……え、誰?





四国では南蛮から武器や珍しい食べ物を仕入れた。
当主である元親は、それらを一つ一つ確認していた。


「これは…あぁ、この前源太と七之助が欲しがってたやつか。あとは……ん?」



一つ、荷物に紛れた真っ黒い瓶。持ち上げると、ちゃぷんと何か液体が入った音。

「酒…か?誰も酒なんか頼んでねぇのによ…もしかしたら、商人からのオマケって奴か?なかなか粋じゃねぇか!」


まずは味見だと早速栓を抜いて匂いを嗅ぐ。
甘酸っぱい、果実のような香りを鼻に感じる。


「…果実酒ってやつか?政宗がくれたやつとは少し違う匂いだが…」


味に期待しつつ、僅かに口に含む。



…甘い。


酒の味等感じられない程甘ったるい。


「…何だこれ…蜂蜜みてぇに甘い…っ…」



しかし、直後に元親を目眩が襲う。酔ったわけでもない。そもそも酒にはかなり強い。


(まさか…毒か…!?)


対処を考える間も無く、元親はその場に倒れた。

その音を聞いた家臣によって元親はすぐに発見され、元親は部屋に運ばれて行った。













その頃の奥州は…



「もーとーちーかー…」


「…呼んでも来ませんぞ。」

「会いてぇよー…寂しいんだよー…」

「政宗様…だからといって政務を疎かにすべきではありません。いつもいつも、貴方様には家臣の模範となり、また民の為にも…」


今日何回目かのお小言に、政宗はうんざりした。


「OK…解ったよ…」


遠い遠い四国の地に、政宗は想いを馳せた。


(元親…会いてぇよ…寂しくて死にそうだ。)


人肌が恋しい冬の始まりかけ、仕方なく政宗は上着を羽織って囲炉裏に火を付ける。









それから数日後、奥州に来客があった。


「筆頭おおおぉぉ!」

何人ものリーゼントが、政宗の部屋になだれ込んだ。

「what!?何だよいきなり…!」


「し、四国の長曽我部がきやした!」

「けど、変なんスよォ!」


「…変?」

元親が訪れただけで今にも駆けて行きそうだったが、部下の報告に一瞬動きが止まった。


「どう見たって童子なんスよ!!」


「童子…?」


言っている意味が解らなくて、政宗は取り敢えず門まで行く。






「お、政宗!悪いな、こんな姿でよ!」


門の前に立っていたのは、紛れも無い元親だった。しかし…やはり小さかった。


「元、親…?」

「そうだ。」

「これって…元親の小さい時の姿なのか?」

「どうやらそうみてぇだな…ったく…ややこしい事になっちまったぜ。」


子供元親は、ガシガシと頭を掻いた。政宗はただ食い入るようにそれを見ている。


「どうした?さっきから黙りこくって…」


「……と…」

「あ?」

「very cute!!」


そう言って政宗は元親に抱き付いた。


「うおぉ!?」


突然の抱擁に元親も驚きを隠せなかった。

「髪もすげぇフワフワなんだな…!それに目もでけぇ…!元親って子供の時から俺を魅了するんだな!」


最早興奮のあまり意味不明な事を言い出すようになってしまった。

「いや…でもよ…なんか女々しくねぇか…?」


「それもギャップがあって良いじゃねぇか!俺は好きだぜ?」


その言葉に、元親は少なからず救われたのだった。

立ち話するよりも、暖かい部屋でゆっくりとしたかった政宗は元親の手を引いて(本人は繋いでるつもり)部屋まで向かった。
小十郎も元親の姿を見て最初は目を丸くさせていた。

でも、少し経てば俺と元親は普通に談笑していた。

ふと、元親が暗い表情をした。

「…ん?元親、どうしたんだ…?」


「いや…急に怖くなってよ。もし、またここから成長する事になったら…もし、一生このままだったら…ってな。」


「元親…」


確かに、元親は国一つを統べる主だ。このままでは、戦にも出られない。


「守りてぇ物を守れねぇなんて…男として不甲斐なさ過ぎるだろ…今の俺じゃ、政宗すら守れねぇ…」

その言葉の重みを、同じ主として政宗もひしひしと感じた。


「戻れるさ…絶対に戻れる。俺が薬を作ってやる…絶対に…元親の大切な物は消したくねぇ…俺は、元親が大好きだから…」


そう言って、政宗は元親を抱き締めた。いつもなら恥ずかしがってこんな事はしないのに。


その行動に、元親も驚いて目を見開いた。そして、言葉には胸打たれた。

小さな手を、そっと背中に回した。


「ありがとよ…そう言ってもらえると心強いな…」


「だろ?だから…元親は心配要らねぇ。元親が守れねぇなら、俺が守る。代わりになれるかどうか不安だけどよ…できる限り頑張るし…」


「そんな必要ねぇ。そんな無理したら、政宗が潰れちまう…」


子供の顔だが表情は暗い。政宗の心が、きゅうと締め付けられた。


「元親…kissしたい…」


「ま、政宗っ…!?」


「せめて…今の俺には、これ位しか出来ねぇから…」


顔を真っ赤にさせながら、元親に抱き付いたままそっと唇を重ねる。その唇は緊張で震えていた。


「んっ…」


「ん…………んッ…!?」







異変はすぐだった。

政宗とのキスに浸ろうとした元親の体が突然熱を帯び始めた。
その異変に気付いた政宗はすぐに唇を離そうとした。

しかし、それは元親に阻止された。
後頭部を掴まれ、離れられない。
徐々に元親の熱は上がり続ける。


「んッ…んん…」


徐々に深く激しいキスに変わり、主導権は完全に元親のものだった。


「はぁ……はッ…」

政宗がようやく開放されて元親の姿を見ると思わず絶句した。
あどけなさ残る子供から、立派に成長した後の元親が目の前に居た。


「も、とちか…?」


「…そうだ。他の奴に見えちまったか?」


政宗が見間違う筈が無い。紛れも無い元親の姿を見て、政宗は元親に飛び付いてその拍子に押し倒してしまった。


「うおっと!?…おいおい、接吻の次には押し倒すって…まさか誘ってるのか?」


「…遠くは無い…」


「へぇ…んじゃ、早速頂くぜ?けど、その前に…」


「何、だ…?」


「すっげぇ嬉しかった…政宗がさっき言ってた事…俺にとっては至宝だ。だが、やっぱり俺は守りてぇ側だな。お前も、民も。」


「解ってる…俺も、元親も民も守ってみせるからな。」


「そうかよ…有り難いなそりゃ。」



再び2人はキスを交わす。



そして、二つの影は一つになった。





-END-





遅くなって本当に済みません!
ようやく完成です^^

ちび元親は寸法を小さくするか子供にするか迷いましたが、姫若子可愛いかなーと思って子供にしてみました。姫若子要素無いですが←

リクエストありがとうございました!




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