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《 3 》
「澪が何者かに攫われたぞ」
「―――はい?」
いや、ちょっと待て。うん、落ち着こう俺。まず最初から考えてみよう。状況整理、状況整理。
よく晴れた昼休み。何時もの二人と一緒に屋上でお弁当食べながら駄弁ってたらリボーンが現れて。
何時も何かしらコスプレして現れる奴が、今日に限って黒スーツ姿で、雰囲気も何処かピリピリしてて。「何しに来たんだよ!」って言う文句も言えなくて。
かと思えば、澪ちゃんが―――攫われた、だって?
「・・・ちょ、リボーン。笑えない冗談止めろよ」
「冗談じゃねぇ。マジで澪が攫われちまったんだ」
「ヒバリさんはどうしたんだよ。澪ちゃんと何時も一緒だろ、あの人がそう簡単に澪ちゃんを攫わせるわけ・・・」
「ヒバリは丁度見回り中で不在だったんだ。澪は応接室に待機していて、直接襲われたんだぞ」
固まる。
「んー・・・何で居なくなっちまったんだろうな。家出か?」
「このっ野球莫迦、攫われたってリボーンさんが言ってるだろ! 十代目、きっと澪のやつ、『夜空』として攫われたんです!!」
「・・・っ」
ハッとして、リボーンを見る。否定してほしくて見詰めていれば、けれどそれを裏切るように「獄寺の言う通りだ」と言う肯定が返ってきた。
「なっ、ちょ、どーすんだよ!?」
「どーするもこーするも、取り返すしかねーだろ」
「だ、だからどーやって・・・!」
てゆーか誰だよ攫った奴! 頭を抱えて叫べば、まだ判らない、今調査中だ、って返答だけ。
って!
「そうだ、ヒバリさんはどーしてるの!?」
「風紀の情報網を使って探し出そうとしている。が、見付からねぇだろうな」
立ち上がりかけた俺とは逆に、リボーンは山本の肩に腰を下ろした。
「よく考えてみろ。この並中は、セキュリティレベルがかなり高ェんだ」
「は?」
「表は言うまでもなくヒバリ率いる風紀委員会が目を光らせていて、裏に対しては俺は勿論、『十陰』もいるからな」
「・・・ツナ。とかげ、って三崎先生のことだよな?」
「うん、確か・・・」
山本の呟きに頷き返し。もう一度、リボーンの話に耳を傾ける。
「それらの厳重なセキュリティをいくつも掻い潜り。そのどれにも引っかかることなく。誘拐犯は並中校内に侵入し、応接室に現れ、澪を攫って行ったんだ」
「リボーンさんも気付かなかったんスか?」
「ああ。しかも気付けたのは、澪が攫われたときに犯人が一瞬だけ放った強力な死ぬ気の炎のお陰だぞ」
「「「死ぬ気の炎!?」」」
「まるで澪を誘拐したとワザと気付かせるような、妙な炎だったな」
その「妙な炎」の原因を調べると、その発生源が応接室で。応接室に様子を見に行けば、給湯室へと続く扉が壊れていて。沸騰し続けるヤカンと、床に落ちていた一本の小さいナイフと―――それらを見詰めたまま、三崎先生が立ち尽くしていたらしい。
「アイツも、妙な炎を感じて応接室に来たみたいだな」
つまりそれは、犯人がその炎を出さなければ、リボーンは勿論、何でも見通せる「眼」を持っている先生ですら、直前まで何も気付かなかったって事で。
さっ、と頭から血の気が引く。
だって。だってそれって、つまり―――どういう、事?
「状況から考えて―――澪を誘拐した奴は、相当強ぇぞ」
誰も。何も。気付かなかったんだから。・・・と。
黙り込む。考える。そして、
「・・・助け、なきゃ・・・」
「・・・だな」
「はい!」
ぽつり。呟いた言葉に、山本と獄寺君が笑顔で頷いてくれて。
一瞬目を丸くしたけど、すぐに顔を綻ばせて頷いた。
「リボーン、何か情報ないの? それか、三崎先生かヒバリさんが何か情報掴んでたりとか・・・」
「・・・そーだな」
無表情で俺たちの様子を見ていたリボーンが、ふっと笑って帽子を押さえる。
「ヒバリは判らねぇが、十陰は―――犯人は誰か、今何処にいるか、澪は無事か、全部知ってると思うぞ」
「え?」
「なんたって、アイツの『眼』を遮られるものなんて、この世には存在しねぇはずだからな」
にやりと笑ってそう言ったリボーンに、コイツが「仲間(?)」でよかったと改めて思った。
「そうと決まれば、早速脅し・・・じゃなかった、聞きに行くぞ」
「脅・・・!?」
「はいっ!」
「三崎先生なら多分職員室に居るよなっ」
「(ちょっとだけ前言撤回・・・! やっぱコイツ怖い!)」
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