「……飛鳥?」はらはらと涙を零しながら、飛鳥はかぶりを振る。まるでそれが、禁じられた言葉であるかのように。本当は、口にしてほしい。けれど、無理強いはしたくなかった。汗で濡れた柔らかな髪を撫でて、俺はもう一度飛鳥に言い聞かせる。「飛鳥、愛してる」その言葉を噛み締めるように何度も頷いて、飛鳥は俺の与える快楽を受け容れていく。「ん……、ふ、あァ……ッ、みつ、き……」深く深く快楽の海へと沈んでいこうとする飛鳥を、俺は高みへと引き上げる。「おいで、飛鳥」お前はそんなところで溺れてちゃ駄目だ。しっかりとしがみつく飛鳥の身体をきつく抱いて、揺れる喉元に口づける。強く吸いついて刻みつけるのは遠い約束の印。「ああ、イキ、そ……ッ、あ……」甘く香しい匂いが充満する2人だけの部屋で、俺は飛鳥を一番高いところへと連れていく。「光希、みつき……っ」揺さぶられて身体を震わせながら飛鳥は何度も名を呼ぶ。熱くうねるそこは絶え間なく俺を刺激していて、限界がすぐそこまで来ていた。「飛鳥……ッ」強く強く、抱きしめて。昇りつめて辿り着くその瞬間、俺はただひとつだけを願う。もう二度と、離れたくない。「 ─── ッ、ああ、あっ、あ……っ!」強い収縮を繰り返すその最奥に滾る想いを注ぎ込む。2人で抱き合ったまま、頂点からゆっくりと堕ちていく。荒い呼吸を縺れさせながらさざ波のように揺らめく余韻に浸るうちに、抗えないほどの微睡みが俺を襲う。まだ、繋がったままなのに。「飛鳥……」名を呼んだその声が、ちゃんと発されているのかさえわからない。一瞬唇に触れたあたたかな感触は追い掛ける隙もなくすぐに立ち消える。『ごめんなさい……』飛鳥の声がやけに遠くに聴こえて、俺は必死に耳を澄ませる。『あのとき本当は、すごく逢いたかったよ』揺れる意識の狭間に流れ込むのは、レクイエムのように静かに奏でられる旋律。『ミツキ、僕は ─── 』そこで視界は闇に包まれる。腕の中のぬくもりは跡形もなく、俺はまたアスカのいない世界に取り残される。唇に残された柔らかな記憶は、万華鏡のように世界を反転させる。辺りに漂うのは、胸を締めつけるあの仄かな香り。俺は信じたかった。桜色の唇から零れる前に、記憶の果てで淡く融けてしまった言葉。それがこの暗い世界を射す光となることを。"Dreaming Kiss" end - 25 - bookmarkprev next ▼back