「圭介、最後まで、したい」
みっともなく泣きじゃくりながらそう言えば、圭介は優しく抱きしめてくれた。
鈍感な幼馴染みも、いい加減僕の気持ちに気づいているのかもしれない。
涙を堪えながら仰向けに横たわり、脚を広げれば膝裏に手があてがわれる。熱い先端が僕の後孔をくすぐって、そのままのし掛かるように、少しずつ入ってきた。
圧迫感に息を吐きながら、僕は圭介を受け容れていく。奥まで呑み込んで、2人の肌が合わさる。ゆっくりと揺さぶられた拍子にまた涙が溢れだした。
ああ、本当に、夢みたいだ。
「航、痛い?」
「……気持ちいいよ」
かぶりを振りながら、僕は笑ってみせる。
圭介、この身体はこんなことで痛みを感じるようなきれいなものじゃないんだ。
さっき欲を放ったばかりの僕のものは、もう反り返り蜜を垂らしている。
探るような抽送に身体の芯から快楽が引き摺りだされていく。それだと意識するよりも早く、僕は軽く果ててしまっていた。
好きな人とするセックスは、こんなにも気持ちいいんだ。
繋がる部分は熱くて、奥を突かれる度にどろりと何かが融け出していく。
「けいすけ」
小さな子どものように両腕を伸ばす僕の上に、圭介の身体が倒れてくる。縋るように抱きついて、沸き起こる快楽の波に揺られていく。
「ん、あっ、イきそう……」
途切れ途切れに漏れる僕の声に合わせて、突き上げられて。瞼の裏にチカチカと火花が走った瞬間、僕は口走っていた。
「 ─── 好きだ」
ぎゅう、と強く抱きしめられて、その拍子に僕の中が収縮を始める。何度も声を漏らしながら果てていけば、そこに熱い飛沫が放たれる感覚がした。
高いところから堕ちていく心許なさに、身体を押しつけるように縋りつく。荒い呼吸を繰り返して、僕たちはひとつになったまま持て余すこの熱を交じらせるように口づけた。
後処理をして、服を着て。何事もなかったかのようにしたかったけれど、それはどうにも難しいことだった。
圭介を玄関先まで見送る僕は、ぎこちない空気に堪えかねて少し笑ってみた。
「ごめん、呑み過ぎたね」
けれど、圭介は笑わなかった。僕をじっと見つめて、手を伸ばす。大きな掌で頭を撫でられて、また涙が出そうになるのを必死に堪える。
「航、俺は」
「圭介」
言葉を遮って、僕は首を振る。
「今日は、もう」
それだけを言えば、圭介は言いかけた何かを呑み込む。何を言うつもりなのかはわからなかったけれど、それを聞かない方がいいことはわかっていた。
「……じゃあ、また明日」
圭介が口にした言葉に、僕は返事の代わりに微笑んでみせる。
- 8 -
bookmark
|