My Little Treasure[1/2]

1学期の期末考査最終日。


終礼が終わった途端教室を飛び出して行った小柄な後ろ姿に、今日は何か用事でもあるのかと思いきや、何のことはない。校門を出たところでちゃっかり俺を待ち伏せしていた。
キラキラとした瞳で俺をうっとりと見つめながら、「わあ! カイくん、見っけ!」と大きな声をあげる。

自称俺の学校公認ストーカーである七瀬は、なぜかこうしてつきまとったり待ち伏せたりするのが好きらしい。一緒に教室を出ればいい話なのに、まどろっこしいことこの上ない。
俺には全く理解しがたいが、まあ七瀬が楽しいなら好きにさせておけばいいと思っている。


「カイくん。今日、俺の家来る? 誰もいないし、いいよね!」


しっかりと腕を掴まれて引きずられるように家に連れ込まれた挙句、今日受けた試験の答え合わせと称して問題用紙を広げた途端、「待って! もう、最高にムラムラするんだけど……!」と抱きついてきた。


「お前、いつもムラムラしてるよな」


「だって! カイくんがカッコいいのが悪いんだもん。今エッチしてくんなきゃ、ここでカイくんの淫らな視線を感じながら1人でハァハァしちゃうからね!」


「アホか」


「あ、ほら。見て、俺のここ。もう、触るだけでイっちゃいそ……」


勃ち上がった自らの半身を驚きの早さで取り出した七瀬に潤んだ瞳で見つめられた瞬間、試験中の禁欲生活は終わりを告げた。

誘われるまま流されて1週間振りにしたセックスは犯罪級の気持ちよさで、それは俺だけでなく七瀬も同じようだった。


「ああ、あッ、カイくん、好き、好き……!」


突き上げる度に腰を振りながら、七瀬は蕩け切った顔でうわ言のように俺の名前と好きを交互に連呼する。果てる度に感度を増すしなやかな身体が、いたずらに俺を締めつけて追い上げていく。


「ん、あぁッ、いっぱい出してえ……ッ」


息も絶え絶えにねだってくる七瀬の中に、溜め込んでいた劣情を断続的に吐き出してしまう。ようやく収縮が落ち着いてから息をついて顔を覗き込めば、俺の下で七瀬はくたりと意識を失っていた。


「 ──── 七瀬?」


呼びかけても、反応がない。
慌てて顔を近づけて掴んだ肩を揺さぶると、スヤスヤと気持ちよさそうな寝息が聴こえてきた。
なんだ、寝てるのか。
安堵の溜息が口をついて出た。胸を撫で下ろしながら、絶頂の余韻でまだ微かに蠢く七瀬の中から欲を出し切ったものをずるりと引きずりだし、ティッシュで軽く後始末をしていく。
改めてその寝顔を見下ろせば、下瞼がうっすらと色づいていることに気づく。伏せられた長い睫毛の影がいつもより濃く見えるのはそのせいだ。連日の試験勉強で睡眠不足なんだろう。

無理をさせてしまったことに罪悪感を覚えながら、俺は七瀬の中に指を挿し込んでそっと欲の残骸を掻き出していく。ぬるりと吸いついてくるその感触に、またチリチリと身体の中で余熱が燻る。

肩まで布団を掛けてやってから、階下に降りて脱衣所に入った。棚からフェイスタオルを取り出し、湯を張った洗面台に浸して硬く絞る。
部屋に戻り、布団を捲ってどちらのものともつかない体液でベタベタになった七瀬の身体を拭いていく。身体を動かしても死んだように眠っていて、全く起きる気配がない。


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