしい草や木、
かぐわしい緑、
色とりどりの植物が咲き乱れる、
決して枯れることのないこの庭に
彼が連れてきてくれたのだもの。
「嘘はつかないでください。」
「嘘じゃ、ないよ?」
「涙の跡がついている。」
アマイモンの手が頬を撫でる。
長く黒い爪がわたしを傷つけないように
やさしくゆっくりと頬から首筋を伝う。
「ボクたちは夫婦なのだから、隠し事はよくないです」
「……はい、ごめんなさい」
「おいで。もうこわい夢などみないように、ボクがしてあげます」
そっと両腕がわたしを包む。
やさしい抱擁のあと、強くきつく抱きしめられ
キスをされた。
「愛してます」
「…わたしも」
この腕がわたしを守ってくれる。
この唇がわたしを愛してくれる。
彼の存在がわたしのすべて。
もう夢など見なくていい。
アマイモンの愛撫に身を任せながら、
ゆっくりと目を閉じた。
もう、彼以外の人の声など
聴かなくていい。
thanks:透徹