「あれ…慶?」


「よお。遅いから迎えにきた」




迎えに来てくれた事が嬉しくて内心はしゃぎながら慶に駆け寄ると頭を撫でられて思わずキュンとして胸が高鳴り頬を赤く染めてしまう。あっダメ……慶に告白されてから閉じ込めた感情が湧き出てしまう。これじゃあ、返事する前から好きなのバレバレじゃん!平常心平常心!!気づかれないように気付かれないようにふぅと息を吐き心を落ち着かせる。うん、大丈夫。




「ごめん城戸さんとちょっと話してた」


「そうか。隊室でいいか?」


「うん、むしろ大丈夫?みんな今日も来てるよね」


「あいつらならニヤニヤしながら出ていったから大丈夫だろ。むしろ後が怖い」




想像ができてついつい笑ってしまう。あ、でも今回は私も巻き込まれるから笑えないやつ…想像しただけで背筋が凍って怖い。恥ずかしいな。柚宇ちゃんとか絶対根掘り葉掘り聞いてくる予感しかなくてやばい。どうやってポロっと零さないように誤魔化そうか今のうちに考えておこうかな?あ、そんなこんなと考え込んでいたら太刀川隊の隊室に到着してしまったみたい。中に入るとやっぱり誰もいなくてシーンとしていていっつも賑やかだからちょっと余計に緊張しちゃうな。




「お茶いるか?」


「うん!もらっとくね」




こういうのはいつも柚宇ちゃんとかがやってるからか慶のお茶くみの動作はぎこちない。なんとなーく柚宇ちゃんのを見てるのを思い出しながらやっている感じで危なっかしい。やる気満々!って感じだったから何も言わずに黙って見守ることにした。




「お待たせ」


「ありがと……横」


「あ、ああ」




ちゃんと言わなくても横、って言うだけで幼い時から一緒にいるせいなのか、向かいじゃなくて隣に座ってほしいっていう意図が伝わる。それに少し嬉しさを感じて照れくさい。自分でやったのにね。胸の早まる鼓動をまた抑えるために息を大きく吐く。ちゃんと、慶に伝えなきゃ。




「……話、長くなってもいい?」


「ああ。お前が思ってる事全部聞きたい」




不意に合った慶との視線。あまりにも真剣にこちらを見てその顔が私の胸の鼓動をまた早くさせる。ああ、その顔好きだなあと場違いに思いながら。




「……何から話せばいいかな?…………まずね、私慶のことずっと好きだったの」


「だった……?」


「……慶気づいてなかったでしょ?家が近くて毎日のように一緒に登下校してたのに。ま、それは慶が中2になった辺りからなくなったけど」




慶が中2の14歳で私が小学校6年生の12歳。中学校が小学校の先にあったから中学校に入っても慶は毎朝私の家に来てくれて、学校まで一緒に登校してくれた。さすがに下校はタイミングが違うからお互いに友達と帰っていたけども。




「慶に初めて彼女できた時、たまたま一緒に帰ってたの見たことがあったの。その時すっごく悲しくて虚しくて慶はずっと私の近くにいてくれると思っててたからすごくショックだったの……それからだよね、登校一緒にしなくなったのは」


「……そうだったな」


「その時ね、初めて私は慶が好きだったんだなーって思い知った。それから私も中学上がって…それからは更に私にとっては地獄だったの。慶はモテモテで周りにはいつも女の子。満更でもなさそうな慶…………今思うと本当に腹立つよね!!」


「こ、拳をしまえ!こえーわ!」




なんで、レポートとか溜めまくって痛い目みて年下の私に泣きついてくるクズの極みみたいなやつの周りに女子が集まるわけ!?やっぱり顔なの!?みんな顔に騙されてるわけ!?性格最悪だからね!?




「だから自然と慶との会話は減った。むしろ私が慶を避けはじめたよね」


「ああ、地味に傷付いたんだからな。声掛けても曖昧に適当に返すし、話したくないオーラ全開だしな」


「しょうがないじゃない……慶を避けたのは上級生に目をつけられたくなかったってのもあるけど一番はね、辛かったの」


「辛かった?」




慶と話したら自分の気持ちが抑えられなくなる。慶はきっと私の事を妹のような存在しか見てないと思い迷惑だと思ったから。慶の妹的存在の自分を演じるのが嫌だから。とか色んな嫌な感情があったから。




「そんな生活を続けてた時……第一次侵攻がきた。お母さんが旧ボーダーの創設メンバーに入っていたの驚いたけどそれ以上に慶がボーダーに入ったのは本当に驚いた」


「俺もおばさんがいた時は驚いたな」


「ふふ。でもね、理由が出来たの」


「理由?」


「慶と話す理由。私もちょっと大人になったんだよ?第一次侵攻で友達たくさん亡くしたからね。だから慶が望む妹のような存在の私を演じて自分の気持ちを隠す事ができるようになったの」




懐かしいな、とその時の記憶を脳裏に思い出させる。幸せな記憶。でも、心のどこかで悲しさを感じていた日々。




「でもやっぱり好きなのは変わらなかった。だけどね、お父さんとお母さんが亡くなった時。
慶が助けてくれなきゃ私も死んでた。嬉しかったしすごく頼もしかった。慰めてくれた慶の温もりと匂いが更に私の気持ちを高めさせたけど、それもやっぱり押し殺した。慶が望んでるだろう可愛い妹っていう立ち位置をちゃんと演じるために」




優しく大丈夫、大丈夫と言っくれた慶の声。止まらない涙を更に溢れさせる慶の優しい手。安心感がある男の子らしいしっかりとした慶の身体。そして、鼻腔を刺激する慶の匂い。全てが私の慶への気持ちを増幅させた。




「せっかく押し殺したのにそれを本人に簡単に破られる。だから、私は更に強く強く気持ちを押し殺したの。それで慶とやっと普通にようやく話すことが出来たのに……」


「真李愛…?」





私が必死に我慢していた思いをやっと解放できたからか解放感で涙が溢れ出る。あーもう気持ちが止まらない。感情が溢れ出てくる。




「なんで、なんで今更好きなんて言うの……遅いよ……どれだけその言葉を待っていたと思ってるのよ…頑張って慶に迷惑かけないように閉じ込めたのに…私頑張ったのに……あれは、無駄だったの…?」




涙が止まらない。慶への想いと同じように溢れ出す。私が言葉を言い終わると慶が優しく抱き締めてくれ、ポンポンと背中を優しく叩いてあやしてくれる。そして私の肩に慶の頭が乗っかる。




「……ごめん。お前がそんな風に思っていたのを知らなかった。辛い想いさせてたな。待たせて悪かった」


「っ…う、ん……」


「ごめんな……でも、これだけは言わせてくれ。俺はお前の事を妹みたいだとかは思った事はない。本当はずっと付き合いたかったしキスしたりしたかった。けど、2つ離れてたからな…こんな穢れた感情をお前にぶつけたくはなかったから好きでもないやつと付き合って真李愛と重ねてた……最低だよな」


「………慶だったら良かったよ。他の人と付き合うくらいなら私に全部ぶつけて欲しかった」




私がそういうと慶は抱き締めていた腕を解放する。そして私とまた向き合うと苦笑いを浮かべてガシガシと乱暴に頭をかいた。そんな反応をされるとは思っていなくて疑問になり頭を傾げると私の頭を慶の大きな手で撫でる。




「本当に好きなやつにはそんな姿を見せたくないのが男心なんだよ。
ボーダーに入ったおかげでまた真李愛と昔みたいに話せて正直嬉しかった。ちゃんと俺と向き合ってくれて…セクハラできるまでに、な」


「……最低」


「大事な事なんだよ」


「ふふっなにそれ」


「……やっと笑ったな」




頭に置いていた手を下げて私の目尻へと手を這わせる。そして、親指の腹で涙で赤くなったであろう目元を優しく撫でる。どうしたの?という意味をはらみ慶を見ると今までに見たことないくらい優しい笑顔を浮かべていて酷く胸が締めつけられる。不意打ちにきゅんとしてしまった。




「泣く顔より笑った顔の方が俺は好きだ………泣くのはベッドの上だけにしろ。そっちの方がそそる」


「…ほんっとに最低っ!!!」


「真李愛はそれくらい元気じゃないとな……で?俺はお前からの返事を聞いてないぞ」


「え?」


「どう思っているのかは分かった。だが大事な言葉を言ってないだろ?」




………あ。慶の言いたいことが分かり小さく声を漏らす。確かに私は今までどう思っていたのかを全て話した。だから伝わったかもしれないけど、ちゃんと言わなきゃいけない気がするその言葉。




「………すき。慶が好きだよ。告白してくれた時凄く嬉しかった」


「ああ、俺も好きだ」




顔が近づき、唇にそっと触れた互いの唇。それと同時に目をゆっくり閉じてされるがままにされる。角度を変え何度も何度も交わり、苦しくなってくる。それに気付いたのかこれを見逃さないと唇をこじ開けられ慶の舌が私の口腔内に入り更に深く交わる。次第に身体の力が抜け後ろに倒れ込んでしまい慶に押し倒されているような体勢になるとやっと唇が離れた。




「慶……」




私がか細くそう呟くと、ピクっと身体を跳ねらせると慶の手が私のスカートの中へと侵入してきた。これはまずい。非常にまずいと思って片手を上げて慶の頭めがけてチョップをくらわせる。




「ってぇ!」


「慶、なにしようとしてた?」


「いやー……この空気ならやれるんじゃないかなって。てか、この角度からとかもうめちゃくちゃエロいし俺のむす」


「は?」


「すみませんでした」


「……はあ。先が思いやられる……」




でも、とりあえず慶と付き合うことになったのは進歩かな?貞操の危機を初日から感じたけど。ああ、明日から大変だろうなー慶があちこちに自慢するだろうからどうするか。幸せな気持ちよりも面倒な気持ちの方が勝ってきたかも。もしかして…失敗した?



私の気持ち




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