モノクロームワールド



いつかまた、逢えたなら。







何かから逃げるように走り続けるその人に、私は、腕を掴まれていた。
わけもわからず、ただ急に腕を掴まれて。事情を聞こうにも、その人は、私の知る「その人」じゃなかったから、声をかけることもできなかった。
その人の、少し頼りない背中を見詰める―――淡い茶色の髪も、動きに合わせてふわりと揺れる毛先も、意外としっかりした腕や手足も、いつもと同じ。
ただ、違うのは。


「・・・さわ、だ、先輩・・・?」
「駄目。澪、」
「っ、」


誰も見当たらない静かな廊下で足を止めた彼に、軽く息が上がった私が後ろから声をかけると。
振り返った彼は、息を切らせた様子もなく―――悪戯が成功した子供のように、にやり、と不適に微笑んで。
常の彼ならば絶対呼ばないだろうに、戸惑うことなく私を名前で呼び捨て、


「今は、『綱吉』。な?」


彼もまた、自身を名前で呼べと強制してきて。
そうした上で、何かを慈しむように目を細め―――呆然と彼を見上げるしかない私に、そっと笑いかけた。
















授業中に乱入した天下の風紀委員長様を目の前に、俺は、恐怖に体を竦みあがらせた。
・・・いやいやいやいや。何この、


「・・・沢田綱吉」
「はいィっ!?」


何でよりによって俺名指し!? いや、まぁなんとなく予想ついてたけどね―――リボーンこの野郎、今回は一体何してくださりやがったんだよあいつ!!


「澪を、どこにやったの」
「・・・は?」


意味が判らずきょとんと返すと、
踏まれた。


「ぶふぉっ!?」
「この僕を騙そうとかそういうこと考えるなんて十年早いよ身の程知らずにも程があると言うかもう身の程知らずでも莫迦でも阿呆でもゴミでもいいから取り敢えず吐け。
「いだだだだだだーっ!?(何コレ今までに増して理不尽!?)」
「てめーヒバリ、十代目に何してやがる!?」


今だけは獄寺君が救世主に見えるよ!


「僕の胸倉掴むとはいい度胸だけど、その喧嘩は後で買ってあげるよ。手を離せ莫迦」
「テメェこそその汚ねー足退けやがれ妹莫迦!!」
「失礼な草食動物だ、毎日洗ってるから綺麗だよ。あと近付くな煙草臭い、肺癌で死ねばいい」
「・・・。お前大丈夫か? なんか」


俺が感じた違和感を、獄寺君も感じたらしかった。―――普段のヒバリさんとは比べ物にならないほど、饒舌になっている。しかもなんかわけのわからない発言をしている。
ヒバリさん自身も自覚あるのか、獄寺君が(俺の頭を踏んづけるヒバリさんの足をどかす事も忘れて)それを指摘すると、黙り込んでしまう始末。
暫く黙り込んだヒバリさんは、無言で俺の頭から足をどけると、俺の襟元をぐわしと掴み、


「え、ちょ、えぇぇええ!?」
「んなっ、十代目を離しやがれ!!」
「やだ。」


ずるずると引き摺りながら、教室を後にしていく。
でも、ぎゃあぎゃあ言いながら俺をヒバリさんから引き離そうとする獄寺君にイラッとしたように顔を顰めたと思うと、ポケットからケータイを取り出して何やら操作し、その画面を獄寺君に見せる。
と、


「ふげー!?」


泡吹いて倒れた。
・・・え?


「へぇ、本当に効くんだ」
「・・・ヒバリさん今何やったんですか」
「彼の異母姉の写真。澪がくれたんだ、彼がウザイ時見せてみろって」
「(何やってんの澪ちゃん!?)」


かくして。
俺はこの日、コレ以来、二度と教室に帰る事は叶わなくなりました。
いや別に授業に出たいとかそういうわけじゃないけど、ぶっちゃけサボれて嬉しいと言うか。でもヒバリさんに拉致られている状況は両手挙げて喜べるわけねー!


「あ、あの、ヒバリさん・・・俺、本当に澪ちゃんなんて知らないです、よ?」
「うん。良く考えれば、彼は君だけど、君じゃなかったね」
「は?」


やっぱり意味不明なことを呟いたヒバリさんは、ある程度歩き続けると、授業中の所為でしんと静まり返る廊下―――壁の向こうで行われる講義の声が遠くに響くだけの廊下で俺に向き直り、


「澪が、攫われたんだよ」
「は?」
「君と全く同じ姿の、別人にね」
「・・・は!?」


やっぱり、意味がよく判らない事を、呟いてきた。
―――リボーン、本当に何しやがった!?






* * * *






お兄ちゃんと一緒に警邏を済ませて、学校に、帰ってきて。
授業中だからか、人気が全く無い廊下で、お兄ちゃんと他愛ない話をしながら応接室に戻る途中の事だった。


「つ、な・・・よし・・・?」
「うん。そう」


―――授業中であるはずなのに、誰かが廊下を走る音が聞こえて。背後からのそれに、私もお兄ちゃんも後ろを振り返って・・・振り返った直後、ぐ、と腕を握られた感覚が襲い、「え、」と声を発したと同時に引っ張られて。
もつれる足に、引っ張られる腕。「澪・・・!?」と驚いたように追いかけてくるお兄ちゃんの声。
・・・そして、現在。


「・・・・・・・・・」
「そんな警戒しなくてもいーって。澪が知ってる『沢田綱吉』には変わりねーんだしさ」


社会科の資料室(と言えば聞こえはいいけど、実質は物置き部屋)へと入り、雑多に置かれた資料の真ん中で向き合った私と彼。それでも私の腕を離す事はなく、両の手首を少し強めに握られたままだった。
・・・この状況で、警戒するなと言う方が、可笑しい。
彼はどういうつもりで、こんなところに私を連れ込んだんだろうか。しかもあんな不合理な方法で、お兄ちゃんから私を引き離しておいて―――お兄ちゃん、今頃怒ってるだろうな・・・。


「・・・私は、貴方の事を知らない」
「でも、俺は澪の事を知ってる」
「知らない人に、名前で呼ばれたくなんか無い」
「俺は澪に、名前で呼ばれたいってずっと思ってた」
「っ、・・・?」


ずっと?
疑問に顔を顰め、半ば睨むように彼を見上げる。けれど彼は、まったく怖気付く事もなく、寧ろ超然と笑った。


「『アイツ』は文字通りダメツナだからな。笹川の兄貴に軽く嫉妬してる事も気付いてないし。気付いたとしても、それは単純に区別するためだって知ってるから、多分何も言―――、・・・!」
「え、」


彼の言葉に、眉根を寄せながら耳を傾けて・・・真っ直ぐ見返しても、視線を逸らすことなく薄く笑って見詰め返してくる目が、少し、怖くて。
でも、唐突に切れた言葉に目を瞬かせると、彼は暫く廊下の方を見詰めて―――次の瞬間、私の視界は一転していた。


「っ!?」
「静かに、」


それは、一瞬の事。気付いたら、後ろから抱きかかえられるようにして教材の物陰に隠れる様に座りこんでいた。
後ろから口元を抑えられ、声もあげる事ができない。耳元でひそりと囁かれ、突然の事に、緊張と少しの恐怖で心臓が痛いくらい脈を打った。口元を抑えていないもう片方の手は、ぎゅう、と抱き締めるようにして私の体を拘束している。思った以上に強い力に、息苦しさを覚えて顔を顰めた。


『―――で、俺が澪ちゃんを?』
『そうだよ』
「!!」


その時聞こえたのは―――壁の向こう、廊下を歩く二つの足音に、二つの気配、二人分の声。
・・・お兄ちゃんと、『沢田先輩』だ。


『後姿しか見えなかったけど、アレは確かに君だった』
『でも俺は、さっきまで授業出てました、けど・・・』
『みたいだね』
『と言うか犯人はリボーンじゃないですか』
『だろうとは思うけど、その前に澪だ。犯人探しは二の次』
『(授業中に乱入してきたくせに!?)』


その時。
私の耳元で、後ろにいる彼が焦った様に小さく小さく呟いたのが聞こえた。


「・・・やっば、アイツには超直感が―――!」
『ん?』


その声が聞こえたかどうかは、判らないけれど。
扉の前で、沢田先輩が立ち止まったらしい。数歩歩いてから、お兄ちゃんの気配も立ち止まり、


『・・・どうしたの』
『いえ、・・・気になっただけなんで、大丈夫です』
『ふぅん・・・気になった、ね。・・・社会科資料室、か』
『はい、だから別に―――って、え!? ちょ、ヒバリさん待ってくださっ』

ドカッ!!

「「!!」」


扉が吹っ飛んできて、思わず体を飛び上がらせた。・・・お、お兄ちゃん、もう少し右だったら当たってたよ・・・!
背後にいる彼も驚いたのか、より一層強く抱き締められて、口元の手も強く抑え付けられて、痛いくらいだった。あまりの痛さに小さく咽喉がなったけど、それまで以上に小さい声で「しずかに」と言われて眉根を寄せる。
―――出入り口からは、私たちは丁度物陰で見えない。


「ひ、ヒバリさん何扉壊して・・・!」
「僕だからいいんだよ」
「そんなのアリですかー!?(何者にも捕われなさすぎだこの人!)」


・・・どうしよう、なんだか沢田先輩に謝りたくなってきた。こんなお兄ちゃんでごめん、沢田先輩。
と。
―――私が、悠長に考えていられるのは、ここまでだった。


「澪。」


お兄ちゃんの声に、反応する。
背後で彼が焦ったように息を飲み、


「いるなら、出ておいで」


反射的に出て行こうとする体―――を、強く抱き締められる事で押し留められる。それでも無理に出て行こうと抵抗した結果、彼から解放はされないながらも、カタッ、という小さい物音を立てた。
途端、出入り口に立ったお兄ちゃんが一瞬にして殺気立ち、室内へと入ってくる。そうなったらもう観念したのか、ふ、と口元を抑える手が離れたと同時に、ぐっと引っ張り上げられて。


「っ、お、兄―――ちゃ、・・・っ」
「・・・澪」
「って、ほんとに俺ー!?」


それでもやっぱり、掴まれたままの手。振り払おうとしても、そう強くは握られていないはずなのに、何故か振り解く事はできなかった。苛立ちを覚えて、その勢いで解放されている片手でナイフを取り出してみても、それを振るう前に叩き落されて、その手も掴まれてしまう。
カランと音を立てて足元に転がったナイフ。悔しさに顔を顰めて、離せという意味で強く彼を睨み据えたけれど、その彼の視線がお兄ちゃんの方に向いていたから無意味に終わった。


「・・・君、何者?」
「何を今更。沢田綱吉ですよ、ヒバリさん。貴方の後ろにいる彼と、同一人物です」
「同一人物ってのは、二人の人間に対して使うものじゃないはずだけどね―――どうでもいいけど。悪いけど今、すごく苛立ってるんだ。君が澪を攫ってくれたお陰でね」


その声と同時、空を裂く音が聞こえる。お兄ちゃんがトンファーを取り出したのが視界の隅に見えて、その背後で沢田先輩が竦みあがり、私を掴んでる彼は小さく笑うだけに留まり―――ふ、と体が不本意に動いたと思うと、


「「っ!!!?」」


振り上げられたトンファーの、盾にされていた。
驚いたように息を呑んで目を見張らせたお兄ちゃん。その手に握られているトンファーに恐怖し、ぎゅっと目を閉じて身を竦めた。・・・けれど衝撃は来なくて、恐る恐る薄目を開けると―――目の前に止まったトンファーに、安堵とも恐怖とも称しがたい気持ちが沸き起こる。
知らずに止めていた呼吸を再開すると、ひゅ、と言う擦れた声が響いた。
・・・刹那、体を持ち上げられてもう一度息を呑む。


「っ!? な、」
「悪いけど、もー少し独り占めさせてもらいます。こんな事でもなけりゃ、外に出て来れないんだからさ」


状況を理解する間もなく、浮遊感・・・と言うか寧ろ、落下?
室内だったはずが、次の瞬間に見えた青い大空と白い雲と、燦々と降り注ぐ太陽と、下から受ける風と。どこかから、また、お兄ちゃんが私を呼ぶ声が聞こえて。
―――ちょっと待って、社会科資料室は、三階!
ゾワッと背筋が粟立った。内臓全部がひっくり返った様な恐怖を覚えて、でも悲鳴を上げることすらできない。その一瞬後、少し強めの衝撃とともに、私を抱えて窓から飛び降りた彼が、地面に着地したのがわかった。
続いて私も下ろされて、


「っと・・・澪、大丈夫か? 地面だぞ地面」
「・・・っ」


知らず、私を抱えていた腕にしがみついていていた。ぽん、と頭を撫でてくれた手に息を吐き出すと、どくどくどくと心臓が早く脈を打っている。
地面。足の裏に感じる、グラウンドの感覚。今は体育をやってるクラスはないみたいで、グラウンドは静まり返っていた。もう大丈夫だ、そう思っても心臓が脈打つ速度は速くなる一方で、恐怖と混乱が過ぎて思考回路が麻痺していくのがわかる。
ぼう、となる頭。何も言わない私に「澪?」と声をかけてくる、自称・沢田先輩。
混乱する。訳がわからない。大体なんで、沢田先輩が二人もいるんだ。この世界に二人も、同じ人間が存在するんだ―――なんか性格とか口調とか言動とかまったく正反対だけど、この際構うもんか。
ぐっと呼気を飲み込んでみると、ひくりと咽喉が唸った。訳がわからない。訳がわからない。怖い。判らない。混乱する。わからない。
もう一度、ひくっ、と咽喉が動いた。


「え、・・・み、澪・・・っ!? ・・・ちょ、待て―――悪かった。な、だから・・・!」


更にもう一度、ひくり、と咽喉が動く。
鼻の奥がつんとした。目の奥が熱い。咽喉が焼けるように乾く。頭がぼうっとする。どうすればいいか判らない。色々あって混乱している。でも判らない。思考回路が纏まらない。わからない。わからない、こわい、
―――不意に、三階の窓から身を乗り出してこっちを見ているお兄ちゃんが、視界の隅に入った。


「・・・っ、―――〜〜〜っ・・・!」


頭の上から、「げ、」と言う引き攣った声が聞こえた。
同時、気付いたら私は―――迷子になった子供が、親に手を伸ばすように、両手をお兄ちゃんへと向けていた。


「お兄ちゃん―――、お兄ちゃん、お兄ちゃん・・・っ、お兄ちゃん・・・!」
「ちょ、澪! 泣くなって、ほら、大丈夫だから―――」
「お兄ちゃん、っく、ぅえ・・・っ、おにぃちゃ・・・!」


こわい、わからない、わけがわからなくて、こわい。こわい。
どうする事もできなくて、求めるように頼りなく手を動かした。足も校舎へと向かおうとしているけれど、何故か、彼が引き止めるように私を押さえ込んでいて、動く事はできなかった。


「澪、ごめんって! 謝るから、だから泣くなよ澪・・・!」


宥めようとしてくれてるのは判ったけど、このときの私は、何も考えられなくて。
ただ、お兄ちゃんを求めていて。


「―――その手、離して」
「っ、」
「澪、おいで」


同じく窓から飛び降りてきたお兄ちゃんが、目の前に降り立って。
体を捕まえていた腕の力が緩んで―――同時に駆け出した私は、お兄ちゃんに抱き付いていた。


「ごめん、澪。・・・殴りそうに、なった・・・」
「・・・っ」


申し訳なさそうに呟いてくるお兄ちゃんの胸に顔を埋めながら、ぶんぶん、と首を思い切り横に振る。ぎゅう、と服を握り締めて、ぐす、と鼻を啜った。・・・毎度ながら、鼻水くっつけないでよ、って言われた(くっつけないよ!)。
確かに、殴られそうになったのは、この涙の原因の一つではあると思う。でも、一番はそれじゃない。一番怖かったのは、他人任せの飛び降り行為だ。自分で飛び降りるならまだしも、その全部を他人に任せるなんて怖いに決まってる。


「うぇ・・・っ」
「はいはい。もう大丈夫だよ、澪」
「・・・ぅー・・・」


少しずつ落ち着いていく心臓に、小さく息を吐き出した。
ぽんぽん、と頭を撫でてくれる大好きな手に安心して、ゆらりと揺らいだ視界に目を閉じる。
―――その時、


「なんだ、もうオシマイか? つまんねーな」
「・・・リボーン」


斜め下方向から聞こえた声に、目を開けてそっちを見やる。スーツを着た見慣れた赤ちゃんがニヒルな笑みを浮かべて立っていた。いつものことなのにそれがなんだか気に食わなくて、口元をへの字に曲げてお兄ちゃんの服にもう一度顔を埋めた。
自称沢田先輩も、顔を顰めて不服そうに。


「お前、随分と高見の見物しやがって・・・っ」
「そうだな。面白かったぞ」
「どこがだよ!? ヒバリさんには殺気向けられるし、澪には泣かれるし!」
「まぁいいじゃねーか、こんな事でもなけりゃお前出て来れねーだろ」
「・・・・・・・・・」


リボーン君が返すと、彼はむすっと唇を噤んで罰が悪そうに視線を逸らした。
けど、ハッとした様に顔を上げると、


「って、そーじゃねーよ話逸らすな! 確かに出てこれたのは嬉しいけど、だからって殺気向けられんのも泣かれんのも許容できるわけねーだろ!?」
「チッ、騙されなかったか・・・流石はダメツナのダメ以外の部分」
「その言い方はや・め・や・が・れ!」
「だがドンマイ。今回はちょっとヘタレが混ざってんな」
「ほっとけ!!!!」


・・・私とお兄ちゃんは完全に蚊帳の外だった。
そして、遠くから。


「―――リボーン!」


本物の沢田先輩の声が聞こえて、顔を上げる。


「っは、・・・ちょ、お前、コレ、どういうことだよ。何で、俺にそっくりな人間が・・・」


三階の資料室から走ってきたのだろうか、ぜぇぜぇと肩で息をしながらよたよた歩いてくる沢田先輩。・・・あ、やっぱりこっちの方がいいなぁ。なんて、なんとなく思った。


「俺、こんな奴、知らない―――」
「そう言うなよ本体」
「本体!? って言うか誰!?」
「お前。」
「俺!?」
「ややこしいな。そしてうぜーな」
「「誰の所為だと思ってるんだよ!?」」
「俺じゃないもん!」
「お前ほんっとムカつく、頼むから死んでくれ」
「(黒!?)」


そのまま、沢田先輩二人とリボーン君がぎゃあぎゃあとやり取りし―――その風景をなんとなく見詰めていた私は、不意に、お兄ちゃんがむすっとしている事に気付いて顔を上げる。


「・・・お兄ちゃん?」
「・・・群れてる」
「(あぁ、確かに・・・)」


また視線を戻すと、やっぱりぎゃあぎゃあと騒がしい。
と、音もなく私の頭から手が離れていったのを確認、もう一度見上げると同時、


「・・・咬み殺す。」


銀色のトンファーが、その手に握られていて。
そのまま乱入したお兄ちゃんにぎょっとし、情けない悲鳴を上げて逃げ出す沢田先輩たち。そのうち片方の(恐らく本体の)肩に座って、何だかお兄ちゃんを煽るような事をしているリボーン君。
暫くそのやり取りをぼうっと見ていると、何だか可笑しくなって口元を緩めた。
・・・けれど、


「・・・、あれ・・・?」


気が付くと、「沢田先輩」は肩にリボーン君を乗せたまま「一人」でお兄ちゃんに追いかけられていて、目を瞬かせた。
―――結局「彼」は、なんだったんだろうか?


























そのときはまた、名前を呼んで。





■□■□■



黒と白に分かれたの=一周年記念のときにちょちょいと書きましたSS、「ツナはツナ、スレはスレツナ」、くらいしか思い当たらなかったのですがそれでよろしいでしょうか…

雲雀「兄弟」、とのことで…一瞬「君臨者か?」とも思いましたが、そんなわけないだろうと空悪設定で書かせて頂きました。

匿名様リクの白黒ツナ&雲雀兄妹夢でした。ありがとうございました!



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