今日のランク戦も無事に終了し、各々ぞろぞろと会場から出ていく。私も、人がある程度出払ったら会場を後にして玉狛第二が今日のランク戦で使用した作戦室へと向かった。




「はーいみんな今日はおつかれさまー」


「真李愛先輩」


「あれ、真李愛どうしたのー?」


「反省会に私も参加していい?」




みんなを1人ずつ見渡す、みんな私に向かって頷いて了承してくれたので作戦室の中へと入って輪に混じる。うーんみんな表現かったいなあ。




「どうだった?B級上位は」


「手強かった」


「遊真凄かったねー雅人の技まで覚えたじゃない」


「届かなかったけどね」




遊真はそんなに落ち込んでいない。遊真は落ち込むタイプじゃないし。そして、あの攻撃が届いていたらどうなってたかなんて私には分からないけどきっと状況はそれなりに変わっていたかもしれない。今更悔いてもしょーがないけど。




「千佳も頑張ったね。当たってはいないけど撃てた」


「……はい」


「千佳は撃てないって分かっていたから、撃ったことによって動揺はさせることができたんだから落ち込まないで?これは大きな一歩だよ」




ぽんぽんっと千佳の頭を優しくポンポンと叩いてあげるとまだ弱々しいけどはいと返事が来たので今度は優しく撫でた。




「修は?」


「……まだまだ力と経験差という壁を感じました」


「そうだろうね。まだ君達は結成しても入隊しても1年も経ってない。何年といる精鋭に一番近い相手に力も経験も勝るはずがない」




力は補えたとしても経験差っていうのは力では補えない。経験を積むしか経験差は補えない。それだけでも分かったのなら今日は良かったと思う。問題は、それからどうするかなんだけど。




「でも、その経験の差をカバーすることはできる」


「カバー……それって…?」


「それは自分で考えて!それに風間さんから言われた隊長としての務めもね」




さっきと矛盾してる言い方をしてるけど、矛盾はしていない。補えはしないけどカバーはできるというのは違う。さあ、修は考えることいっぱーい。でも、それは全て自分たちが強くなるために必要なことだからしっかり考えて考えて答えを出さないと。修がどんな答えを出してくれるのか楽しみ。




「真李愛先輩は今日の試合どう思った?」


「……正直に言っても大丈夫?」


「はい。お願いします」


「…まず私は最終からみんながあの3部隊相手に生き残れるとは思ってない。いくら遊真がいても遊真クラスしかいないのがあの3部隊だから今の玉狛第二じゃ無理だとは思っていたし、きっとみんなもなんとなくは感じていたはずだから経験としてはいい試合だったと思う!
みんなが前よりも成長していたのは見えた。でも、その程度の成長じゃまだまだ上位には勝てない」




誰かが言っていたけど玉狛第二は成長はしている。だけど、それと同時に他の部隊も成長している。既に差を付けられているのにそれじゃ差は縮まらないし、逆に広くなるかもしれない。今でもみんながそれぞれ頑張っているのは私はもちろん知っているけど、それじゃ足りないんだ。




「修の指示は良かったけど、詰めが甘い。室内戦に持ち込んで東隊と二宮隊2対2になって自分がフリーになった時、直ぐにその場から離れて少し遠くから様子を見ていた方が良かったかな。ちょっと狡賢いけどその方が見渡せて東さん見つけやすいし壁抜きされて即離脱にはならなかった。
4人が削りあってトドメにその中距離攻撃をいかして射撃したらもしかしたらちょっとは状況変わったかも。
まあ、東さんへの警戒がしていたとは思うけどこれも甘かった。東さんは現役の隊員で最強だと思った方がいい。それがB級にいるんだからもー本当に厄介!」




あくまで可能性の話で実際その移動中に東さんや他の隊員に狙われて落ちていたかもしれないしね。普段は頼りになるんだけど本当に今は東さんが厄介すぎてしょうがない。だってあの蓮ちゃんと二宮さんと加古さん、秀次を育てた人だよ?本当にもう怖い怖い。




「んで、千佳は撃てたのは良かったけどそっから震えているのは分かるけどレイジさんから教わってるでしょ?撃ったらすぐ逃げる!
今回はユズルと雅人…影浦が千佳を守る感じで犬飼を倒したから緊急脱出できた訳で次はそうなるとは限らないからどんな状況でも心境でもレイジさんの言葉は忘れずに!
今のうちどんな状況でも冷静な判断ができる習慣つけないと遠征行った時に2人の足でまといになっちゃうよ」




千佳が小さく頷いてくれたので、よし!と言って次は遊真を見る。その視線に気づいた遊真がお願いしますと言ったので遠慮なく行かせてもらうことにします。




「遊真は全体的に動きは悪くなかったかな。雅人の相手ご苦労様!いい経験になったみたいで何より。
言いたいことはそうだな……あのスコーピオンのリーチを長く早くできたら良かっただろうね。その練習をしてみると結構いい武器になるよね。
遊真がすべき事は今とは変わらずに色んな人と戦って吸収することかな」




影浦先輩と練習だなと遊真は返事し、私もたまに見に行きたいと返した。だって雅人大好きなんだもん!もちろん友達的な意味で。見ていて飽きないし、楽しい。同い年ってのも、大きいけど。




「後は全体的にそうだなー君たち仲はいいけど、仲がいいイコールチームワークに繋がる訳じゃない。仲が悪くてもチームワーク凄いとこなんてざらにあるし。
個々を鍛えるのももちろん必要なことだけど、これは部隊の戦いでもあるんだからチームワーク向上も忘れずに。つまり、チームとしての戦術も考えてみたら?
今のままでもいいかもしれないけど…それじゃ今期で上がれないよ」




それがB級上位の部隊やゆっくりじっくり強くなっていきたいのだったらそれはそれでありなんじゃないかと思うけどなんせこの子たちは遠征部隊に選ばれるのを急いでいる。なら、それは素直にオススメしない。




「ざっとこんな感じかなー?あくまで私の意見だから参考にするかしないかはみんなに任せる
そして、次に上位と当たる時は今回よりも結果を残さないと……私に10勝するまで帰させないからね。覚悟してね?修に知佳」




反応微妙……苦笑いで困ってる感じの修。千佳はあわあわとしていて不安げ。遊真だけ面白そうにしている。遊真はいけそうだけど2人はなーだからしょうがないか。それでも容赦はしないけど。




「そんな感じで練習頑張れ!何かあったら私に全然聞いてくれて構わないから励んでねー」




次、いつになるか分からないけど玉狛第二のランク戦楽しみだなー。でも、その前にやらなきゃいけない事がある。そのための準備のためにランク戦から数日後、私は本部の廊下を歩いていた。




「よ」


「……あ、慶久しぶり」


「ああ……久しぶりだな私服」


「そうだっけ?」


「ずっと制服しか見てないぞ」




んーと思考を張り巡らせると確かに最近というかずっとどこでも制服だったなと思い出す。制服の方が楽だからどうしても選んでしまう。それにあと数ヶ月でコスプレになってしまうってのもあるかもしれない。今のうちに楽しみたいし。




「そういう慶も私服」


「かっこいいだろ?」


「そうだねコスプレ感は抜けて普通になった」




慶は地味にショックを受けているよう。普通にかっこいいという意味なんだけどかっこいいなんて言ってはやらない。というか恥ずかしいだけなんだけど。




「真李愛は制服の時と違って一段と可愛いな」


「……褒めても何も出ないよ」


「その顔で充分だ」




そんな事を平気で言えるのが腹立つ。モテるだけあるってことか。腹立つ。顔に出過ぎな私にも腹立つ。



「最近どうだ?」


「んー…後輩の成長見てるのが楽しいって感じかな」


「玉狛第二か」


「修、唯我と100本勝負してるし前に悠一と歌歩ちゃんと仲良くやってたもんね。知ってるか」


「なんだ?嫉妬か」


「慶と悠一に嫉妬かな」




私も久しぶりに歌歩ちゃんと楽しく話したいなーとか思ったり思わなかったり。いや、思ってる。オペちゃんたちってなかなか会えないから話したいんだよねー柚宇ちゃんは別だけど。




「で?そういう慶は?」


「そうだな…真李愛が会いに来てくれなくて寂しいぐらいか?」


「またそう言うことを…」


「言っておくが俺はお前に嘘は吐かないからな」




歩いていた足を止めて立ち止まったので私もつられて足を止めて慶を見上げると久しぶりにこんな真剣な顔を見たっていうぐらい真剣な表情。大規模侵攻や普段のたまに見せる真剣な顔よりもなんていったらいいか…気迫というかなにかが違った。




「突然どうしたの…?」


「いつまでも勘違いしてそうだからな。もうそろそろ言わないとってな」


「…何の話?」


「真李愛、今回のが落ち着いたら話したい事がある」


「今じゃ駄目なの?」


「ああ」




なんで今じゃ駄目なのか、どうしてそんな真剣な表情をしているのか全く分からないけどとりあえず今は目の前の事に集中しろってことかな。慶の返事に私は分かったと返した。




「行くか」


「うん」




それからは何も無かったかのように私が行かない間に起きた太刀川隊の話をして、あっという間に会議室へと到着した。




「お疲れ様でーす…あれ?もうほとんど来てる」


「早く来たと思ったんだけどな」


「……人数と座席合ってないよね?」




座席が8脚に対して今日集められたのは11人。嵐山さん、城戸さん、忍田さん、響子さん、秀次が椅子に座り東さんと冬島さんは壁にもたれかかっている。後来ていないのは風間さんと悠一かな。その2人ももうすぐ来るはず。




「真李愛は俺の膝に座ればいいだろ」


「それ本気で言ってる?忍田さんが前に座ってるんだよ?よくそんな恥ずかしいことできるね……あと秀次の視線痛い」


「……」


「秀次?久しぶり」




ぷいっとそっぽを向く秀次は私の心を鷲掴むには充分すぎた。なにその反応。女子か女子なのか!何この子凄く可愛い。




「どうしよ、秀次好きになりそう……」


「は?」


「それは止めろ!」


「真李愛が来ると賑やかだな」




今まで睨まれて無視される事は多々あったけど睨まれずにそっぽを向かれたのは初めて。いや、もう可愛いんだけど嫌いになりすぎて睨むのも面倒なくらいになった可能性も否定出来ないのが辛い!でも、貴重な反応はありがとうございます!




「で、いつ俺の膝に来るんだ?」


「それ本気で言ってたの!?」


「ははっ面白そうだな。やればいいじゃんか」


「冬島さんまでまじやめて!悪ノリしないで」




忍田さんの爽やかな笑顔がチラチラ見えて本当に申し訳ない気持ちでいっぱいなんだから…あの顔が別に俺は気にしないとか言ってそうで尚更怖い。その前に本当にやったら城戸さんに怒られそうなんだけど。いや、やらないけど。




「いーよ東さんの隣いくー」




慶から離れて東さんの隣にお邪魔する。慶は嫌だし冬島さんもなんだかんだ悪ノリしてくるので東さんが一番安全。東さんはお前も大変だなと慰めてくれた。やっぱり東さんが一番安心できるね。




「この間はうちの後輩がお世話になりました?」


「疑問形か。いや面白い部隊だな」


「なんせ玉狛の期待の新人たちですから。次はどうなっても知りませんよ?」


「期待しとく」




今の順位的に再戦もそう遠くないはずだからみんなには頑張って欲しいな。




「そうだ、チョコありがとうな。美味かったよみんな喜んでた」


「本当ですか?良かった!作ったかいがありました」




もう一度、東さんはありがとうと言って頭を撫でてくれた。東さんに頭を撫でられたこととチョコを喜んでくれたこと2つが嬉しくてニヤニヤしてしまった。来年もまた作ろ!




「おつかれさまでーす」


「揃ったな。では緊急防衛対策会議を始めよう」



部隊としての




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