ここの所天気が駄々をこねていたのか生憎の空模様が続いていたが、今日は快晴。春の日差しを感じさせる温かな日差しと風が注がれていた。しかし、この場はそんな温和な周りの状況とは少しだけ違っていた。


滅多に使われる事がないからなのだろうか。唯一設置されている蛍光灯は切れている為に、点けても両端の黒ずんだ部分を僅かに光らせるだけ。それでも扉を全開にすれば中の様子を見渡すには十分な光があるから今の時間は困らない。
後で終わったら職員室にでも行って新しい蛍光管を貰って来よう。但し、誰か先生を呼んで来ないと替えられそうにはない、という問題を除けば。


野木崎優那は手に持っていた段ボール箱を足元に下ろすと煩雑な倉庫を一人見渡し、盛大な溜息を付いた。

元々は、他のクラスの生徒数名も一緒だった筈だ。朝方にHRで呼び出しを受け、昼休みに職員室へ行った時には確かにいたし、担当教師に元気よくはいと答えていた筈なのに。遅れるにしては幾らなんでも時間が押し過ぎている。


「サボりかこんにゃろう……!」


ありがち、と言えばそうだろう。
体育祭などの校内でのスポーツ行事を除けば、たまに雑用を言い渡される程度の体育委員だが、実際にその雑用が嫌いな者もいる。行事に参加するのは大好きだというなら、最初から最後までやれと文句を言いたいくらいだ。

あえて外されていた山本を思い浮かべ、彼が部活へ向かう際に「手伝ってもいいんだぜ?」と言われた事を思い出す。
毎日欠かさずに部活に励んでいる彼の姿を見ていては、幾ら厚意と言えどその言葉だけ受け取っておくしか出来ない。一瞬しゅんとしたが、直ぐにいつもの快活な笑みを浮かべ、「どーしようもねー事あったら直ぐに呼んでくれよな!」と言って教室を去っていった。

そんな数十分前のやり取りを思い出し、やはり厚意を受け取っておくべきだったかとまたもや溜息が洩れるが、とはいえ今更グラウンドに邪魔しに行って彼を引き抜いていくのは迷惑だろう。グラウンドに木霊する野球部やその他の運動部の声をBGMに、優那はまた別の段ボール箱に手を伸ばす。


「そういや、ツナ達待ってるんだっけ。うわ……まずった」


きっと教室で二人揃って待っているだろう双子の姿を思い浮かべ、優那は引き攣った声を上げる。この場に不在な他の生徒を含めていた時はそう時間は掛からないだろうと作業時間を計算していた為に、いつもなら帰宅してもらうのを待って貰っていた。
確か、教室を出ていく直前に鞄からアレを机の上に出していた筈。あれくらいなら先生達に見つかろうと没収はされないだろうと勝手に推測し、埃塗れな自分の手をまじまじと見る。そして尚も棚に乗っかっている何が入っているのか分からない段ボール箱を一瞥し、もう少し時間が掛かるかな……とまたもや溜息をついた。


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「ツナ」
「ん、何にーさん」
「これ、その辺にあるんじゃないかな?」
「あ、そうかも」

綱吉からピースを受け取ったツナは、自分の手元に断片的に並べられたピースに、先程渡されたばかりのそれを嵌め込む。二つ合わせた机全体を見渡せば、大体の色ごとに集めておいたピースが固まっている。全体からみればほんの僅かだが、組み合わさった部分も出来ていた。

箱に描かれている完成絵とピースの総数を確認し、綱吉は箱から目を逸らして窓の外に視線を向ける。


「なあツナ」
「今度は何?」
「何で優那ちゃんがこんな物持ってるの? 趣味じゃないと思うけど……」
「確か、――……」


帰りのHRが終わって数分もしないうちに、優那はジャージを手にして教室を去ってしまったから詳しい事は聞いていない。けれど、彼女の兄から送られてきたとかそんな事を去り際に口走っていただろうか。それを兄に自分の口調で説明すると、「ふうん」と一言。


「確かお兄さんがいるって言ってたっけ」
「うん。あ、にーさんそっちにこれ」
「ああ」


詰まる所を言えば、優那がこの場に戻ってくるまでの時間つぶしだろうか。
気のせいかもしれないが、確か優那と共に昼休みに呼び出しされていた生徒が少し前に普通に制服姿で鞄を背負って廊下を歩いていたかもしれない。人だかりが多かったから確定は出来ないが。


「倉庫整理だっけ。優那ちゃんも大変だ……」
「ユウ、大丈夫かな」

「心配なら見に行けばいいじゃないか」


自分達の後方から聞こえた落ち着きのある声に、二人は揃ってその方向に目をやった。

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