愛くるしい




家に帰ると、政宗が窓辺で眠っていた。
ワシが政宗にあげたスウェットを来たまま、まるで猫のように丸まって夕日に照らされている。

聞こえるのは、スヤスヤとした寝息のみ。


起こすのも酷に思えてしまうがここで風邪を引かれては困る為に、やむを得ず起こす。


「政宗、帰ったぞ。こんな所で眠っては風邪を引く。」


そう声を掛けると政宗はゆっくりと目を開けて猫のような手つきで目を擦る。
こんなに可愛い動きをする生き物をワシは政宗以外知らない。


「あぁ、家康…帰ったのか…」


「あぁ、今さっき帰った。随分と可愛らしい寝顔だったぞ?」


そう言ってやると夕日に負けない位に頬が紅潮した。


「別に、可愛くなんかねぇよ…」


「そうか?ワシには世界一可愛い寝顔に見えたな!」


「か、勝手に言ってろよ…!」


ついにはそっぽを向かれてしまった…からかうとすぐに拗ねる。ワシがこれに弱いのを知ってか知らずか。


「ま、政宗…そう怒るな。ワシはあくまでも本心を言っただけでお世辞やそう言う類ではなくてな…」


「ンな事言われたら尚更恥ずかしいだろーが!」


あぁ…怒らせてしまった。いや、照れ隠しか?


「ははは、怒った政宗も可愛いなぁ。ほら、頬が真っ赤だ。」


試しにと頬をつついてやると、ワシに向かって裏拳が飛んで来た。
しかし、政宗の拳など片手で十分な程だ。軽く受け止めてやるとそのまま自分の方に引き寄せる。


「ふむ…やはり体が少し冷えてる。よし!ワシと一緒にベッドに寝ようか!」


「……もう好きにしやがれ。」


「そうか。じゃあ、早速行くか。」


ワシにしてみれば軽い政宗の体を抱き抱えてベッドに向かう。


ダブルベッドに下ろしてやると、政宗はすぐに布団へ潜り込む。


「やはり寒かったんだろ?ほら…ワシにくっつけ。暖をわけてやるから。」


「ん…」


もぞもぞと布団の中で身動ぎ、ワシの方に身を寄せて来る。それを出来るだけ優しく抱き締めてやった。


「政宗、いくら陽が暖かいとはいえ居間で寝ては風邪を引くだろう?」


「だってよ…家康待ってたら眠くなっちまったんだからしかたねぇだろ…」


まさか…ワシをずっと待って居てくれてたのか?


「そうだったのか…ありがとう。ワシは嬉しい…帰ったら待っていてくれる人がいるのが、こんなにも嬉しいものとはな…」


「うっせぇよ……待つに決まってるだろ…家康ともっと一緒に居てぇんだからよ…」

「素直なようで素直ではないな。正直に照れても良いんだぞ?」


「別に…照れてなんか…!」


「はは、隠さなくとも顔に出ているから安心しろ。」


「〜っ!」


からかってやればワシに背中を向けてしまった。子供のような単純な所もまた可愛いな…
しかし、背中を向けられただけではワシは引き下がらない。
背中から今度は暖めてやる。政宗は確か、背中が暖まると眠くなるらしい。全く子供だな。


「んー…家康…」


ほら、もう眠気眼だ。落ち着かせるように腕を前に回して優しくリズムを取るように腹を叩いてやる。


「眠ってもいいぞ?ワシも少し眠いしな…」


「家、康…」


「あぁそうだ。一つ忘れておった…」


そっと政宗の頬に口付ける。本当は唇が良いが、体勢が無理だ。


「お休み…政宗…」


「お休み…」


その後政宗は直ぐに眠った。何故か体を丸めてワシにくっついているのが不思議だが、まぁ可愛いから良しとしよう。
時々「んぅ…」やら「ぅあ…」やら色々な寝言が聞こえる。


試しにと頬を摘まんでみると、唸りながら政宗は眉を寄せる。
ここで起きて怒られるのは勘弁したいな…少し惜しいが、頬から手を離す。


さて、ワシもそろそろ眠気が来たな…

眠る前にと、政宗の頬にお休みのキスをした。
そして政宗を抱きしめながら訪れた眠気に身を預けた。















起きると、日はとっくに暮れていた。
隣には呑気な寝顔をした家康。

俺の体の冷えは既に家康の体温に温められていた。
滅多にする事は無いが、俺からのお礼として家康の唇にキスしてやる。
たったそれだけなのに、顔が赤くなるのがわかる。

時々バカポジティブな家康にベタ惚れしてるって、改めて俺は自覚させられてしまった。



-END-





素直じゃない政宗が書きたかったんです(笑)家康はバカ正直な感じが好きです、私的に←



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