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例えば、こんな「物語」はいかがかな。










《 1 》










―――カタッ。


「・・・?」


耳が拾った物音に顔を上げた。
給湯室は応接室と隣り合わせになっていて、扉一枚だけの隔たりがある。火にかかったままのヤカンを前に、応接室へ続く扉を一瞥。閉まっているから応接室の様子は判らない。
壁にかけられた時計を見上げる。―――お兄ちゃんが校内の見回りに出てから数分と経ってない。何時もは15分から20分はかかるし、もし「群れ」を見つけて咬み殺していたなら最低でも30分は帰ってこない。
忘れ物でもしたんだろうか。・・・それとも、


(草壁先輩か、他の風紀委員?)


彼らもお兄ちゃんが見回りに行く時間帯は把握してるだろうに。もしかして緊急の報告でもあるんだろうか。お兄ちゃんの携帯に連絡した方が早いと思うけど・・・。
ヤカンを一瞥。お湯はまだ沸きそうにない。少しなら離れても大丈夫だろう。
ちゃんと確認してから応接室への扉を開ければ、


「・・・っ?」


―――お兄ちゃんじゃない、草壁先輩やその他風紀委員でもない後姿に、息を呑んだ。
背の高い、男の人。全体的に黒い服を着ている。それに反するように、さらりと揺れる髪は白金色。透き通る様に奇麗な―――、


「ねぇ、」
「!」


机の上にあった「風紀委員」の箔が入った万年筆を手に取っていた彼は、それに注いでいた視線をこちらへと向けた。
私が居ることに何のリアクションもなく。まるで、私が給湯室に居たって最初から判っていたように―――。
冷たく鋭いアイスブルーに射抜かれ、びくりと肩を上げた私は。


「雲の―――」

バタンッ!!

・・・彼が何か言いかけたのも構わず、手を掛けたままだった扉を閉めて。
給湯室に閉じ篭った。


























「・・・。(閉められた・・・)」

「〜〜〜ッ!!(ど、どどど如何しよう閉めちゃった・・・!)」







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