闇、病み、止み 第一章




政宗の表情がいっそう険しくなったが、俺は見ないフリした。ここで引いては、信頼も何も得られない。


「勝手に、しやがれ…」


そう政宗は言うが、重ねた手は小刻みに震えていた。

政宗の手は想像以上に冷たくて、ずっと握ってあっためてやりてぇ。
けど、俺はいつまでも此処にいるわけにはいかない。

授業時間になって、俺は明智先生に戻るよう言われ渋々教室に戻った。戻っても、特に誰も何も聞かなかったのは幸いだった。

だが俺は、まだ知らなかった。隣にある政宗の机の中身をまだ見た事がなかった。











放課後、俺は再び保健室に向かった。

「明智先生、政宗は…?」

「あぁ…元親君ですか。政宗君は、ベッドで寝ていますよ…」


一つだけ仕切られたカーテンを開けると、小さく身体を丸めて眠っている政宗がいた。


「すー…すー…」


「良く眠っているでしょう…ついさっきまでは、うなされていたんですよ…?」


「…そう、か…なぁ明智先生…政宗が目ェ覚ますまで、此所に居させてはくれねぇか?」


此所に居て、政宗が目を覚ますのを待ってやりてぇ…目を覚ましたら「おはよ」って言ってやりてぇ…


「それは構いませんよ…?ただ、政宗君はどんな反応を示すか解りませんがね…」

「それでも良い…ダチだったら、一緒に帰るだろ?」


(たった一日もせずに…傷ついた政宗君を友達と呼べる…彼は、不思議ですね…)

「そうですね…では、暫く待ってあげてください…政宗君にとっては、久し振りの休養ですから…」


「あぁ…解ってる…」


ベッドのすぐ隣りに俺は腰掛けて、静かに政宗を見守る。

保健室の窓から夕日が差し込み始めても、政宗はまだ目を覚まさなかった。
まだ…穏やかに眠ったままだ。


内心じゃ、このままずっと居られたら良いのに…なんて思っちまう俺も居た。










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