さて、次はどこに行くかというと……ちょっといやかなりひねくれた後輩が隊長を務めるあの隊に行きたいと思います。




「蓮ちゃーん遊びに来たよ」


「あら、真李愛いらっしゃい」


「八城真李愛…!」




フルネームで呼ぶのがかなりひねくれた後輩である三輪秀次。三輪隊の隊長である彼。酷く近界民を恨んでいるから仲良くしたい玉狛、近界民である遊真をボーダーにいれた玉狛が許せないんだろうね。




「相変わらず冷たいな。隣に座るよ?秀次」


「来るな…!」




無理矢理座る。言葉では拒否するけど自分からは逃げようとしないんだよなー秀次って。こいつも実は優しい系男子なんだよね。




「真李愛先輩三輪大好きっすよね」


「見るとべったりしてますよね」


「俺は嫌いだ…!」




うんしってるーって返せばだったら近づくなと毒図かれる。それくらいでめげてたら風間さんにもべったりできないから。ポジティブです。




「秀次が今は嫌いでも私がずっと好きーってやってればいつか秀次が心開いてくれるかもしれないし!前も言ったけどほっとけないしね」


「相変わらずのお節介ね」


「それが真李愛先輩のいい所だと思います!」




三輪隊のみんなは優しい子しかいないからこれ以上捻くれることはないし味方になってくれる子たちだけど、私個人的に仲良くなりたいから構っていくんだよね。




「秀次が怖いからチョコ渡して私は退散するよー秀次がいない時にまた来る!」




蓮ちゃん、章平、透、陽介。そして強制的に秀次に渡す。渡した限り秀次は返品したり誰かにあげたりとかしないから渡した者勝ち。チョコを渡すと蓮ちゃんにバイバイと手を振りみんなにさよならを言って隊室を出る。次にいく隊は決まっていたので私は真っ直ぐと向かった。




「お邪魔しまー…あれ?2人だけですか?」


「ええそうよ。今日は私と双葉しか来ないみたいよ」


「そうですか…加古さんお久しぶりです。双葉ちゃんも久しぶり」




ニコニコとして久しぶりーと返す加古さんに表情を変えずにお久しぶりですと返す双葉ちゃん。対照的だな。




「ふふっ真李愛の分のチョコよ」


「ありがとうございます!」


「……私もあげます」


「え!?双葉ちゃんもくれるの?ありがとうね!」




お洒落で高級っぽいラッピングの加古さんのチョコに不器用にラッピングされた双葉ちゃんのチョコ。双葉ちゃんのは頑張ってラッピングした感がでてあの双葉ちゃんが頑張ってラッピングした姿を想像して可愛くて可愛くてしょうがない。




「…なんですか」


「いやー?双葉ちゃんが私のために頑張ってラッピングしてくれたの嬉しいなーって」


「先輩のためじゃなくてついでです」




ぷいっとそっぽを向く双葉ちゃん可愛いな。私と加古さんはその言葉は嘘だと分かっているので可愛らしくて2人で顔を見合わせて笑い合う。




「それでも私にくれるだけで嬉しいよ」


「……そうですか」




今日の双葉ちゃんはいつもの倍可愛いです。バレンタイン万歳。私が作ったチョコも2人に渡す。2人とも喜んでいるみたいで何より。




「まいまいとあんちゃんの分も置いときますんで渡してください」


「分かったわ。そうだわ!真李愛、新しい炒飯作ったのよ。良かったら食べていかない?」


「えっ……いや、まだみんなに渡しきれてないんで大丈夫です!私はこれで!双葉ちゃん、加古さんまた!」




加古さんの炒飯を食べられそうになったのでいそいで退散。加古さんの炒飯は危険…初めて加古さんに会った時に食べさせられて以来トラウマになってる。すっごく稀に美味しい時もあるんだけどね、だいたい危険なやつだから。そそくさと逃げてついた先は嵐山隊だったのだけど、嵐山隊は広報のお仕事が入っていたのを思い出して、小さな袋にメッセージをつけて隊室の前に置いといた。




「真李愛先輩!」


「駿」


「チョコちょーだい!」


「はいはい。どーぞ」




ありがとう!とキラキラ笑顔されたら文句は言えない。双葉ちゃんといい駿といいこの幼馴染みペアは可愛い。うちの幼馴染みとは正反対(蓮ちゃんは別)




「さっき久しぶりに双葉ちゃんと話してきたよ。相変わらずだよねー」


「あーそうだね。でも真李愛先輩そこが好きなんでしょ?」


「なんで知ってるの!?」


「迅さんが言ってた!」




アイツ…!余計な事を駿に吹き込むな。後で仕返ししよ。といっても、アイツには見えてるかもしれないけど私の気が済まないし。




「それ、本人にも他の人にも言わないでね!」


「はーい!」


「で?なんでここにいるの?遊真は?」




私のその質問に今まで元気だった駿の動きが止まってうーんと頬をかいて言葉に困っている様子。それに首を傾げていると駿が口を開いた。




「真李愛先輩がみんなにチョコ配ってるって聞いて…遊真先輩みんなと模擬戦してるからいいかなーって」


「なるほどね。そこまでしてきてくれたのは嬉しいけど、勝手に居なくなったらだめでしょ?遊真は心配しないだろうけど…それでもだめ」


「ごめんなさい……」




シュンとして反省している様子なのでよしよしと撫でて別に怒ってないよという意思を示すと駿がいつもの元気を取り戻した。




「早く遊真のところに戻りな?明日はいよいよなんだから相手になってあげて先輩っ」


「うん!」




駿は走って消えていく。完全に消える前に手をぶんぶんと振ってくれたので振り返す。まだまだ小学生らしさが残る姿に笑みが浮かぶ。




「相変わらずですね。後輩のしつけが上手い」


「…しつけなんてしてないし、上手かったら士郎もそんな態度じゃないでしょ?」


「そうですね」




?士郎の機嫌が悪い。いや、いっつもむすーっとしてるんだけどそれは士郎がひねくれてるからって…ディスってるな士郎のこと。とにかくそれなりに付き合い長いから表情の変化は分かる。だから今の士郎は変。




「なんでそんなに機嫌悪いの?」


「別に…それより行きますよ」


「え?ちょ!」




士郎に手首を掴まれてどこかに引っ張られる。引っ張られるがままに廊下を歩きたどり着いたのは風間隊の隊室。無言のまま中に入れられる。私達の他には誰もいない。私は掴んだ手を離されソファーに座らされ、士郎は向かい側に座る。




「なに…?」


「……来るの遅いんですよ。早く下さい」


「…何を?」




手を私の方に向けて物をねだる素振りをみせるが私にはなにを欲しいのか全く分からなくて首を傾げて問いかけると長いため息を吐かれた。




「なにをって今日何しにきたんですか」


「え、チョコ渡しに……って士郎チョコが欲しかったの?」


「さっきから言ってるでしょ」




ほら、早くと手を上下に振り急かされて私は紙袋から士郎のチョコを取り出して手の上に置くと満足そうに(感じただけで本当はどうかは分からなかった)手を降ろした。




「去年はそんなに欲しそうじゃなかったのに今年はどうしたの?」


「別に……義理でも欲しかったんですよ」


「何で?」




士郎は黙り続ける。私は喋ってくれることを期待して士郎をじっとみつめる。士郎はすごく居心地が悪そうな表情をして、やっと口を開いた。



「それは」


「真李愛先輩?」


「なんだ来ていたのか」




士郎が口を開いた瞬間、隊室の扉が開き風間さんと遼が入ってきた。士郎が小さく舌打ちをしたのが聞こえた。




「士郎に連れられてきちゃいました……士郎続きは?」


「…なんでもないです」




話す気はもうないようなので私も追求するのは諦める。風間さんと遼は疑問に思っている様子だけど士郎が言う気はないので気にしないことにしたよう。2人が隊室の中へ入り遼が士郎の隣に風間さんが私の隣に座った。




「風間さん、遼!はいどーぞ」


「そうか。今日はバレンタインだったな」


「毎年先輩凄いですよね。ありがたく頂きます」




2人とも喜んでくれたよう(風間さんは分かりにくいけど)なので良かった。あとは歌歩ちゃんに渡せれば完璧なんだけど。




「三上ならじきに来る」


「なんで考えてること分かったんですか!?」


「なんとなくだ」




私が求めていた答えを私が口に出さずに分かって答えてくれるなんて風間さんエスパー。いや、もはや私の風間さんへの愛が伝わってきたと捉えてもいいんじゃない?




「こんにちは……あれ?真李愛先輩」


「歌歩ちゃん!お邪魔してまーす。チョコ渡しに来たよ」


「ありがとうございます!」




私からもどーぞと歌歩ちゃんがチョコを出して渡してくれた。うわーい女の子からチョコいっぱい!行きは渡すチョコいっぱいでちょっと大変だったけど帰りはウキウキかな?




「嬉しそうですね」


「そりゃあねー可愛い後輩から貰ったら嬉しいよ。あと、喜んだ顔を見るのもね」


「だから毎年そんなにテンション高いのか」


「そうです!若干2名膨れっ面でよく分からないのもいますが」




誰だろうと士郎がわざとらしくとぼけるとお前だよと士郎だよと私と遼の突っ込みがハモった。遼とはよく気が合う。もう1人は言わずもがな秀次です。




「さて、歌歩ちゃんにも渡せたので私はそろそろ退散します」


「また来いよ」


「はーい」




風間隊の隊室を出る。あと残るは冬島隊と太刀川隊だけかー太刀川隊は慶いるし時間かかるから先に冬島隊に行こーっと。いるかな?




「お邪魔しまーす」


「真李愛じゃねーか」


「あれ?冬島さんだけ?」


「おー」




ああ、勇はどうせそこら辺をブラブラしてるんだろうなー。冬島さんは冬島さんでコーヒーのんで寛いでるし自由だな冬島隊。




「コーヒーのお供にチョコどうぞ」


「お、悪いな毎年。ありがとな」




優しく冬島さんが頭を撫でてくれた。冬島さんに撫でられるのは嫌いじゃない。むしろ気持ちがいい。お兄ちゃん的存在だからかな。




「お返しは100倍で」


「ははっそりゃ無理だな」


「えー冬島さん大人だし遠征部隊に入れるくらいの精鋭なんだから頑張れるでしょー?」


「そりゃお前だってそうだろ?断ってるだけで」




まあ確かに一応城戸さんから部隊に入らずに個人でもいいから遠征部隊に入ってくれなんていわれてはいるけどもずっと断ってる。理由なんてないんだけどね。




「100倍とまではいかないが楽しみにしてろよ」


「やった!」




また冬島さんに頭を撫でられる。冬島さんは歳がみんなより上で離れているせいか子供扱いをよくされる。嫌だけどたまにそれが心地よく感じる矛盾。




「真李愛まだ来て……うお!?いた!?」


「勇。うるさい」


「悪い悪い。チョコ渡しに来てくれたんだろ?くれ」




偉そうに上から、というか私座って勇立ってるから物理的にも。手を差し出してくるのでムッとしながらもチョコを渡す。




「俺のが本命だろ?」


「勇に本命あげるとかないわー」


「ひでえ言いようだな」




傷ついたわとわざとらしく悲しむ勇。あまりにもわざとらしいのではいはいと受け流す。




「勇にあげるくらいなら風間さんに渡すよ」


「は?風間さん本命じゃないのかよ」


「風間さんは好きだけど、そういう意味じゃないから」




意外そうにへーっと声を漏らす勇に確かにそう勘違いするくらいのアタックしてるよな真李愛はと冬島さんが言った。




「なに?他にいんの?」


「なんでそれをアンタに言わなきゃいけないわけ?」


「居るってことか。だれだれ?」




ずいずい来る勇の顔を手で思い切り押し返す。思い切りやりすぎて勇が変な声を出して倒れた。




「あ、ごめん。でも、絶対教えたくない!冬島さんお邪魔しました!」


「おー」




急ぎ足で隊室を出る。はー危なかった…加古さん時と同じくらい危険を感じた。勇に教えると絶対にろくなことはないから教えたくない。誰にも教える気はないんだけど。さて、次は最後の太刀川隊か…あの後だから嫌だけどしょうがない渡さなきゃ。




「誰かいるー?」


「真李愛!」


「あ、みんないるね」


「俺無視か!」




横でわちゃわちゃうるさい慶を無視する。唯我はいない。ついでに最近太刀川隊に出入りしている修も。まだ来てないだけかな?唯我はいなくて良かった。あいつのチョコないし。袋からもう残り少ないチョコを取り出して渡す。




「ありがとーさて、邪魔ものは退散しようか出水くん」


「そうっすね」


「え?なんで?」




私の疑問虚しく柚宇ちゃんと公平はそそくさと隊室から出ていく。どうやら慶も何事か分かっていないらしくしばらく残された私達は無言だったけど、慶が口を開いた。




「チョコありがとうな」


「ん。どーいたしまして」


「なんか不機嫌じゃねえか?」


「別に」




視界の端に紙袋いっぱいに入ったチョコを発見した。その紙袋は私が持ってきた紙袋じゃない。つまり誰かがもらってきたのは明白で公平は義理以外は貰わない主義だからあんな大量に貰うのは慶ぐらいで見ていてモヤッとしていたのは確かだけど言いたくなかった。




「言いたくないならいい。そうだ真李愛今度飯行くか」


「…慶のおごり?」


「チョコのお返しだからな。行くだろ?」




行きたい。けど、視界にずっとあるチョコの存在が気になってしょうがなかった。このチョコをあげた子にもするのかな。するよね。




「他の子にもそういう事するんでしょ」


「……珍しいこと言うな。真李愛しかしない」


「したらポイント全部奪うから」


「こわっ!まあ、分かった」




じゃあ私は帰ると言って隊室を出る。外には公平と柚宇ちゃんがいて私も渡すの忘れてたーと柚宇ちゃんからチョコを貰った。チョコを貰うと私はすぐに太刀川隊の隊室から離れる。一方、私が帰った後の太刀川隊は。




「太刀川さん嬉しそうだね」


「真李愛先輩と何かあったんですか?」


「いや、結構俺脈あるかもしれないなんて」


「「ないない」」




という会話が繰り広げられているとかいないとか。太刀川隊を出た私はその後城戸司令を初めとした重役さんたちにもチョコを渡して玉狛へと帰った。



思いを込めて 2




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