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《 5 》










僕は『彼女』が苦手だ。
それについて、僕にしては珍しく「ちゃんとした理由」がある。
『彼女』の兄とは犬猿の仲で、顔を合わせるたびに皮肉と侮蔑と武器を交差させる様な間柄で。己が慕う兄と仲の悪い僕を、『彼女』が目の敵にするから。
・・・だから僕は、『彼女』が苦手なんだ。


「・・・様っ、・・・アラウディ様!」
「・・・・・・・・・」
「―――アル!!」
「・・・聞こえてる。五月蝿いよ」
「聞こえてるなら何で止まってくれないんですか?」
「君が五月蝿かったから」
「・・・最初に呼び止めたの聞こえてましたよね。その時に立ち止まって下さったら五月蝿い声を出さずにすんだのですが」
「・・・・・・・・・」


苦手な理由は、それ以外にもある。挙げていったらキリがないくらいに。
『彼女』が相手だと、何もしていないはずなのに何故か酷く疲れて。この魔女に近付くと生気を奪われるんじゃないだろうか、って一度本気で思った事がある。


「・・・で、用件は何。手短にね」
「今から守護者の皆さんとトランプゲームするんです。一緒に、」
「馴れ合うのは嫌いだよ」


だから、『彼女』からの誘いは、どんなものでも、どんなに僕に利があろうとも、絶対に受けないと決めていた。
『彼女』は魔女だ。安請け負いして失敗して呪われた、なんて冗談じゃない―――いや、本当に呪われる事はないだろうけど。


「残念です・・・。王様ゲームルールもついてるのに」
「・・・王様ゲーム? 何それ」
「負けた人は勝った人の言う事を何でも聞くって言うものだそうです」


恐らく、この時点でいけなかったんだ。文字通り―――僕は、“呪われて”しまった。
興味本位で頷いてしまった自分を怨んだ。今思い出しても腹立たしい。嗚呼、腹立たしい。


「というわけで、アラウディ様―――何でも、言う事を聞いて頂きますね?」


にっこり。
笑う。笑う。
魔女が笑う。


「ちょっと未来へ飛んで、未来のボンゴレファミリーに高値で喧嘩を売ってみてください」


笑った魔女が紡いだ言葉に。
ジョットとGと雨月は「は?」と目を丸くして。ランポウは涙が浮かんだ目を(僕が睨み続けてたからね)ぱちぱちと瞬かせ。ナックルは意味が判らないと言った風に首を傾げて。Dは『彼女』の意図を理解しているのか「ヌフッ」と気持ち悪く笑った。







































「・・・この僕を嵌めるなんて、いい度胸だね」

「嵌めたつもりはないですよ。確かに、喧嘩を売るなら高い方がいいなとは思ってましたけど」

「待て、サナ。俺は何も聞いてないぞ」

「そうですね。ジョット様には言うつもりもなかったので」

「・・・・・・・・・。」







* 6 *

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