「本部に到着したけど……ランク戦は終わったみたいだねー残念」




ランク戦が観戦できる場所に行ってみたけどちょうど終わったみたいで帰る人でいっぱいだったので迂回して誰かいるかなーと期待して休憩スペースに行ってみる。




「お、こっちに来たのか」


「真李愛ーっ!」




悠一に声をかけられそれに反応した慶が突進してきてぎゅーと抱きつかれる。身長差で私の体がすっぽりはまっていて空気の逃げ道がなくて苦しい。かうじてすこし呼吸できるし喋れそうだけど空気欲しい。




「あー真李愛の匂い」


「ちょっと悠一この変態仲間どうにかして」


「俺仲間なの?」




いやだわーとか嫌そうに言うけどいっこうに動く気配がない悠一にため息をつきそうになりながら、こっちもいっこうに動こうとしない慶に蹴りをいれる。




「いでっ!」


「いつまでやってるの」


「いいだろー」




よくないわ。と心の中で突っ込む。周りを見て周りを…ものすごい視線を感じるんだよ。好奇なものを見る視線がね?あんまりいい気はしない。




「まあまあ、太刀川さん場所をわきまえようよ」


「それ、あんたがいうの?」


「確かに」




悠一の顔から笑顔が消えた。図星を言われたからだろうねー珍しく慶と意見が一致した。あんたもだけどね。




「で、真李愛今日は玉狛で観戦じゃなかったか?」


「そだよ。でも、実況あんたちって聞いたからこっちにきたんだけど……終わってた」


「俺を見に……!」




期待するような眼差しを向けてくる。まあ、そうなんだけど…言ったら言ったらでさらに悪化しそうなんでやめとこう。期待だけさせとく。




「はいはい……どうだった?」


「玉狛第二の勝ち。次は四宮隊と影浦隊と東隊」




あの中に放り出されるのかー玉狛第二も厄介な部隊に位置づけされているだろうけど、それ以上に厄介なのがこの3チーム。私の顔が思わず強ばる。




「うげ。四つ巴に厄介なのしかいない。上位だからしょうがないんだけどさ……」


「特に影浦と仲良かったよな真李愛」


「ま、同い年だし。可愛いし?」




たまに学校や本部で会った時に必ずちょっかいを出す。反応が可愛くてついついくせになる。学校のクラスが同じだったら楽しかったんだけど、微妙に離れてるから行くのめんどくさいんだよねー。




「「可愛い…?」」


「可愛いか?」


「雅人のサイドエフェクトがあんなんじゃん?良い感情の時、なんかよく分からない顔しててその顔が可愛い」




その姿を思い出してつい笑みがこぼれる。ふふ、なんか会いたくなってきた。




「以外なところから強敵だねー太刀川さん?」


「ああ、そうだな」


「ん?なに?」


「なんでもねえよ」




慶にぐしゃっと頭を撫でられ話を逸らされる。やけに真剣な顔をしてたから気になるけど本人が聞いて欲しくないならいいや。




「ずっと思ってたが」


「ん?」


「撫でられるのは嫌がらないよな」


「慶に撫でられるのは嫌いじゃない。抱きつかれるのは苦しいからいや」




思ったことを素直に口にした。よく考えていなかったけど言ってから考えるとこれ結構アウトじゃない…?慶のキラキラした視線が痛い。




「や、やっぱり今の発言なしで!」


「できないだろ!真李愛の貴重なデレを…!」


「デレてなぃいい」


「顔赤いぞ」




ハッとして顔を隠す。自分の手のひらから顔の熱が伝わって余計はずかしくなる。今日の私はなんかおかしい。いつもなら隠せることが隠しきれてない。なんで?




「今日の真李愛すっごい可愛いんだが。持ち帰りたい」


「「それはアウト」」


「でも、珍しいな真李愛がそんなに太刀川さんの前でそんな顔するなんて」




やっと冷えてきた顔から手を離して今度は顎に手を当てて考えるけど、全く分からない。強いて言うなら最近、慶に関してやっと見直したというかなんというか、よくわからないど、だからかな?




「んー分からない!」


「俺としてはそれが続いてくれれば嬉しいけどな。素直な真李愛も可愛い」


「……あっそ」




慶の言葉にいちいち反応していたらキリがない。可愛いといわれても日常茶飯事で、どの女の子にも言っていることなので他意はないから、ただの挨拶だから。




「で、慶におねがい」


「なんだ?」


「ランク戦しよ?」




お願いと言っても慶にとっては全然軽いものだから二つ返事でオッケーをもらって2人で向かう。ちなみに悠一もさそったけど断られた。去り際の悠一のニヤニヤした顔を見る限り何か見たな。私関係なのかなーいやだな。




「どうした?いやそうな顔して」


「うん、別れた時の悠一の顔を見て嫌な予感がしてねー」


「あーたしかにな。でも大丈夫だろ」




慶の言葉にまだ不安は残しつつも、どうせニヤニヤ程度なので特には影響はないだろうと気分を切り替える。そして、すぐに広場へと到着した。




「で、10本でいいか?」


「いいよー慶とやるの久しぶりだよね」


「そうだな……遠征前ぶりか?」


「だね、15勝17敗。今日かって近づくから」




びしっと慶の顔近くに指をさす。それに、負けないぞと言って頭をぽんっとするとブースに入っていったので私もそれを追ってブースに入ってトリガーを起動し戦闘準備をしていたらすぐに、移動された。慶はすぐ近くに転送されたようで場所が丸わかり。




「ん?変えたのか」


「そ。慶と同じ弧月二刀流」


「サイドエフェクトのおかげで関係ないってか」




私のサイドエフェクトの身体強化は力の方も適用されて火事場の馬鹿力とまではいかないけど、男の人より力持ちだったりする。だから日常生活の気の使い方が大変だったりするけど。




「いくら、あんたの得意分野だとしても……油断してると負けるよ?」


「っ!」




グラスホッパーを使って一気に距離を詰めると弧月二刀を振りかざした。私の斬撃で慶の顔が歪んだのを見てさらに身体を使って重みを増せる。




「っ、さすがに重いな」


「乙女にそれはどうよ?」


「褒めてるんだよ!」




慶の弧月によって弾き飛ばされるけど、あまり強くもなかったので空中で回転して大勢を整えて着地する。そして、地面を蹴ってまた慶に刀を振るう。だけど、さっきとは違い刀を休ませることなく慶へと振るい、慶に攻撃する暇を与えさせない。そして、隙をつき身体にダメージを与えた。じきに緊急脱出するだろう。




「今日はずいぶん攻撃的だな」


「まけたくないからねー」




慶は緊急脱出した。数秒後にまた慶は戻ってきたみたいで慶の姿を探していると後ろから気配を感じて弧月を軽く振ると慶が姿を表した。




「なんでバレた?」


「気配」


「相変わらず勘がいい」




今度は慶から仕掛けてくる。慶の斬撃を交わしながら隙を探すけどなかなか見つからずにしばらく受けていた。




「どうしたどうした?」


「うっさい!変態!」




ニヤニヤしてくる慶に腹が立って思いっきり力をこめて弧月を薙ぎ払う。慶はすこし距離を置いた。




「そのニヤニヤした顔を焦りに変えてあげる」




グラスホッパーを使って慶の周りを目で追わせないように高速移動して、できたがら空きの背中めがけてバイパーを放って緊急脱出させた。よし、2本目。




「安心するのは早いぞ?」


「っ!」




さっき緊急脱出したはずの慶が背後にいて耳元で低い声が響くとすぐに弧月が私の身体を貫いた。不意打ちの声に若干ドキッとしながら緊急脱出した。




「お、きたきた」


「……慶のくせに不意打ちしやがって」


「ひどくね?」


「もう騙されませーん」




アステロイドを慶に向かって一気に大量に放つ。慶は避けたり刀で防いだりするが千佳をのぞいた隊員の中で私よりトリオンが多い人はいない。そんな私のトリオンを無視したアステロイドは確実に徐々ではあるけどダメージを与えていた。




「とんでもねーな」


「ふふ、二宮さんにも公平にも勝ってるからね」


「自称だろ?」


「う……ま、まあ…でも負けてるつもりないもん!てか、そんな余裕あるんだ?ならもっと足しても大丈夫だね?」




さっきよりも生産する量を増やすと慶の顔がますます歪んでいるのをみて楽しくなってきた。あれ?私こんなSだったっけ?さっき、深くにもドキドキしてしまった仕返しということにしとこう。




「ドSだな」


「えへへ。バイバーイ」




慶は緊急脱出した。うん、私にしてはえげつないのやってしまったなと若干は後悔しつつ、奇襲をかけるために建物の影へと隠れる。




「ん?いないな…どこいった」




近くで慶の声が聞こえた。顔は出さずに足音を頼りに建物を使って尾行する。もちろん、距離はあまり詰めない。タイミングを測るために顔を少し出して観察し、いけそうだと判断したのでグラスホッパーで一気に距離をつめて音を立てずに弧月を振るうが、




「やっぱりそう来たな」


「……バレバレか」


「何年付き合ってると思ってる」




いとも簡単に弧月で阻止されて、軽く舌打ちしながら距離をとる。




「私は全く慶の考えてること分からない時があるけど」


「それは俺もだ。たまに、全く分からん」


「そう?慶の方が分からないと思うけど」




特に、恋愛に関しては…ね。私は地面を蹴って慶に向かっていき交互に斬撃を繰り返す。




「今日こそは、絶対勝つ!」


「負けてやるつもりはない」




お互いの斬撃がぶつかり合うこの光景はしばらく続いた。そして、慶VS私の戦いは終わって勝者はと言うと……。




「勝ったー!」


「負けたな」




ぎりぎり6対5で勝つことができた。最初は良かったんだけどだんだん慶が追い上げてきて…危なかった!




「これで追いついたね!」


「そうだな」


「負けたのに余裕そうなのが腹立つ……」


「余裕じゃない。ただ、勝った時の嬉しそうな真李愛が好きだからそう見えるだけだ」




ぽんっと慶の手が乗ったかと思うと私の頭を優しく撫でる。ちらっと慶を見るとすごく優しそうな顔をしてこちらを見てくる。




「っ……」


「お?」




慶の手をパシッと叩いて払うと慶の顔を一切見ずに歩き出す。やっぱり……今日の私は変だ。顔が赤い。今まで隠していた慶の気持ちが溢れ出てきている。




「真李愛?どうした?」


「なんでもないっ!帰る」


「あ!おい!」




慶にはこの顔を絶対に見せたくないので本部を後にする。悠一がニヤニヤしていたのはこのせいなのか、急に悠一に腹が立ってきた。





「期待して、いいってことか…」




取り残された慶がそう呟くもとっくに慶から離れていた私の耳に入るはずもなかった。そして私は玉狛に到着して悠一を探すとすぐに見つかった。




「悠一!」


「それよりも、安静にしといた方がいいぞ?熱がある」


「え?だるさなんて感じてない…」


「熱を計れば分かるよ。真李愛が素直だったのはそのせいだ」




悠一に強制的に自室に入らされてしぶしぶ熱を計ってみたら微熱ではあったけど、確かに熱はあった。微熱だからだるさを感じなかったのか……それよりも悠一は知っていたのに帰そうとせずに慶と接触させてなにをしたかったのか。私の慶への気持ちは絶対に伝えられないというのに……。今まで蓋をしていたのを引き出されたせいで疲れたのでとりあえず、それは後にして私は眠りにつくことにした。



自分のこと




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