K01 : 熱の入江[20/24]


俺の半身を扱きながら多田さんの親指が、先端の窪みに触れる。

「ほら、知ってる? 楓のここ……さっきからずっと零してる」

くちゅりと水音を鳴らしながら低く囁かれて、また快感が身体の奥からせり上がってくる。

小さく喘ぎながら、俺は頭の片隅で確信していた。

ああ、多田さんはきっと言葉で追い込んでいくタイプなんだ。

奥を強く指で圧迫されたまま先端をぐるりと親指で弄られた瞬間、中が勢いよく収縮して、俺は大きな声をあげながら二度目の熱を放ってしまってた。

「 ─── は……ぁ……ッ」

乱れた呼吸を繰り返しながら、自分の身体をとうとう支えきれなくなって多田さんの脇に力なく横たわる。

余韻に浸りながらぼんやりと横を向いて、多田さんの脚に擦り寄ってそっとキスしてみたら、ガチガチに勃ち上がったそこが目に入ってふと我に返る。

「うわ、ごめん……!」

多田さんのことをほったらかしにしてしまったことと、何も考えないまま自分が放ったものがきっとこの身体のどこかに掛かってることに今更ながら気づいた途端、急に申し訳なさでいっぱいになってくる。

結局、俺ばっかり気持ちよくしてもらって、この人に何も返してない。

慌てて起き上がった俺を見て艶やかな笑みを浮かべながら、多田さんは片腕を伸ばしてそっと頭を引き寄せてくれる。

「多田さ……」

名前は最後まで呼べなかった。唇が合わさって、するりと滑り込んできた舌を俺はしっかりと捕らえる。

口の中で舌を絡ませながら深く深く貪り合えば、意識がとろんと溶けだすように揺れていく。

力がうまく入らなくて、飲み込み切れずにだらだらと溢れる唾液まで絡め取られてしまう。

思うように動けない気怠くて緩い感じが、すごく心地よかった。

うっとりと余韻に浸りながら唇をそっと離す。枕元に手を伸ばした俺は、ボックスティッシュから何枚も引き抜いた紙を重ねて、多田さんの肩先で光る白濁を拭っていった。

なんかすごい飛んでるんだけど。もう、なんかめちゃくちゃ申し訳なくて、恥ずかしくて、いたたまれない。

「多田さん、ごめんなさい。ベタベタするよね。シャワーで洗い流す?」

顔を覗き込みながら謝れば、多田さんはしばらく黙ったまま俺をじっと見つめる。

あれ? ちょっと待って。

「 ─── うん、そうだね」

少し苦笑して口を開くその顔は、こんなことになる前の多田さんに戻ってしまったみたいに見えて。

なんとなくこのまま、なし崩しに終わっちゃう雰囲気なんだけど。

まさか。まさかこれで、おしまいじゃないよね?

不審に思われそうなぐらい多田さんの顔に見入ってしまえば、その表情がふわりと和らいで、また艶っぽい眼差しを向けられる。

高鳴る心臓の音は、きっと聴こえてる。

真っ直ぐに伸びてきた手が火照る頬をくすぐるように撫でた。

「本当に、かわいい」

そんな言葉を掛けられて指先が唇に触れれば、そこからまた一気に熱が上がっていく。

俺はきっと何かの病気に罹ってて。しかもそれは重症で。おまけにもう、治らない。

「その前に、楓をもらっていい?」

ゆらりと光を湛える瞳には、俺だけが映ってる。

もう俺は、とっくに多田さんのものだった。ただ、まだ身体を繋いでないだけ。

「……うん」

頷きながら笑いかければ、多田さんは起き上がってまたキスをくれた。

唇をなぞるようにそっと舐めてから優しく啄ばまれる。たったそれだけで、さっき果てたばかりの俺の中は共鳴するようにまた疼いてくる。

身体の内側がうだるように熱くて、欲しくて欲しくて堪らない。

そっと押し倒されて、それに逆らうことなく仰向けに寝転がる。軽く両脚を開けば、後孔に多田さんの先端があてがわれた。

熱い塊の先端が滑って、入口を擦りながらぬるぬると小さく動く。

くすぐるようなその刺激に、もう2度も欲を吐き出したものがまた貪欲に反応して勃ち上がってくる。

俺を見下ろす多田さんの瞳は艶やかに濡れてて、その眼差しを注がれるだけでどんどん感度が上がっていくのがわかる。

ねえ、多田さん。

俺も、あなたのことをもらっていい?

ずっとだなんて言わない。このひとときでいいんだ。こんなことを願うのは、今だけだから。

囚われるだけなんて嫌だ。俺もこの人を、手にしたい。

だから俺はわざと小さく腰を揺らして、精一杯甘えてみせる。

「お願い、挿れて……」

熱で掠れる声に応えるように、多田さんは少し屈んで俺の頬に触れる。そのまま額に手を滑らせて、濡れて貼り付いた前髪をそっと取り除いてくれた。

不意に後孔を圧迫する感覚に、上擦った声が漏れる。

「 ─── あ、あ……っ」

目を閉じることで感覚を研ぎ澄まして、息を吐き与えられる熱を受け容れていく。

ゆっくり、ゆっくりと。探るように入ってくるその昂ぶりを、俺の中は悦びに震えながら少しずつ呑み込んでいく。

ふと多田さんの動きが途中で止まるから、瞼をうっすらと開ければ、俺をじっと見下ろすふたつの瞳が目に入った。

そのきれいな眼差しは、俺を見つめながらもなぜか小刻みに揺らいでる。

それは焦らすことで俺を試してるようにも見えれば、この行為自体を躊躇っているようにも見えて。

ああ、やめないで。

離したくないと思った途端、引き込むようにお腹の下の方にギュッと力が篭って、多田さんが息を詰めるのがわかった。

俺はなりふり構わず、声に出してねだってしまってた。

「あ……、もっと、ちゃんと、奥……ん、ああッ」

途端にグッと腰を浮かされて、一気に最奥まで貫かれる。



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