空-1




警邏中のことだった。
不意に視界が揺れたような気がして、立ち止まる。きょろきょろと辺りを見回しても異常はない。
眩暈にしては一瞬過ぎるそれに首を傾げた直後、


「にゃんにゃー!」
「ッ、」


元気いっぱいの声が耳を通り抜けていき、びっくりした。そちらを向けば、草叢から一匹の猫が飛び出してきて―――気のせいだろうか、その猫は私を見てギョッとした様にも見えた。やけに人間的な猫だ―――それを追う様に、小さな小さな子供が覚束ない足取りで駆け出してきて。
猫ならまだわかるけど、幼子。仮にも学校内に。現状を理解できずにきょとんと目を瞬かせていると、私の前を横切った猫を追っていた子供が、


「っ!」


どてん。
・・・盛大に転んだ。


「・・・・・・・・・」


泣き出すんじゃないかと冷や冷やしながらその場を見守っていれば、子供は何処か呆然とした面持ちでゆっくりと起き上がり、地面に座ったままぱちぱちと目を瞬かせて。
数秒後、


「っ、う、ぇ・・・うえぇえーん・・・」


大きな声でびーびー泣くのかと思えば、そうでもなく。
顔をしわくちゃにして、顔を隠す事もなく、空に向かって小さな声で泣く子供に―――思わず、笑って。


「―――大丈夫?」


普段なら絶対に差し出さないだろう手を、伸ばした。











世界でいちばん小さな空











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