「B級ランク戦ROUND4。開始ギリギリになって申し訳ありません!実況を務めます嵐山隊綾辻です!解説席には風間隊の風間隊長と加古隊の加古隊長にお越し頂きました!」


「「どうぞよろしく」」




やっと今日ついにきた。玉狛第二がB級上位と戦う日。これは生で実況聞きたい!と思ったし風の噂で風間さんが実況やると聞いたので本部で一人寂しく観戦。




「風間さん一日遅れのバレンタインチョコあげる。綾辻ちゃんにも」


「わっやった」




ハートを飛ばしありがたそうに喜ぶ遥ちゃんが可愛らしい。あー今日遥ちゃん実況するのかー昨日我慢して今日渡したらよかった。そしたらあの可愛い笑顔私も見れたのに。話だいぶずれたね、いけないいけない。




「転送まであとわずか!MAPはすでに「市街地B」が選択されています!「市街地B」は高い建物と低い建物が混在し場所によっては非常に射線が通りにくい地形。地形戦で射撃を凌いで斬り合いに持ち込む狙いでしょうか。MAPを選択したのは東隊です。地形戦と言えば第3戦の那須隊が天候設定を使って敵部隊の分断を狙うといった大技も見られましたが……」




あの作戦は面白かった。あまりみんな天候とかいじらないからねー面白い可能性を感じた試合。この間途中見れなかった所はあったけど、記録をこの間見たから結末はちゃんとしっている。




「あれは楽しかったけど東さんはそういう博打はしないわね」


「だろうな」


「なるほど。さあここで全部隊、仮想ステージへ転送完了!
四日目夜の部四つ巴!いよいよ戦闘開始です!」




加古さんはああ言っているけど、東隊にはあのコンビがいる。あの2人ならやりかねないかなーとか思うんだけどどうだろう?




「MAP「市街地B」天候「雪」!積もった雪は30センチほどでしょうか。戦闘体なら走れなくはないが移動には少々骨が折れるといった様子」


「いきなりMAP予想外したな」


「これは東さんの趣味じゃないわ。きっと小荒井くんよ小荒井くん」




はーい。私の予想?は間違ってはいなかったみたい。東さんなら2人の意見を尊重するもんねーちゃんと作戦がたてていれば、ね。




「転送位置はどの部隊もほぼ均等にバラけています。雪上戦を仕掛けた東隊。そして仕掛けられた他3部隊はどう動くか!」




モニターに映ったはるが雪を踏み潰して遊んでいる。絶対やると思っていた行動に子供っぽいなーと苦笑い。でも、楽しそうだからいっかな。




「一斉に動き出す各隊!東隊と玉狛第二は隊員の合流を選択!影浦隊はこのまま急戦を狙う模様!珍しく二宮隊の動きが鈍いようですが……?」


「いつになく慎重だな。東さんをよく知ってるだけに東隊が仕掛けた雪MAPの意図を図ろうとしているのかもしれない」


「雪は絶〜〜っ対東さんの作戦じゃないわ。そんなことも見抜けないんじゃまだまだね」




加古さん手厳しいな。同じ東さんの元で教わっていた兄弟弟子のようなものだしね。東さんに警戒するのは分かるんだけどねーあの二宮さんでもやっぱり警戒するんだね。




「東隊さ迷いなく合流地点を目指す!玉狛より合流が早そうだ!」




もうそろそろあれが……あ、きた。ゾエの適当炸裂弾。適当にやってくるし急にくるから怖いったらありゃしないけど、みんな当たってないみたいで良かった……うーんみんなの動きを見ている限りやっぱり狙いは玉狛だなー。




「影浦隊北添隊員お得意の曲射砲撃!ナンバー1射手二宮隊長がそれを押さえに北西部へ向かう!犬飼・辻両隊員は隊長とわかれて玉狛狙いの動き。東隊もレーダーステルス状態で接近中。影浦隊長もここに乱入か?」




うわー雅人絶対遊真に興味もつだろうとは思った。哲治に鋼を破ったからね。それを逆手にとって利用しそうなのが新之助あたり。




「MAP中央は玉狛を中心に9人が集まり大乱戦の予感!これは唯一味方の援護がない影浦隊長が不利でしょうか?」


「乱戦になるならそんなに不利でもないんじゃない?どっしり待ち構えられたらきついけど場が荒れてくれば反射神経と勘が物を言うわ。それになにより影浦くんには狙撃も不意打ちも通用しない他の人にくらべたら「数の不利」は関係ないわね」




雅人のサイドエフェクトのおかげ。狙っていても気づかれてしまう。どんなに気を付けても、ね。だから厄介なんだよねー敵だと。正面から攻めて勝つぐらいしかないから。




「影浦を単独で止められるのはおそらく二宮だけ。北添が二宮を釣り出している間にどれだけ点を獲れるかだな。その条件は東隊も同じ。まずは獲りやすい点に狙いが集中する。狙われた玉狛がどう凌ぐかが見物だ」




厄介な二宮さんと雅人。その2人が一気に来たら大変というかもう凌ぎようがないに等しいんだけどゾエが二宮さんを上手く外してくれたおかげで少しは楽。ただ、ピンチに変わりはない。修のところにはるが来たし…どうするのかな?




「スタート直後の一番危険なこの時間帯。すでにあちこちで戦闘が始まっています!MAPの中央付近では玉狛第二が合流を阻まれた形!三雲・空閑両名とも格上とのマッチアップ!さあ玉狛第二この苦境を打開できるか!」




銃手相手にする場合はどうするか。それは嵐山隊に教えにもらって行った時に嵐山さんあたりから聞いているだろうけど、今回のこのMAPではどうかな?




「近づけないわね三雲くん。雪で鈍った機動力じゃ犬飼くんの攻撃は掻い潜れない。このまま犬飼くんの距離で撃ち合ったらガードを削られてやられるか足が止まったところを狙撃されておしまいよ」


「それは三雲自身もわかっている。そうなる前に何か手を打つだろう」




お、壁を破壊して中に逃げたかーでも、それで動きやすくなったのは修だけじゃないはるもだ。はるが一気につめよるけど修がレイガストで攻撃。はるは止めるが横からアステロイドを放つもそれも止められる。やばいなー修のレイガストが割れそう。だけど、東隊のコンビがはるに攻撃。修は一時的に助かった。一時的、にね。




「早くそっから動かないと危ないかもよー?修」




新之助が合流してきた。うん、でもそれでもまだ東隊の有利は揺らがないかな。銃手はあの位置だと援護がしにくい。それに風間さんも今言っているけど登と常幸の接近戦の連携は風間隊と肩を並べられるくらい。だからあの雪設定にしたわけか。うん、よく考えたね。




「あ…!」


「……そして何より東隊にはかつてのA級1位部隊を率いた「最初の狙撃手」東春秋がいる」


「先制点は東隊!東隊長が壁越しに狙撃!三雲隊長緊急脱出!」




あーあ言わんこっちゃない。といっても、修には聞こえてないんだけどね。それにしてもあのやられ方は堪えるなー東さん怖い。




「東隊長の壁抜き狙撃!部隊3人の観測データと精細な地形データとの複合オペレーション!MAP選択の権利を持つ部隊ならではの大技です!」


「珍しいわね東さん。壁抜きなんて当てにくいからあんまり使いたがらないのに」




そうなんだ。それは知らなかった。ん?ということはそれだけ修を警戒していたってこと?あの東さんに警戒されるとは、本人はきっとあのやられ方で相当ショック受けてるだろうから今の聞かせてあげたかった。




「えっ……!千佳が撃った!?」




あ、やばい。驚きすぎてつい大きい声が。観覧スペースに座らずに立って遠くから見ていたおかげで変な目で見られずにすんだ。って、そんな事よりも千佳が、修が撃たれた後の4人が固まっている地点に向かって大砲を撃った。これにはきっと千佳が撃てないだろうと思っているみんなは驚いただろうねーもちろん修も。撃てたのは嬉しいことだけど、早く逃がさなきゃ…!




「あっと!雨取隊員自発的に緊急脱出!?しかし東隊長が60m圏内にいる!これでは緊急脱出できない!」




うわー!絶対はると新之助が一番早く千佳に追いついちゃうよ。ほら、追いついた。だけど、千佳のシールドが硬くてなんとか粘れている。あ、遊真がやっときた。でも新之助が援護を阻止してくるので千佳の足元にグラスホッパーを起動させ手助けするも、はるは千佳にどんどん迫っていくけどはるの身体が狙撃で貫かれる。それにトドメを指す雅人。




「あれは東さんじゃない…ユズル?ふふ、ユズル優しいなー」




本人は絶対照れて否定しそうだけど。でも、そのおかげで千佳が緊急脱出できた。だけど、そのユズルも二宮さんに捕まった。そう長くはもたないだろう。遊真の負担が増えた。こんなことはあんまり言いたくないが勝敗は決まったもの。




「そしてMAP中央では攻撃手5人が勢揃い!見通しの悪い地形とはいえ狙撃手のいる東隊に分があるか!?」




遊真を囲うように立つ雅人に新之助に登に常幸。さーて、どれだけ遊真は粘れるかな?




「入り乱れる4部隊5人の攻撃手!東隊の2人と玉狛の空閑隊員はグラスホッパーを使える分雪の影響は受けにくいか!ただし……東隊には狙撃があります!空閑隊員は迂闊には飛べません!」


「東さんは援護に徹して2人に獲らせるつもりね。攻撃手で釣って狙撃で仕留めるいつものやり方とは逆ってことかしら?」




今日の東隊の印象は2人がよく考えてそれがちゃんと作戦としていいと思ったので2人に任せてみようとしている感じ。




「東隊に対する3人はどう動くべきだと思いますか?」


「東隊有利の場から逃げ出したいところだが機動戦では東隊の2人に分がある。場が動いて敵がバラけるなら東隊にとってはむしろ好都合だ。3対1で確実に落としていけばいい。
東隊の陣形を崩すか他の隊の背後を突くかいずれにせよ人数を利用して場を乱す必要があるだろう。
特に味方の援護射撃がもう望めない空閑は、な」




あ、ゾエまだ生きてたんだ。なんだかんだ行ってゾエって結構生き残ってるね。一番にやられそうなのに。ユズルもやばそうだなー二宮さんに今来て欲しくない。遊真も粘ってくれてるし。




「やはり空中戦組が乱戦のメインを張る展開。地上戦組は足元の悪さからかいつものように踏み込めない。東隊はやや空閑隊員に偏った狙いか?」




そのすぐ後に二宮さんにやられたユズルが緊急脱出。二宮さん相手じゃいくらユズルでも難しいからしょうがない。これで3部隊が並んだ。そして適当炸裂弾を撃っていたゾエを東さんが狙うが二宮さんのシールドで邪魔される。




「二宮隊長が北添隊員をカバー!?」


「貪欲」




加古さんは二宮さんの意図が分かったよう。二宮さんは容赦なくゾエを攻撃。ゾエも逃げることなく緊急脱出。だけど、ゾエの攻撃で五つ巴の戦場地の建物が崩壊した。そのおかげでやっと動いた展開。




「北添隊員に続いて一気に3人が落ちた!どれがだれの得点だ!?」




これで、あの戦場に残っているのは遊真に雅人。そして多分東さんが様子見といった感じかな?面白い展開になってきた。




「影浦隊と玉狛第二のエース対決!ザクザクとスコーピオンで削り合う!左腕と右足を失っている空閑隊員が押され気味か!得点は3部隊が横並びとなれば当然……他の二人もこの状況を黙ってみているわけはない!」




遊真の遠く背後から無数のトリオン弾が向かってき、そのトリオン弾は雅人と遊真に当たろうとするが2人はシールドで防ぐ。追尾弾あたりかな…だとすると二宮さんか。相変わらずの攻撃力。




「人数が減ったから火力差で押し込みに来たな」


「空閑隊員被弾!さすがにこれは苦しいか!?何とか遮蔽物を使って凌ぎたいところ!」




やっぱり火力差で遊真のシールドじゃ防ぎきれなかったみたい。さて、二宮さんが到着。二宮さんまで来たとなると決着が着くのは早いかな。




「空閑隊員前に出た!?追尾弾の誘導半径を見切ったか!」


「いい動きね空閑くん
でもその追尾弾は……相手を動かすための追尾弾なのよ」




遊真が二宮さんに向かってグラスホッパーで接近するも二宮さんによって身体を撃ち抜かれる。最後の足掻きで雅人を思わせるスコーピオンを使った攻撃を仕掛けるも、その刃は届かず遊真は緊急脱出した。




「ここで空閑隊員が緊急脱出!最後の刃は届かず!」




遊真が緊急脱出した後、残りの3部隊は玉狛第二という狙える駒がいなくなったことで動かず、さらに東さんが時間切れ待ちをしているよう。戦う意味はなくなったってことかな。




「試合はもう終わりね東さんは完全に撤退モードだわ。二宮くんもそれはわかってるだろうから危険を冒してまで攻める気はないでしょ」


「試合終了!最終スコア3対2対2対1。二宮隊の勝利です!」




生存点は玉狛第二以外の部隊は1人は残っているのでなし。得点が二宮隊3、影浦隊2、東隊が2、玉狛第二が1という結果。




「そして本日の試合がすべて終了!暫定順位が更新されます!二宮隊、影浦隊、東隊は順位変わらず玉狛第二は8位にダウンという結果になりました!
それでは時間も押してきてますのでざっくりと総評をお願いします」


「……今回は全ての得点を各部隊のエースが上げているが重要だったのはエース以外の動きだ。エース以外の隊員の能力差がそのまま得点に現れていると言える」


「そうね。影浦くんなんかは雪でいつもより動きが鈍かったけどゾエくんとユズルくんのアシストで2点獲れてるし早めに犬飼君を落とせたのも大きかったわ」




雪ではしゃいでいたはる。雪で思うように動けなくてイライラしていた雅人。見ていて2人とも面白かった!特に雅人。雪に雅人ってなんか面白い。




「たしかに……東隊の二人もMAPを使ってチャンスを作り二宮隊の二人は積極的に動いて隊長をフリーにした…………となると三雲隊長がほとんど動けずに落とされたことが玉狛の敗因になったということでしょうか?」


「落ちたことをどうこういうつもりはない。落とされて学んでいくのがランク戦の存在意義だ。犬飼との1対1も完全な悪手というわけじゃない。新しいことをやろうとする姿勢は見えたし鍛錬による成長も感じられた」




お、とりあえずは風間さんに褒められてるね修。でも、こっからがダメだし入りそう。飴と鞭が上手いからなあ風間さん。




「だが当然三雲以外の人間も日々鍛錬を積んでいる。当たり前のことをやっていては先を行く人間には追いつけない。本当に部隊を勝たせたいなら「自分の成長」という不確かな要素だけじゃなくもっと具体性のある手立てを用意する必要があった」


「それはつまり……「もっと自分の能力に合った戦い方をしろ」……ということですか?」


「違う
隊長としての務めを果たせということだ」




隊長としての務め、かーうーん難しいねえ。意味は分かっているんだけどこれがなかなか難しい。修には見つけることが出来るかな?玉狛第二の隊長としての務めを。



高い高い壁




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