声を掛けると、アスカは頷いてこちらに向かって歩み寄る。
そういえば、男をここへ連れて来たのは初めてだ。
すれ違ったその瞬間、花のような甘い匂いが鼻を掠めた。
「一緒に寝よう」
シャワーを浴びてから、素っ裸で腰にバスタオルを巻いて寝室に入ってきた上にそんなことを言うアスカに、俺は唖然とする。
「はあ?」
「僕、1人じゃ寝られないんだ」
子どもみたいなことを言って、ベッドに腰掛けていた俺の横に座る。
「バカ言うなよ。なんで男とひとつのベッドで寝なきゃいけないんだ」
「品行方正だったって、お父さんに言ってほしいんでしょ。未成年がクラブでお酒を飲んでたなんて、言わないから」
そう言ってアスカはしたたかに微笑む。
何なんだよ、こいつ。
「……わかったよ」
掌の上で転がされてるみたいで、なんかムカついた。
「服ぐらい着ろよ」
「今日はちょっと、ないんだ。この依頼、急だったから持って来れなくて」
"今日は"って、何なんだ。いちいち引っかかる。
「寒くないからいいよ、このままで」
そう言って、ベッドに潜り込んで。
「サキト、おいで」
と、甘やかに俺を誘った。
俺はアスカの顔を見下ろす。長い睫毛が、瞬きする度きれいなカーブを描く頬に影を落とす。澄んだ眼差しが、俺を映し出していた。
心臓がバクバクと音を立てて鳴り響く。
その瞳に、吸い寄せられて。
唇を、重ねた。
柔らかい感触。物足りなくて舌を挿し入れると、吸い付くように絡めてくる。
俺は相当酔ってたし、いろんなことにうんざりしてた。
だから、これは退屈しのぎ。
「ん……」
鼻から抜けるようなアスカの声が、下半身を刺激する。
「……アスカ」
唇を離して初めて名前を呼ぶと、アスカは閉じていた目を開いた。
その情欲に潤んだ瞳を覗き込んで、俺は確信する。
退屈じゃない、何か。
こいつは多分、それを持ってる。
酔いそうなぐらい甘い匂いを放つ肌に惹き寄せられて、首筋に唇をあてる。
小さな吐息。きめ細かい肌をそっと舌でなぞっていくと、時折喘ぎ声が漏れる。
「俺、結構酔ってんだけど」
顔を上げて言い訳みたいにそう言うと、アスカはきれいな顔で俺を見つめる。
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