愛するが故に






嗚呼、「愛しい」と


体が、


 血が、


  肉が、




   彼を求める。


これも全て


    愛するが故。





戦場で、俺様の主君は輝かしい程の正義を振りかざして敵兵を一網打尽にする。

その正義が自分の為ではなく、彼の師の為であっても。

泥や砂埃が舞う戦場。その中で本陣からでも解りそうな程輝く赤。そしてお揃いの色に染まって倒れていく敵兵。


(あんた達も光栄に思いなよ…旦那と同じ色着て死んで行けるんだから、さ。)


そう思いつつ、佐助は木の上で影となり潜む。

あの滑らかで美しい肢体、引き締まった体。未だ指一本すら触れた事のない素肌。

きっと暖かいのだろう、優しさを秘めた温度をしているのだろう。自分のように「道具」として育っておきながら、「人」として育った彼に触れるなどおこがましい。


けれど、所詮人は人。抗おうにも、暗く深い欲望は募るばかり。

あの血はさぞかし美味だろう。
あの肉はきっと柔らかいだろう。
あの身体は、



俺の全てを攫って行くだろう。


そんな妄想に入り浸り始めていた。


初めて我が主君の髪に触れた日の感触を覚えている。
柔らかくて、それでいて血管が通っているのではないかと疑うほどに暖かかった。


その髪に触れてから何もかも、忍としての心得をも攫われたのを佐助自身気づいていていなかった。


―――折角の機会だ。あの血に触れてみよう。


この気持ちを『愛』と呼ぶのだろうかと、影は苦無を手にして主君の背後にてほくそ笑んでいだ。



-END-





初めて書いた佐幸が独白でしかもヤンデレって…これはヒドイですね、はい←

もっと甘いのを書きたいと思っている今日この頃…!




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