the 2nd day[15/18]

与えられる緩やかな刺激を息を吐きながらやり過ごそうとして不意に頭を掠めるのは、歪んだ愛の成れの果てみたいな酷いセックスしか知らないミチルのこと。

この先、ミチルは恋をして誰かを好きになっていけるんだろうか。あの歳で数え切れないほど父親に陵辱され続けてたあの子は、この行為が愛を確かめ合うものとして交わされることを知らないんだ。
痛む胸をごまかしながら、俺はとうとう禁欲を解いてしまう。


「ハルカ。声、我慢できる?」


秘め事を囁くようにそっと訊いてみれば、ハルカはかぶりを振って口を開いた。


「僕はいいよ。タクマさん、口でしてあげる」


スウェットの中に滑り込んできた繊細な手を掴み上げると、ハルカは驚いた表情で目を見開いた。きれいな瞳を覗き込みながら、俺は自分の望みを訴える。


「ハルカと繋がりたいんだ。大好きなハルカと身体を重ねて、ハルカの全部を感じたいし、俺のことを感じてほしい」


「……だって、ミチルに聴こえちゃうよ」


「聴こえないようにすればいい」


馬鹿みたいにそんなことを口にする俺を喰い入るように見つめて、美しい人は溜息と共に微笑みを零す。


「じゃあ、あんまり気持ちよくならないようにしてね。約束できる?」


ああ、ハルカ。
そんな言葉は逆効果だよ。


「保証はできないな。でも、努力はするよ」

「本当………?」


囁きながら顔を近づけてくるハルカの柔らかな唇を、返事の代わりにそっと啄ばむ。交渉成立だ。
何度も口づけ直しながら、手を差し入れて滑らかな肌に触れる。宥めるように撫で下ろしてから勃ち上がった半身に触れればビクリと細い腰が揺れた。熱を帯びたそこに指を絡めて壊れ物を扱うようにそっと手を上下させていくと、俺を見るまなじりはもう期待に甘く濡れている。


「優しくするから。大丈夫」


言い聞かせるように言葉を紡げば、ハルカはこくこくと頷きながらも快感から逃れようとしているのかそっと寝返りを打った。背を向けてしまったハルカの後ろからしっかりと腰を抱えて、前に回した手をゆっくりと動かしていくと、吐息に混じって思いどおりの反応が返ってくる。


「 ──── あ、んん……っ」


声を漏らす度に扱く手を緩めれば、ハルカは息を吐きながら首を振ってしきりに何かを訴えてきた。


「あ……タクマ、さ……」


腕の中でいじらしく身体を震わせるのが愛おしい。漏れ聞こえる微かな声は、確かに快楽に揺れていた。


「ん、何? ハルカ……」


背後から包み込むように抱きしめながら耳元で囁けば、またそこから逃れようと身を捩らせる。俺の手の中で、ハルカは今にも達してしまいそうなほどに硬く張り詰めていた。
その昂ぶりを感じながら手の動きを止めて、先端から零れる蜜を親指で掬って擦り付けるように撫で回せば、乱れた息の中でハルカは俺を振り返る。

必死に踏み止まろうとしながらも今すぐにでも快楽に流されてしまいそうな危うい眼差しは、煌めく光を湛えて小刻みに揺れている。
そんなハルカの全てが、俺の中の欲望をいたずらに煽っていく。一旦離した昂ぶりを軽く握り直してさっきよりも強い力で扱き上げれば、抑え切れずに大きな声が漏れてきた。


「あ、や……、んん……っ」


「ほら、静かに」


諌めるように覆い被さって唇を軽く啄ばんでから、汗に濡れた首筋にそっと舌を這わせていく。そんな小さな刺激さえきちんと拾ってはビクビクと身じろぐところもかわいいと思う。
そうやって何度も極限まで連れて行っては声をあげる度に与える刺激を緩めていくうちに、ハルカの身体から放たれる甘い匂いが濃厚に立ち込めてくる。

ああ、これは蜜の匂いなのかもしれないな。俺をおびき寄せて酔わせる、甘く芳しい罠だ。
だとすれば、なんて慎ましいものなんだろう。こんな愛おしい罠なら幾らでも嵌ってやるよ。


「もう、イきたいの?」


掌は先走りですっかり濡れてしまっている。俺の問い掛けに、ハルカは小さく頷いてまたひそやかに喘いだ。
うっすらと開いた瞼の下からは情欲に呑まれた瞳が覗き見えて、桜色の唇から押し殺したような苦しげな吐息がまた零れ落ちる。


「声、出したら駄目だよ。わかってるね」


わざと意地悪く念を押せば、今にも泣きそうなぐらいに潤んだ瞳をゆらゆらと揺らめかせて恨めしそうに俺を見つめてくる。そんな仕草にひっそりと嗜虐心を煽られながら、俺はハルカに優しい愛撫を繰り返していく。


「ん、あ、ぁ……ッ」


こうやって手の中で少しずつ快楽に融けていくところも、かわいくてたまらない。


「こっち向いて」


素直に振り向くハルカに覆い被さり口づける。熱い吐息を絡ませながら舌を挿し込み咥内をそっとくすぐっていくと、鼻から気持ちよさそうな声が抜けてきた。


「 ……っ、ん……」


宥めるような穏やかなキスを送り込んでいるはずなのに、その表情が一段と快楽に蕩けていく。無意識なのか、腰が小さく揺れては挑発するように俺の股間に押しつけられる。

ハルカの半身を扱いている手の動きを速めれば、熱っぽい喘ぎ声が唇の隙間から漏れてきた。それを堰き止めるように口づけ直して、俺はハルカから零れ落ちる全てを堪能していく。
くちくちと濡れた音を立てながら、手の中のものは今にも達しそうに小刻みに震える。根本を離し、先端の方を握り直しつてまた上下に擦っていくと、一段と硬さを増したそこがビクビクと強く収縮を始めた。


「─── ん、んんっ、ふ……ッ」


唇で喘ぎ声を封じ込めると同時に、温かなものが放たれる。掌でその熱を零さないように受け止めて、収まるのを待ち続けた。


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