the 1st day[7/20]

身体の重みが掛かった分、さっきよりも深く繋がっている。根元まですっぽりと包み込まれた自分の半身が、今にも持って行かれそうに張り詰めているのがわかった。

それをどうにか我慢しながら細い腰を手で支えてスプリングを弾ませるように揺さぶっていけば、その動きに合わせて吐息混じりの嬌声が零れだす。


「あぁ、ふ……、あ……」


ハルカの中は最高に気持ちよかった。後から後から生まれては全身に行き渡る快感を追いかけていくうちに、折り重なる感覚は増幅して身体を巡っていく。


「 ─── っあ、あ……ッ」


角度を変えて突き上げた瞬間、腕の中の身体が反射的に跳ね上がる。離れていかないように引き寄せて、腰を掴んだままハルカの弱い部分を抉るように刺激してやれば、全身を震わせながら両腕を絡ませて縋りついてきた。

艶かしいうなじからは、香しい匂いが強く漂っている。

しっとりと汗ばむ身体から放たれるのは、熟した果実に似た花のような匂い。

律動に合わせて息を吸う度に、俺の身体まで甘い香りに染まり始める。じわじわと理性を蝕む麻薬のように、この匂いは俺の内側を蝕んでいく。

いつしか本能のままに、ハルカの全てを貪ることに夢中になっていた。


「タクマさ……、もっと……、あぁッ」


ハルカは惜しげもなく喘ぎながら更なる快楽をねだり、背中をしならせる。まるで何かに駆り立てられているかのように求めてくるその姿を前にすれば、手を差し伸べて抱きしめずにはいられない。


涙を滲ませた瞳は、キラキラと光を放ちながらもどこか遠くを見つめている。

欲に融け切ったハルカは、胸が痛くなるほどきれいだった。

俺は余裕なんてとっくに失くしてしまっていて、セックスを覚えたてのガキみたいに抑えきれない衝動をぶつけていく。けれどハルカはその全てを余すことなく受け容れて、まるで同じ波に揺られているかのように呼吸を合わせてくる。

相性なんだろうか。初めて肌を重ねているとは思えないぐらい、互いが響き合うように高まっていくのがわかった。


「 ─── ハルカ」


離れないようにきつく抱きしめて、首筋に唇を押しつける。

俺、本当にガキみたいだな。

頭の片隅で呆れながら、そこに強く吸いついた。

何度も何度も、位置を少しずつずらしては柔らかな肌を吸い上げていく。

ハルカは首を仰け反らせて、それを悦ぶように喘ぎ声を零す。

こうして所有印を付けるのは、ハルカの身体を自分の愛した証で上書きしたいからだ。

つまらない独占欲に塗れてこんなことをするなんて、自分でも全くどうかしてるとしか思えない。


「ああ、あ……っ!」


いっそう強く一点を吸い上げた途端、ハルカの中がぎゅうぎゅうと俺を痛いぐらいに締めつけて、収縮を繰り返す。腹に熱い飛沫が飛び散る感覚に驚いて、唇を離して下を向く。

2人の間に挟まれて肌を擦るように揺れていたハルカの先端から、白濁が滴り落ちているのが目に入った。


「……ハルカ、気持ちいい?」


口を突いて出たつまらない問い掛けに、荒く息をつきながら気怠げに頷く。身体に回された腕の力は弱まっていて、それでも抱きついてくるのが愛おしい。

その額にそっと額を寄せて、顔を覗き込む。焦点の合わない瞳が、虚ろに俺を映し出していた。

ハルカ。ちゃんと俺を見てくれよ。

余韻を長引かせるように緩やかに腰を動かしながら、昂ぶる気持ちを言葉にする。


「好きだ」


沢山の女と付き合ったし、数え切れないぐらい抱いてきた。

けれど誰と一緒にいようと本気にはなれなくて、いつも無意識に彼女の面影を追い掛けては虚しくなる日々を送っていた。

だから、こんなに熱い想いを告白する相手は、人生で2人目だ。

1人目は勿論、ハルカと同じ顔をした彼女だ。
もう二度と、会うことのない人。


「出逢ったばかりでこんなことを言うのは、自分でもバカげてると思う。こんなに年が離れてて、しかも男で。でも、一目見たときからどうしようもないぐらい惹かれてる」


俺の話すことを、ハルカはぼんやりとした顔で聞いていた。少しずつ瞳に生気が戻ってくる。


「こんな気持ちになることなんて、もうないと思ってたよ。ハルカのことが好きなんだ。俺と一緒にいてくれ」

セックスの最中に、いい年をして何の捻りもない直球の告白。みっともないことは百も承知だ。わかっていても、長い間感じることのなかった強い想いを伝えずにはいられない。

自分の気持ちを真っ向からぶつけて、掴まえておきたかった。

ハルカは恥ずかしそうに目を伏せて、優しく微笑む。安堵したような、柔らかな表情だ。


「ありがとう、タクマさん」


潤んだ瞳からきれいな涙がみるみる溢れ出て、頬を伝い落ちていく。


「僕もあなたのことが好きだよ」


その言葉は、全くの偽りというわけではないのかもしれない。けれどハルカの言う"好き"が、俺のそれと同じでないことぐらいはわかった。

今はそれでも構わない。一緒にいるうちに、俺と過ごすことに慣れればいい。とにかく俺は、ハルカを自分のところに置いておきたかった。

頬を伝う涙を親指で拭ってから、唇を軽く押しあてる。細い首筋には、幾つもの紅い痕がうっすらと浮き出ている。それが何とも言えず艶かしい。

俺が付けた所有欲の証がこのきれいな身体に刻まれたんだと思うと、悦びで背筋がゾクゾクと震えた。

俺が何をしたか、ハルカはもう気づいているんだろう。花弁のようなそこをそっと指でなぞれば、恥ずかしげにはにかむ。その顔がかわいくて、込み上げてくる愛おしさのままに唇を奪うように重ねて舌を絡め取った。


「ん、ン……」


鼻から抜ける声に合わせて、俺を包み込むそこがゆらりと揺らめく。



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