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《 7 》











結局、私は殴られる事はなく(怯え損だ。少し悔しい)。
話は再度、初代『夜空』についての話題になっていた。アラウディさんによれば、『夜空』はとても我が侭で、我が強くて、自己中心的で―――どれも同じような意味だけど。兎に角、それが気に入らないらしい。
―――彼らのボスたる初代『大空』は、気付いてくれているんだろうか。その我が侭は、子供が親の顔色を窺うようなものと酷く似ている事を。


「・・・過去に返ったら・・・初代『夜空』に、伝えてほしいことがあるんです」
「?」


並盛神社。賽銭箱の前にある階段に、私たちは腰掛けていた。
空を見上げると、随分と日が傾いていた。青かった空も赤くなり始めている。正確な時間を確認する事はできないけれど、体内時計を信じるならば、もうそろそろ夕方と呼べる時間帯だろう。
―――つまり、放課後。


「“一度だけでいいから、信じてあげてください”。」


臆病すぎる恐怖と猜疑に満ちた『夜空』の内心に、全てを包むと謳われた『大空』は気付いているのだろうか。
『夜空』であるサナさんの事を助けたいと思っているらしい『大空』、ジョットさん。もし彼が気付いているのなら―――余計なお世話かもしれないけれど、ジョットさんがとても不憫だ。サナさんも、そろそろ信じてくれればいいのに。
だから私は、サナさんへ伝言を頼む事にした。話を聞いている限り、初代メンバーは本当にいい人たちばかりのようだから。一瞬でも彼女が彼らを信じようと思うことが出来たなら、きっとジョットさんならその一瞬に気付いてくれるだろうし、安心もすると思う。


「・・・多分勝手に伝わると思うよ。僕が伝えずともね」
「え、」


何故か、呆れたように肩を竦められた。
目を瞬かせていると、それを如何捉えたんだろう、アラウディさんは立ち上がりながら答えてくれた。


「何て言っていたかな。忘れたけど・・・記憶を共有出来るらしいよ」


僕にもよくわからないけど。そう締めくくられた言葉に、首を傾げた。
一度、考えるように視線を下げる。―――彼が言っているのは、多分、アレかな。誰かの記憶に私の意識が入り込む・・・と言うか誰かの記憶を見ることが出来る―――同調、って誰かが言っていた。骸さんだったかな。先生かな。どっちでもいいけど。
結論付けて、再度前を見る。白金色の奇麗な髪をさらりと揺らし、黒いコートを身に纏ったアラウディさんの背中が見えた。
年齢の差だろう、お兄ちゃんより少し広い、背中。男の人にしては細身の方だと思うけど、仕草も、雰囲気も、―――崇高、の一言に限る。


「流石に―――間違って傷つけたりは、しないよね」


なんてことを考えていたら、アラウディさんの呟きが風に乗って聞こえて―――黒い後姿が、軽い音と同時に消える。
その向こうには―――凄まじい速さで向かってくる、球針態のロール。


「・・・ッ!?」


お兄ちゃんがここに向かってきているのはわかってたけど、まさかロールが既に放たれていたなんて予想もしなくて。私は反応する事もできずに、ただ迫り来る鋭い針を呆然と眺めて―――、












































(お兄ちゃん・・・!)







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