「今日はー誰としよっかなー」




今日は(というかここ最近そうなんだけど)模擬戦をしようかと本部へ来ていた。辺りを見回すけど、知り合いが見当たらない。もうちょっと奥に行ってみようかなー。




「あ、あのもじゃもじゃ頭は…!」


「あ?……げ」


「雅人っ!」




すごーく嫌そうな顔をしてこっちを見ている雅人を発見したので、雅人が座っているソファーの隣へと腰掛けた。




「なんで来んだよ…!」


「そこに雅人がいたから?待ち合わせ?」


「勝手にみんな」




雅人が見ている携帯の画面を覗く。メールのようで相手は鋼のようだ。思った通り鋼と待ち合わせをしているみたい。




「珍しいと思ったんだよね。本部にいるなんて……鋼との用事終わったらランク戦しよ?」


「あ?面倒くせぇ」


「言うと思った」




どーしよっかな。せっかくランク戦をしようと思って本部まで来たんだからしたいんだけど……しばらく待ったら誰か来るかな。




「……いつまでいる気だよ」


「だって暇だから」


「お前の暇つぶしに付き合えってことかよ」




うん、と頷けばはあーと長いため息を吐きながら頭をボリボリとかく。追い出されないので拒否はされていないと判断して居座り続ける。




「そんなに変な感じするの?」


「今は別に……」


「なら、いいよね」




何も言わない。つまり、いいよってことでいいよね。というわけで居座ることにした。雅人ということで周りに寄ってくる人はいないので静かに過ごせるしね。




「鋼いつくるの?」


「まだじゃねえか?」


「そっかー」




……それにしても、さっきから背後に視線を感じる。私ではない、雅人に向けた視線。チラッ分かりにくい程度に振り返るとニヤニヤと嫌な笑いで雅人についてだろうヒソヒソ話しているのが見えた。雅人も絶対に気づいているだろう。




「オイそこの二人。俺になんか用か?」


「雅人」


「うるせえ」




短気な雅人はすぐ気づいてヒソヒソ話をしていた子を呼び出す。雅人はなにをするか分かったもんじゃないから名前を呼ぶけど止まってはくれなかった。分かっていたけど。




「いやオレら別にただ雑談してただけだよな?」


「そうっす!むしろオレら影浦さんのファンっていうか……」




明らかに嘘を言っているのは雅人じゃなくても分かる。雅人にそれは通用しないんだけど、彼らはきっと知らないんだろう。




「…………ふ〜〜〜……ま……いいや面倒くせぇ解散」


「ハ、ハイ!!」




逃げていく2人だが、逃げていく間こちらを首だけ振り返り見ているのが見えた。隣の雅人が眉間にシワを寄せた。あ、やばい。




「……おいオメーらやっぱ待て」


「はい?」


「っ!」




立ち上がった雅人は2人の首をスコーピオンで跳ねた。だけど、雅人は上手くスコーピオンの発動を隠している。証拠隠滅……ずる賢いんだから。2人は尻餅をついて怯えた様子。




「も、も、も、模擬戦以外の戦闘は隊務規定違反……」


「あ?戦闘?知らねーよ。オメーらが勝手に転んだんだろ。それとも俺が何かしたのが見えたのか?言ってみろよ俺が何したってんだ?オイ」




そーですね。私だったら分かるけどもC級の子にはそんなことは分からない。ま、やり方はよくないけど雅人への悪口は私も気分は良くないから、雅人はなだめるけどあの子達を守ることもしたくない。




「悪い待たせたなカゲ」


「……鋼」


「あれ、遊真」




鋼だけが来るかと思ったら遊真までいる事に驚いた。次の対戦相手だから研究しに来たのかな。んま、あれでもA級上位だし次の相手だから研究しとかないとね。ここからきつい戦いになるし。




「おめー遅せーんだよ!目立っちまったじゃねーか!」


「そりゃオレのせいじゃない」




鋼の言うとおり。雅人が短気なのが悪い。確かに悪口を言われて腹が立つのも分かる。というか私も腹立ったけど……やりすぎだ。これ以上ポイント減らして舐められのも友達としていやだし。




「落ち着けよさすがに生身には攻撃して来ないから」


「いやいやあの人ヤバイっすよ!!オレらなんにもしてないのに絡まれて……」




なんだ。まだいたのか……それにしても私ってあんまり知られてない?さっきからずーっといるのに何も言われない。古株しか知られてないのかーちょっとショックだったり。




「なんにもしてないわけないでしょ?雅人はね、人のこころを読むんだよ。そういうサイドエフェクトを持ってるわけ……私も友達馬鹿にされて怒ってるしまた何かされたくなかったら早く行って」




ひぃぃぃと去っていく2人。心でべーっとしたら鋼にこつんと頭を軽く叩かれる……バレてました。なんで読めたの。雅人なの?怖い。




「……何派手なことやってんだ。また降格と減点くらうぞ。真李愛も止めてやれ」


「止めたもん」


「ケッんなもん痛くも痒くもねーよ!調子こいたカスにナメられるほうが100倍ムカつくぜ!言っとくが俺ぁ一回は我慢したかんな!一回見逃したのにあのボンクラどもが……」


「見てた見てたよ」




え、じゃあ私が頑張ってたのも見てたんかい。まだ足りなかったって事ですか……鋼厳しい。ま、雅人にあれだけじゃ足りないか反省反省。




「……ふむ?降格しても平気ってことはかげうら先輩はA級目指してないの?」


「…………あ?誰だこのチビは」


「うちの後輩だよ」




ぽんぽんっと遊真の頭を優しく撫でて雅人に紹介する。玉狛以外であんまり会わないからちょっと新鮮。あ、でも鋼と初めて会った時もあったな。そうでもなかった。




「空閑遊真です。はじめまして」


「今日はこいつに会わせたくてお前を呼んだんだ」




なるほどーあの時以来2人は結構仲良くなったんだね。2人ともいい刺激を与えられるからかなーいつの間にか遊真の交友関係が広がってく。




「玉狛の「クガ」ぁ!?鋼と荒船が負けたヤツか!?おめーらこんなチビにやられやがったのかよ!ぶはははおもしれー!帰ったら久々に記録見るわ!」


「見んなよ」


「玉狛って言やたしかウチの次の敵か。B級上がりたてでもう上位入りたあなかなか必死じゃねーか。さてはおめーら遠征狙ってるクチか?どした?好きな女子でもさらわれたか?」


「おいカゲ……」




相変わらず、雅人は煽るのが上手いんだから……嫌な意味で。それに乗るのは諏訪さんくらいだろうけどね。あ、慶も危ないか。




「知りたきゃ心を読んでみなよ。そういうサイドエフェクト持ってるんでしょ?」


「………ケッ俺のクソ能力はそんな便利なもんじゃねーよ。帰るわ」




雅人が腰を上げた時、私の端末が振動したので確認してみるとさっきチラッと名前が出た慶からだった。内容を見る限り来ないとうるさいので行くかー。




「おい来たばっかりだぞ」


「ここはギャラリーが多くてイライラすんだよ。俺と戦って情報集めしたかったんだろーが。バカ正直に手伝う義理はねぇ」




鋼が呼び出したからわざわざしょうがなく来たってことね、なんだかんだ優しい。ちゃんと来るまで待ってたし。




「俺らははっきり言って遠征なんざどうでもいい。が、俺らより弱えーやつらを上に行かせるつもりもねえ。Aに上がりたきゃ俺らに勝ってから行くんだなチビ」


「……私も呼び出しあったから行くね。遊真をよろしくねー鋼」


「分かってるよ」




2人に手を振って太刀川隊の隊室へ直行した。扉の前には唯我がいたけど別に話しかける用もないしめんどくさいので無視で。




「え!?ちょ!」


「けいー来たけどー」


「おー」


「やっほー真李愛ちゃん」




隊室に入るとみんなでゲームをしていた。唯我ハブってるし。笑った。ゲーム中に邪魔するわけにもいかないのでソファーに座っている柚宇ちゃんに後ろから抱きついて大人しくゲーム画面を見ることにした。




「そーいやこれから先輩とこのメガネくん来ますよ」


「修が?……公平に射手について聞くのかな」


「たぶん。てか先輩も今射手じゃないっすか」




ゲームしながら器用に喋るな……アクションでしょ?私無言じゃないとやりにくい。みんな器用だなーさすがゲーマーの柚宇ちゃんがいる部隊なだけある。




「いやいやいや。本職じゃないし。本職の方が圧倒的に経験あるし知識あるから」


「そうかなあ?真李愛ちゃんも結構すごいと思うよー」


「射手トリガーで俺といい勝負だったからな」




そんな事もあったな。でも、やっぱりそれでも私は実力が、うんぬんとかじゃなくて知識や経験が一番だと思う。




「まーでも修も色んな人にあって刺激を受けれるから公平に教えてもらえた方がいいと思うけど」


「へーちゃんと先輩してるな」


「……慶に言われたくない」


「「確かに」」




2人も同じ事を思ってくれたようではもって言ってくれた。やっぱり2人も慶にそんなこと言われたくないよねー仲間がいてよかった。




「おいおい酷いな」


「酷くないからーで?なんで私呼んだの」


「んー?」




ゲームがちょうど終わったようでゲーム機を離して立ち上がるとこっちに来たので不思議に思い柚宇ちゃんから離れて慶を見る。




「真李愛に会いたかったから、だな」


「ちょっ…!」




ぎゅっと優しく抱きしめられる。いつも抱きつくことはあるものの優しく抱きしめられる事は初めてに等しいくらい。




「ここでいちゃつくのやめてくれますか」


「そーだよ」


「ここの隊長は俺だ。隊室で何しようが自由だろ?」




3人が会話してるけど、それが耳に入らないくらいドキドキしていた。なんで急に抱き締めるの、反則だから。鼻いっぱいに慶の香りが広がってさらに心臓の鼓動を速めた。




「真李愛?」


「……なんでもない」


「お?照れてるのか?」




ニヤニヤと私の身体を離して私の顔を覗き込む。それにより顔の熱が一気に冷めちょっと腹が立ったので鳩尾に1発かましておく。




「ぐえっ」


「強烈な一撃……あ、出水くんじかーん」


「あ、やべ!」




気持ちを切り替え慶を放置して公平と一緒に隊室から出ると、唯我にうざいほどに絡まれてる修の姿があった。うわ、可哀想……公平もそう思ったのか、ダッシュした。




「おれの客に何やってんだこのやろう」


「おーとんだーとんだー」




ダッシュからの飛び蹴り!なかなか強烈な一撃。でも相手が唯我だから同情はしない。だって唯我だから。




「い、出水先輩!いきなり飛び蹴りなんて非道い!」


「痛いフリすんなトリオン体だろーが」


「心が痛むんですよ!」




唯我を無視して修に向き直る。修は初めて見る光景にちょっとびっくりしているようだ。




「わりーなメガネくん遅くなった」


「ごめんねー」


「真李愛先輩?あ、いえあの……この人は……?」


「ウチのお荷物くんだよ」




それでも修はまだ疑問が残るようで納得したような顔をしていない。そのうち分かることだから特に口出しはしない。




「あんまりです出水先輩!ボクは純粋な使命感から不審者を排除しようと……」


「やかましい」


「はあ…これが迷惑かけたら言ってよ?公平に言って責任持ってケリを入れさせる」


「はいよー」




親指を唯我に向けて修に話す。修は、は、はぁ…とやっぱりついていけてない様子。まだこの部隊には慣れてないよう。




「暴力支配だ!弁護士を呼んでくれ!」


「どしたどした〜〜?なにを揉めとるのかね〜〜?」




隊室からひょっこりと姿をみせた柚宇ちゃん。公平が柚宇ちゃんに寄る。




「柚宇さんあのねこのバカが……」


「国近先輩!ボクは」


「唯我うるさい」


「辛抱!」




滝のように涙を流しているがやっぱり無視で。唯我の扱いは安定。あ、いつの間にか慶が復活してるし修が持ってきたお菓子を勝手に食べ始めてるし。自由人だなー。




「太刀川さんなんか隊長っぽいこと言って」


「よーしおまえらケンカすんな。唯我おまえ落ち着きがなさすぎもうちょっと自覚を持って行動しろ」


「自覚……?」




あ、珍しく慶が隊長っぽい。ただ、お菓子食べながらって言うのが残念だけど。




「いいからよく聞け今からちょっといいこと言うぞ。うちの隊章を見ろ刀が3本あるな?これは一本目が俺。次の一本が出水を表してる。そんでこの最後の一本が……俺の二本目の刀だ」




は?そこ流れ的には唯我じゃない?さすがの私もそこにはびっくり。




「つまりおまえはまだ半人前だからでかい顔しちゃダメってことだな」


「残酷すぎるフェイント!!」


「真李愛が入ってくれるなら真李愛にこの刀を一本やるぞ」


「いや、入らないしいらない」




玉狛抜けたいなんて思ったことないし。太刀川隊は面白いけど、玉狛が一番。




「太刀川さんわたしは〜?」


「国近はこれバックの三日月」


「おっいいポジション」




うん。かっこいいかっこいい。後ろから支えてる感じが柚宇ちゃんっぽいし。立ち話もなんだし隊室に戻ろうということになったので隊室に戻る。




「とりあえずこいつに1対1で100勝。それができたら合成弾を教えてやる」




柚宇ちゃんと慶とゲームをしながら盗み聞きする。唯我相手に100勝か……なるほどね。公平がどう考えているのか分かった。




「断固!!断固お断りする!!個人戦はボクの得意分野ではない!部隊戦でフェアな戦いを所望する!」


「うるせー唯我。さっさとスタンバイしろ」


「彼がボクに100勝する!?論理的に考えてそれはボクが100敗するのでは!?」


「唯我うるさい…ゲームに集中できない!」




ゲームは好きだけど得意かと言われればそうでもないからうるさく騒がれると集中できない。あ、ミスった。




「わかってる!わかってますよ出水先輩のやり口は!B級にボクを叩かせて誇りをへし折るつもりでしょう!?」


「それがプライドある人間の動きか」


「前途ある若者の心が今!蹂躙されようとしている!人権団体を呼んでくれ!」




喚く唯我を無理矢理公平が仮想スペースに連れて行ってくれたので集中してゲームができる。




「真李愛ー次のラウンド俺が勝ったら今日お前家に泊まりな」


「は?」




さらっと言ったので聞き逃しそうになった。聞き逃したらいけないやつを聞き逃しそうになった。なんで、突然?




「えーいいなー!じゃあ私が勝ったら今度泊まりに来て!」


「柚宇ちゃんはいいけど…なんで慶今日?」


「なんとなく。だが、国近が参戦するとなると負け確定だな」




苦笑いをする慶。それにちょっとだけ胸が締め付けられる感覚。




「……じゃ、勝ち負けいいから玉狛まで送って」


「……おう」


「ちょっとイチャつかないでよー!やるよー」




修と唯我と公平が訓練室で戦っている間、勝敗を決めたゲームを始める。結果は、予想通りの柚宇ちゃんが勝ち。なので今度柚宇ちゃんの家に泊まりにいく事になった。まだ訓練室に篭っている3人に声をかけて私と慶と途中まで柚宇ちゃんで帰宅した。久しぶりの慶と2人きりはちょっと緊張したけど楽しく帰ることができた。



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