「修」


「!真李愛先輩」


「私も呼び出しされてるから一緒に行こう」


「はい」




私も呼び出し…ねえ?どうせ本部に行く予定だったしいいんだけどさー…一体何のようかなー?そのお陰で修を援護することが出来るからいいんだけどさ…城戸さんのことだからな用心しないと。




「……さて、話を聞こうか」


「お忙しい中時間を割いて頂いてありがとうございます……今日はひとつお願いがあって来ました。
ここにいるヒュースを玉狛第二に加入させる許可をください」




真っ先に根付さんが不許可の意志をしめした。まあ、根付さんは絶対反対だろうってのは私も修も分かってる。ヒュースも修に賛同はするけど情報提供には応じないと言うと、更に状況は悪化する。そして唐沢さんが修たちにとっての利得じゃなくてボーダーにとっての利得になるのか、と。んー確かに今までのだけじゃ無理ね。




「……林藤支部長はこの件をどう考えている?」


「……まあ正直に言えば俺が遠征の引率者だったらヒュースはあんまり連れていきたくはないかな」




忍田さんから林藤さんに問いかけたのに問いかけた本人が珍しい林藤さんの否定的な意見に驚いてるみたい。忍田さんいっつも優しいから私達側にいてくれて林藤さんもそうだから、きっとこの状況も林藤さんならなんとかなるんじゃないかと思って問いかけたんだけど逆の事をされたからかな。




「……真李愛はどうだ?」


「私ですか?ボスと同意見ですよ。いくら精鋭部隊といったって敵か味方か分からないような人を部隊に入れたら疑心暗鬼になります」


「珍しく2人とも常識的な意見ですねぇ」


「俺と真李愛はいつでも常識的ですよ根付さん」




私達はいつでも可愛い部下や後輩を守るために一生懸命なだけだよ。さて、私達はちゃんと修が喋るための前座はつとめたよ。だから頑張って修!修ならきっとできるよ。




「いえそれは逆です。
近界への遠征にこそ近界民を同行させるべきです」




修がヒュースを同行させる利点、未知の国々での色々な危険や問題も案内役がいれば滞在は安全になるという点をあげた。だけど、それはエネドラやレプリカの情報を元に遠征経路を吟味していると鬼怒田さんが言ったけども、修はそれを、エネドラは道案内はできても国の内情は分からないけどヒュースは詳しいガイドが余程の僻地ではない限り可能らしい。生きたガイドを連れていけるこのことが遠征の成功率を大きく高めると言う。




「そしてこの件に関してはヒュースの協力は約束されている」


「……!なるほど……!
ヒュース自身に「アフトクラトルへ戻る」という目的があるから道中は我々に協力的にならざるを得ないわけか……!」


「そのとおりです。
アフトクラトルに着いてからではなくそこに至るまでの大部分の期間。アフトクラトルに着くまでのあいだヒュースは必ず大きな助けになります。
これでもヒュースを連れて行く理由にはなりませんか?」




修が出した利点はどうやら上層部の心を動かしたみたいで、唐沢が賛成の意志を示すと忍田さんに林藤さんも賛成し、根付さんが鬼怒田さんの出方を待ってるみたいな感じ。まあ、この2人に関しては城戸さんが賛成すればどうにかなる。だから……城戸さん。どうする?




「……いいだろう特例としてヒュースの入隊を許可しよう」


「ありがとうございます!」




おっと、意外と早く承諾したね。っていうことは城戸さんもなんか企みというか条件を出してきそう。それに私も呼ばれた意味も今のところ見つからない…相変わらず何を考えているか分からないな。何を言い出すかな?




「……ただしこちらからも条件がある」




ほら。やっぱり条件出してきた。何だろうなーちょっとドキドキしてきた。きっと修はもっとドキドキしているだろうな。




「遠征の布陣を盤石なものにしたいという想いは私も同じだ。
きみがヒュースを連れて行くことを考えたようにこちらにも考えがある」




ゴクリ、と生唾を飲み込む音がやけに響く。




「結論から言おう。
雨取隊員を遠征に借り受けたい」


「!?そういうこと…!」




なぜ千佳をと修が城戸さんに問う。私は城戸さんの言葉で何を考えているのかすぐに分かった。そして、私が呼ばれた理由も。修の問いに鬼怒田さんが答えたんだけど、つまりこういう事だ。次の遠征はこれまでと比べ物にならない大遠征となる。そのためには膨大なトリオンが必要。溜め込んだトリオンを使い切った後は千佳から補給する事で停泊日数を減らせる。更には乗員数を増やす事ができる。行方不明者奪還を目的とするからには船が広くて損はないしね。




「それは……玉狛第二が遠征部隊に選ばれなくても千佳だけは連れて行くってことですか……!?」


「その通りだ。可能ならば今ここで決めてしまいたい。舞台の規模、遠征期間、雨取隊員の参加如何で計画は大きく変更される。
当然のことながらその場合は戦闘要員としての扱いではない。基本的には遠征艇での留守役「機関員」のような存在としての随伴になる」




んーって事はもし仮に玉狛第二が遠征部隊に選ばれなかった場合、千佳に修たちが探してる人達の情報を探ってもらうってのは出来ないって事だよね。難しい話だね。




「……わたしはそれでもいいです」


「……千佳!どういうことかわかってるのか!?」


「……うん。わたしがOKしないとヒュース……さんが部隊に入れないんでしょう?もともと遠征には行くつもりだったんだし何も悪いことはないよ」




千佳の表情はいつも通りで真剣で千佳は千佳なりにちゃんと考えているって分かる。千佳にそこまで言われたら修は何も言えないよね。本人の事だから。




「……では条件を了承したということで構わんかな?」


「はい……でもわたしたちの部隊は必ずA級に上がって部隊で遠征に行くと思います」




入隊したてはおどおどしていた千佳が城戸さんにちゃんと自分の意見を言えるようになるなんて…強くなったなあ千佳は。さすがレイジさんが師匠なだけあってメンタル面での成長も凄く感じる。なんかちょっと親の気分かも。




「まず先にひとつ言っておくことがある。次の遠征部隊選抜試験までの間に……きみたちがA級になることはできない」




どうやら遠征部隊の訓練と研修期間を今までより長く取りたいらしくA級挑戦資格を得ても昇格試験を行う時間がないようで。それじゃあただたんに千佳だけ取られてなにもできないと修が焦るのを城戸さんが落ち着かせる。千佳が遠征艇に乗るのが決まったから席に空きが出る。それをB級からも募ると。




「選抜試験開始まで残されたB級ランク戦はあと3試合。きみたちにはあと3試合以内にB級2位以内を目指してもらう。
少々難しい条件だが近界民を部隊に入れる以上厳しめに設定させてもらった。またヒュースは正規の手順で入隊したのちB級に上がってから部隊に合流すること。一般の隊員と同じだ」




城戸さんにしては優しいという印象。それだけ遠征は大事って事かな。




「……以上だ。異論がなければさがりたまえ」


「……ありがとうございました!」




玉狛第二は退室したけど、私は退室しない。だって私下がってなんて言われてないし話終わってないし。




「で、城戸さん?私に後輩の頑張る姿を見せて遠征の話をしたってことは私も遠征参加させられるって事ですよね」


「そうだ。お前にも戦闘要員として参加してもらう」


「わかってますよー可愛い後輩が逃げなかったのに私が逃げる訳にはいきませんから
その代わり千佳に負担がかからないように私も機関員と兼ねさせてもらいますから」


「構わない」


「じゃあ、私もこの後予定があるので失礼します。
……絶対に玉狛第二を遠征部隊に入れさせますから」




言いたいことは言えたし、用事も終わったし私も退室する。遠征かー今まで何回も遠征部隊に参加して欲しいと言われてたけど全部断ってた。理由なんてないけども、遠征部隊が帰ってきた時に出迎えてただいまと言われるのが好きだったから。だから、自分がおかえりと言う立場が想像出来なかった。でも、それも理由に入るかな?まあ、そんなわけで行かなかったけどあんな間近で千佳の覚悟を見せられたら先輩として出ない訳にはいかないし?そろそろ私も覚悟を決めなくちゃいけないみたい。でもその前に、目の前に迫った告白の返事をちゃんとする覚悟決めなきゃなぁ…。



ふたりの覚悟




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