柊悟さんとするセックスは、いつも絶望的なぐらいに気持ちいい。
大学に入って適当な女の子たちとした子どもの遊びのようなセックスが、馬鹿らしく思える。
「……ん、もう、出る、出る……あああっ」
強く吸い上げられた途端頭の中が真っ白になって、僕は柊悟さんの口の中に熱を吐き出していた。
ぐったりと弛緩した身体を持て余して荒く息をついていると、柊悟さんが身体を起こして覆い被さってくる。
与えられるままに口を開き、絡みつく舌から伝ってくる自分の放ったものを受け容れる。
初めは嫌で仕方のなかったこの苦味が、今では媚薬のように僕を酔わせていく。快楽に感覚の全てを奪われてしまって、味覚などすっかり麻痺している。
何度かに分けて呑み干せば、柊悟さんは小さな子を褒めるように僕の頭を撫でた。
恍惚としながら目を閉じれば瞼に浮かぶのは、鮮やかな紅と青の入り混じるあの光景。
それは、葉月が最期に纏っていた色だ。
メールで時間を指定されて葉月から呼び出された僕が行ったのは、名前しか知らないビジネスホテルだった。
インターフォンを押しても応答がなく、嫌な予感を抱きながら鍵の掛かっていない部屋へ入れば中には誰もいない。
もしやと思い、ユニットバスを開ければそこに葉月はいた。
まず目に飛び込んだのは、紅い湯を張った浴槽に浸かり眠る葉月の姿だった。
葉月が着ているのはこの季節に相応しい涼しげな青いワンピースで、柊悟さんがデザインを手掛けたあの広告のモデルが着ていたものと、とてもよく似ていた。
左腕は浴槽の縁に掛かっていて、生き物のようにパックリと大きく口を開けた手首の傷からは鮮やかな血液が流れ出す。
人は死ねば傷口が開くことを僕が知ったのは、その時だ。
真っ赤な血液は手首から薬指へと細く伝い滴り落ちては排水口へと流れていく。
永遠の愛を象徴するプラチナのリングが、血にまみれて濡れていた。
深紅の海の中で眠る葉月は、御伽話のお姫様のようだ。
ああ、なんて綺麗なのだろう。
彼女が生命を掛けてやり遂げたあてつけを見て、僕は心底その美しさに魅了されていた。
涙を零しながら、ただ呆然とその光景に見惚れていたのだ。
お返しのように柊悟さんに奉仕して、放たれた精を呑み込んでしまえば、そんな他人を高めるための行為にさえ僕の身体は反応して、もうぐずぐずに蕩けてしまっていた。
「……ん、ああ……っ、あ……ッ」
中を掻き回される度にビクビクと跳ね上がる身体は欲に溺れ切っていて、僕の意思では抑えが効かない。
「ああ、そこ……、もっと……」
四つん這いになって後ろから挿し込まれた指を咥え込んだまま、だらしなく腰を振る。埋められた指が時折1番気持ちいい部分を掠めていく。
そこをわざと外すように解されていくうちに、ドロドロに融かされながら僕は更なる快楽を求めてみっともなく強請ってしまう。
「しゅう、ご……さ……、ああッ」
引っ掻くように強く刺激されて、身体が跳ね上がる。
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