Cosa e successo?



ミイラ取りもミイラになる。






Cosa e successo?











まさにこの事だ・・・。


「ご、ごめんなさい」
「・・・。」
「ごめんなさいすみません申し訳ありません謝りますから殺気止めてください・・・!」


談話室(って言えばいいのか良くわからない場所)に珍しく半数の守護者が集まっていたのを見て、思い出したんだ。不可抗力にも引き篭り気味な澪が、常日頃からみんなと長らく顔を合わせてないって愚痴っていたことを。
それをみんなに話したら、じゃあ今顔合わせすればいいじゃないか、って話になった。呼んでくるねと席を立ったところで、俺に用事があるらしい雲雀さんまでも顔を出し、彼の用事を終わらせてから―――改めて、澪を呼びに行った。
そこまではよかったんだ澪の部屋には、無意味に豪奢なベッドの上ですやすや寝ている澪が居て。そんな澪を起こすの忍びないなーなんて考えながらその寝顔を眺めていたら、なんだか俺まで眠くなってきて。
戻ってこない俺に痺れを切らしたみんなが様子を見に来て、澪のベッドに頭を預けて寝てる俺を発見して。
―――現在。


「君、莫迦?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・!」


床に正座する俺と、その正面で椅子に座り呆れ顔で殺気飛ばしてくる義兄(予定)。
その他の守護者たちは、俺と雲雀さんの修羅場的な状況を完全無視―――背後で珍しそうに澪の寝顔を見ていた(あんまり見るな・・・!)。ちなみに今日は、行方不明だったり任務だったりで骸とランボの二人は欠席だ。


「ほんとにあの、すみませんでした。えーと・・・雲雀さん?」
「何。」
「ごごごごめんなさいごめんなさい」


聞いてるのか聞いてないのか不安になって呼んでみれば、途端に低い声で返事が返ってきた。慌てて謝りまくると、頭の上から聞こえてきた溜め息。恐る恐る顔を見上げると―――足を組んでテーブルに肘を着き、呆れたような眼差しで澪の方を見ていた。
その視線を追って振り返ると、


「すげーぐっすり寝てんなぁ」
「こんだけ人が集まってもまだ起きないのか・・・」
「流石に赤の他人だったら直ぐ起きるだろう?」
「だな! 俺らちゃんと信用されてるんだな」
「いや、日ごろのコイツの態度でわかるだろ」
「でもこーやってさ、露骨に無意識だと・・・」
「うむ、嬉しいものがあるな!」
「・・・否定はしねー」
「照れてるのかタコヘッド」
「誰が照れるか!」
「獄寺顔赤いのなー」
「るせっ!」


了平さんと獄寺君と山本が、澪の寝顔を見下ろしながらそんな事を小さく(?)言い合っていた。
―――うん、確かにぐっすり寝てる。
でも、(俺を含めた)みんなの五月蝿さを考えれば、そろそろ起きても不思議じゃない。それくらいの騒がしさだ。・・・って、わかってるなら注意しろって話だろうけど、だって俺今雲雀さんに怒られてるじゃん。注意どころじゃないよ・・・。


「・・・ぅ、」


そんな時、ベッドの上ですやすや寝ていた澪が小さく身じろぎ、唸る。ベッドの傍でその様子を目にした三人がびくりと肩を竦め、一様に自分の口を自分の手で押さえつけ―――数秒後、またすやすやと寝入った澪に深い溜め息を吐いた。
・・・あれ、三人とも本当に二十歳超えてるのかな?


「起きると思ったぜ・・・」
「はははっ、だな!」
「しかし、また寝入るとは・・・よっぽど眠いのか?」


あー・・・どうしよう、澪が眠いって言う心当たりがあるんだけど俺。
昨日、仕事全部終わらせた後にちょっと澪に愚痴っちゃったからなぁ。俺が寝るまでずっと愚痴に付き合っててくれたし―――結構夜中まで愚痴ってた記憶が・・・。
で、俺が起きるより早く起きてたし。そりゃぐっすりと昼寝しちゃうよな・・・。


「お、澪の首筋に虫刺されみたいなナニカを発見!」
「「何!?」」
「うわぁぁぁああッ!! ちょっ山本なんてモン見付けてんのォ!?」
「話はまだ終わってないよ」
「ぐぶぇっ」


山本の言葉に他二名が爛々と覗き込むのが見えて、慌てて阻止しようとしたら雲雀さんに襟首掴まれて引き戻された。・・・今かなり本気で首絞まりましたけど雲雀さん。


「人の妹に所有印つけたことに関しては取り敢えず保留にするとして、」
「所有印って・・・」
「君が昨晩、澪とどんな話をしたかなんて興味ない。」


俺の発言はスルーですか。
てゆーかなんで知って・・・あぁ、澪か。そうだよな澪未だに雲雀さん大好きだもんな、ははは。


「けど、それの所為で澪の体調とか生活習慣に支障を来たすなら―――僕としては不本意極まりないね」
「・・・、―――はい・・・」


いや俺も不本意ですけど―――と言いかけて、肯定しながら項垂れた。変に反論しても雲雀さんを煽るだけだもんなぁ・・・。
そんな事を思いながら雲雀さんの痛い視線に耐えていると、控えめに澪を覗き込んでいた三人の会話が再度止んだ。それと同時、さらりとした衣擦れの音と、鼻にかかった声が響く。


「んぅー・・・?」


振り返れば、ベッドの上でもぞもぞと動く澪。酷く眠そうな目を見付けても、その視線が合う事はなく―――そのまま体を起こしてごしごしと目を擦り出した。


「なぁに・・・?」
「あー・・・悪ィ、澪。起こしちまったな」
「・・・ん・・・」


山本が申し訳なさそうに謝ると、澪はぼうっとした目を彼に向ける。
数秒間彼を見詰め、山本の右に居る獄寺君を見て、左隣に居る了平さんを見てから―――不思議そうに首を傾げた。更に数秒考えてから・・・何かを言おうとしたんだろうか、開きかけた唇は、けれどそのままムズムズした後に欠伸へと変わった。
ふわぁああぁぁー、と言う大きなそれは、軽く手で口元を抑えながらのもの。少しだけ水気が増した双方の目を暫くしぱしぱと瞬きさせた澪は、もう一度目を擦り出す。
そうして、やっと搾り出された台詞は。


「―――・・・おなかすいた・・・」
「・・・どうしようツナ、澪が・・・!」
「雲雀さんに殴られれば直るよきっと」


世迷言を言い出しそうな山本に、雲雀さんの前で正座したまま笑顔で返しておいた。
その山本の発言に反応したのか、澪が少しだけ顔を上げて視線を彷徨わせる。


「・・・つ、な―――?」


眠そうな声に澪を一瞥、確認のために雲雀さんを見上げると―――行っていいよ、と言う無言のお許しが出た。相変わらず澪には甘い人だなぁと思いながら苦笑、少し痺れた足を必死に無視しながら移動し、ベッドサイドに座る。


「なに、澪」
「―――・・・」


酷く眠そうな、焦点の合ってない目を覗き込むと、澪は少しだけ顔を顰めてまた目を擦り出した。あんまり擦っちゃダメだよ、とその手を制してみれば小さく唸られる。いや唸ったってダメだから、目が赤くなるって。
くすくすと笑って澪の頭をぽんと撫でてみると、―――何を思ったのか、澪は少し考えるように俺を見上げた後、何の前触れもなく寄りかかってきた。


「・・・は?」


思わず呟く。・・・あれ、なにこれ?
何の反応も出来ずに居ると、澪はそのまま小さく唸ってもぞもぞと寝やすい位置を探し出した。・・・え、寝るのはいいけど何で俺に寄りかかって寝るの前提なの。寝たいなら普通に横になろうよ澪!
・・・なんて言えればいいけど、思ってるだけで口から飛び出す気配はない言葉。顔が熱い。そして何も言わずじーっと見てくる四人分の視線も痛い(それぞれの視線の意味は違うけどね!)。どうにかしたいけど、どうする事もできなくて、ただ一人あわあわと焦ってると、


「    」


小さく小さく聞こえた言葉に、耳元で囁かれた優しい声に―――ぎゅう、と服を握り締めてきた小さい手に。
動かざるを得なくなった。


「―――・・・すぅー・・・」


そうして、澪はまた寝てしまった。
居心地が悪い沈黙が支配する中、若干一名のちくちく突き刺さる視線に内心冷や冷やしながらも取り敢えずずり落ちそうになった澪の体を支える。
―――って、おい待て山本。ケータイなんて取り出して一体何に使う気・・・いやいやなんでカメラ部分をこっちに向けるんだよ!


「ちょっ、山本なにしてんの!」
「うちのボスはこんなに仲良しだぞーっていう証拠写真をな」
「は・・・!?」
「ほら、澪に手を出すなって意味にもなるしさ!」
「やめてってば! ちょ、山本・・・!」


慌ててそのカメラを下げさせようと手を伸ばす。けどひょいと避けられて、寧ろ「お、その嫌がってる感じいいな! 取材拒否してるみたいで」なんて嬉々として言われた(サドか!)。獄寺君と了平さんはなんだか珍しそうに俺と澪を見てるけど―――ちょっと二人とも山本止めて頼むから! てゆーかそんなキャラじゃないでしょ二人とも!?
澪が寄りかかってる所為で更に手を伸ばすのも憚られ、大した抵抗も出来ないままあわあわしてたら―――


「はい、チーz」

バキャッ!!

―――山本が写メる瞬間、トンファーが山本のケータイを木っ端微塵に吹き飛ばした。
・・・しん、と静まり返る室内。山本は構えたままの格好できょとんとし―――ケータイを壊した雲雀さんと言えば、無言で山本を睨みつけていた。


「あー・・・ヒバリ、何が気に食わなかったんだ?」
「澪の寝顔、撮影許可した覚えはないよ」
「あぁ、確かに」


納得するのかよ山本!!
それでいいの? ケータイ壊された事は怒らないの!?


「あ、ケータイは弁償―――」
「知らない」
「だよなー。ははは!」


軽ッ!
思わず口元が引き攣り、咽喉まで出掛かった突っ込みは―――けれど。


「今突っ込んじゃダメですよ十代目! 澪が起きます」
「そのままだ沢田! そのまま!」
「・・・う、うん・・・(何なんだろうこの二人)」


良くわからないけど澪が起きないようにと必死な獄寺君と了平さんに止められてしまった。
ちょっとだけぽかんとしながら―――改めて、苦笑する。

澪は相変わらず、赤の他人に対しては酷いと思うくらいに冷たい態度を取る事もあるのに、それが俺たち守護者には―――本当に同一人物かと疑うくらい、表情豊かで優しくて、あたたかい。
極端な話、例えば酷い怪我して転がってても、それが赤の他人なら澪は一瞥で済ませるだろう。けどそれが俺たちなら、きっと泣きそうな顔をして縋るように駆け寄ってきて、必死に手当てとかしてくれるんだろう。その服が、手が、紅く塗れるのを厭わずに。
さっきも山本たちが言っていたけれど、本当に、俺たちを信頼してくれてる。それが、どうしようもなく嬉しくて仕方なくて―――そういえば昔から澪は、空気で語るのが上手かったっけ。
何だかんだ(得に獄寺君が)言いながらも、みんな、結局は澪が―――すき、なんだろうな。
―――澪が、みんなを好きなように。


「(・・・少し悔しいなぁ)」


無意識に呟いていた言葉に、もう一度だけ、笑った。



―――そんな彼自身も、みんなから好かれていることを、彼は恐らく知らない。
だからこそ、彼も彼女も、様々な意味が込められた嫉妬による敵意を向けられる事はないのだということを―――。
そして若干一名、それでも彼に敵意を向けている彼は、ただ一言。


「・・・はぁ(アホくさ・・・)」


胸中で呟き、彼の方で眠る彼女の穏やかな寝顔を一瞥。
彼女がしあわせならまぁいいか、と、ほんの少しだけ頬を緩めた。






















ミイラになりたがるミイラ取り。



訳:何があったのですか?




■□■□■



匿名様リクの空悪夢主の色気にみんながヘロヘロな話、でした。
ありがとうございました、そしてごめんなさいリクに添えているか心から不安でなりません。



さて。

ありえないほどリクエストブレイク。寧ろリクエストの原型が留めていないと言う最悪な愚作となってしまいました…
自分としても、こんなモノを上げるのは心苦しいですが、これ以上お待たせするのも無礼千万極まりない上に、

…この話が出来上がって、でも納得できずに「色気の話…色気の話…!」と少しでもリクエストにお答えできる作品を作ろうと頑張っても、
うちの夢主に色気と言うものが存在しない現実を突きつけられ、

恥を承知で更新いたしました。




作中の空欄な台詞は、皆様どうぞ自由にお考えくださいませ。




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