闇、病み、止み 第一章




結局…あの銀髪は付いて来た。
近付きたくなくてかなりの距離を取って歩くが、銀髪は俺にどんどん近付く。

最初は1m以上あった距離も、今は半分以下だ。

怖いのと慣れない感情が混ざって嫌な汗が伝う。


何も話したく無いから、俺はただ黙って歩く。
なのに銀髪が勝手に「あだ名は西海の鬼だった」「喧嘩で始めて負けた奴」「前に住んでいた所は海が綺麗だった」等と自分の事ばかり話す…
有り難いのはただ一つ。

俺について何も聞いてこない。

消したい過去、現在についても何一つ聞いてこない。
てっきり問い詰められるものばかりだと思っていたが……偶然だろう。


決してこれは、本当の優しさなんかじゃない。
偽善なら、誰でも誰に対してでも出来るものだ。優しさなんか…必要無いんだ。





‐‐‐‐‐


「…そんでよ、その時負けた相手がな…って、政宗。ここ、お前の家か?」


出来るだけ相手にも当たり障り無いような話をしていると、政宗がアパートの階段に上がって行こうとした。

「…そうだ。」

今日の帰り道で始めて政宗が口を開いた。

「なぁ!俺のアパートよ、こっから一分位の近所なんだよな!これも何かの縁だしよ…明日から一緒にいかねぇか?」


この好機を逃がすまいと俺は政宗の背中に呼び掛ける。

「要らない。」

政宗はピシャリと言い切ってしまうとそのまま自分の部屋に入って行ってしまった。


「『断る』じゃなくて『要らない』…か。ま、あいつ見た目からして低血圧っぽいし明日はなるべく早く来てやるか。」


無理矢理だろうと、強引だろうと…俺はできる限りの事はしてやりたかった。一歩を踏み出す事すら、慎重に。こんなだから、お人好しだなんて言われちまうのかもな。



転校初日。
俺には早速友達が出来た。


第一章 終







あとがき

やっと一章終わった…!!
一番最初に政宗が見てた夢は今後重要な鍵になってきます。恐らくかなり後で(笑)
これからも、こんな自己満足小説ですがお付き合い下さいませ!




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