第五話

痛みを我慢しないで下さい。



××


目が覚めると、知らない天井があった

…て、ふざけてる場合じゃなくて

今何時だろ?

そう思い携帯を取り出し、時間を確認すると夜の7時とあった

…寝すぎた

やばいな、気絶しすぎだ

あの後どうなったんだろう

てか、誰がここまでうちを運んだんだ?

…まぁ、いいか

ともかく、皆の所にでも行こう

そう思い、廊下へと出ると




「イヤァァァァァ!!」




悲鳴が聞こえた

それもただの悲鳴じゃなくて、涙声っていうか、悲痛な声

しかも、この声は―――

私は嫌な予感がし、急いで悲鳴が聞こえた方へと走っていく

倒れた時に足でも捻ったのだろうか?

足が痛かったがそれを気にせず悲鳴が聞こえた方へと走っていった




××



悲鳴が聞こえたのはどうやら教室の方からだったようだ

その教室に近づくにつれ、悲鳴や何かを殴ったりする音が大きく聞こえてくる

私は息を切らしながら、必死に教室のところまで走り、扉を開けた





「てめぇ、また玲姫を苛めやがったな!!」



「違うのっ、違うのっ、私はやってない!!」



「嘘をつくな!!玲姫は実際に傷ついてるだろ!!」



「だから、私達はやってません!!」




暴力、暴言、罵倒、乱暴、暴挙、攻撃、殴る、蹴る、殺傷、破壊、破く、当てる、中傷、汚す、害する、切りつける、切る、

秋っちの顔が、はるなんの腕が、なつみんの頭が、とうこんの足が、

怪我して、傷ついて、血を流して、


それでも皆の制裁は止まらなくて




「っ、みんなっ!!」




はるなん達を庇う様に私ははるなん達ときーちゃん達との間に割り込む

状況が理解できない

何時から?何時から暴力は始まっていた?

私が気絶した時から?よく見ればはるなん達の腕や足には古い傷も新しい傷もある

頭の中がグルグルとまわる、さっきまで痛かった足の痛みすら忘れるほど、状況がいまいち理解できない

だって、認めたくない

きーちゃん達が、はるなん達に暴力を振るうなんて

はるなん達の味方についたときから覚悟してたはずなのに、まだ私の脳は頭は心はそれを否定する


ナンデ?




「風丸、貴様はやはりそいつらの味方か」



「っ、きーちゃ、」



「気安く俺を呼ぶな、気色悪い」




次の瞬間、私の腹部に強烈な痛みが走る

はるなん達の叫び声が聞こえる

どうやら、そっきゅんに蹴られたらしい

そっきゅんに手を伸ばそうとしても、きーちゃんに手を踏まれる

…覚悟してたはずなのに、

私と皆の間にある見えない壁が、届かない手が、とても悲しかった



××


あの後、一通り私に暴力を振るうとそっきゅん達は満足でもしたのだろうか?キャラバンへと戻っていった

一方私達はキャラバンに戻るわけにもいかず、保健室で一夜を明かそうという話になった



「っ、いたっ」



「大丈夫か?とうこん」



とりあえず、保健室にあるものを使い怪我の治療をしておく

消毒液などが染みて結構痛いが、このままほっといて更に酷い事になったら大変なのでここは我慢するしかないだろう


…怪我の治療をしているときにやっと気づいた

皆の腕や足にはたくさんの痣や殴られた跡、切り傷がたくさんあった

それは新しいのから、古いのまで…

とうこんは選手なのに、足までこんなに怪我して、皆なにやってるんだろう

同じサッカーが好きな奴同士なら、足がどれだけ大切の物か、理解できてるはずなのに

なつみんや秋っちやはるなんだってそうだ、

皆女の子なのに、なんでここまで怪我させるんだろう



「…秋っち、大丈夫か?」



皆の治療も終わり、ベッドに腰掛けている秋っちに声をかける

秋っちの腕や足に巻かれた包帯が痛々しくて、私は顔を伏せてしまった

皆のこと、守るって決めてたはずなのに、

秋っち達は、こんなにも傷ついてる



「…私は大丈夫だよ?それよりm「嘘だ」



秋っちの言葉を遮る

大丈夫?そんな筈は無い、

だって、今だって秋っちは泣きそうな顔をしている



「秋っち、ここには俺達以外誰もいないんだぞ?だから、泣いたっていいんだ」



ここには円堂達はいない

はるなんやなつみんやとうこんや私しかいない

誰だって、泣いて責める奴なんていない

泣く事は悪い事じゃない、誰だって泣きたい時がある

泣いたって、いいんだ

もう、我慢しなくてもいい




「秋っち、痛みを我慢するな、俺達は、仲間なんだから」



「っ、風丸君」




大声を上げて、泣く

皆で、泣いた


秋っちは優しすぎた、

だから、なつみんやはるなんやとうこんを心配させないよう、何時だって我慢してた

でもな、秋っち、泣く事は悪い事じゃない

本当に悪い事は、痛みを我慢して、強がる事だ

だから、もっと私を頼って?

だから、今は泣こう、皆で泣こう

明日また、皆で笑いあえるように




××



皆が寝静まった後、私は一人外へと出ていた

北海道の夜は寒く、息は白く、耳がとても冷たい

それでも、夜空の星はとても綺麗だった

星達がキラキラと瞬いてる

そういえば、昔TVで聞いたのだが、今見える星の光は何万年も前の光らしい

だから、今見える星は既に滅んでいたり、新しい星が今もできている

でも、それがわかるのはまた何万年も後

今の私達にはわからない

…今見える星達の中に、宇宙人達の故郷はあるのだろうか?

あの美しく輝いている星を、宇宙人達も見ているのだろうか?

もう少ししたら、私たちは宇宙人達と戦う

私は…



ザクッ、


後ろから雪の踏まれた音が聞こえた

私はその音に驚き、足を相手の首の所に当てる




「…すごい歓迎のしかただね」




「お前は、」



現れたのは、しーちゃんだった








痛み




(記憶と痛み)


(皆は痛みを我慢しないで)


(私はどうでもいいから)

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