「遊真、鋼おつかれさま」


「おつかれさま」


「鋼、次私と!見てたら久々に鋼とやりたくなった」


「いいよ」


「遊真、修。一応見といてね?」


「分かりました」


「うむ」


「条件一緒でいい?」


「ああ」




たしか、前に戦った時は一応は勝ったんだっけ?負けたっけ?………前過ぎて記憶が曖昧。最近濃いことばっかり起きてたから。




「鋼と戦うのは何ヶ月ぶり?」


「半年くらいだと思う」


「そんなに?あれ、私なに使ってたっけ」


「たしか……スコーピオン」


「そっか。でも今中距離…射手だから」


「分かってる」




お互いにトリガーを構える。先に動いたのは鋼。まっすぐにこちらにきたけど、グラスホッパーで鋼の背後にまわり、攻撃を放つ。当たったけども急所は外れた。いや、外された。




「やっかいだな、相変わらず」


「それ、お互いさまね」




攻防は続いたけど、前半の5本は全部私が取ることはできた。つまり、残り全部取られても引き分けになって負けることは無い。後輩の前だからいいところ見せたかったからほっとするけど、問題はここからだ。




「鋼。15分経ったよ」


「……ん、再開するか」


「鋼が負けるか引き分けるかだね」


「真李愛はやりにくいな」


「私は鋼と戦うの楽しいよ」


「それは同感だ」




結果は、最後ギリギリで私が取ることに成功したので私の勝ち。つまり、6ー4。さっきの遊真と逆!偶然。




「真李愛先輩強いね」


「まー元攻撃手ナンバー1ですから」


「え!?そうなんですか」


「昔ねー1年以上も」


「そうなのか?」


「鋼は入隊前だったから知らないよね」




攻撃手ナンバー1とった後あたりからなんだよね、私があっちこっちトリガー変えるようになったの。理由は特にないんだけど。そして、私達は鋼たちと別れて玉狛に帰宅した。




「遊真が負けた!?誰に!?風間さん!?太刀川!?」


「むらかみ先輩って人」


「村上……鋼さん!?」


「ありゃ〜先に戦っちゃったか〜帰ったら話そうと思ったんだけど……」


「ごめんなさい」


「真李愛のせいじゃないよ」



バレたのが栞でよかった……レイジさんだったらげんこつはくらってた。桐絵はお前かって目で見てきてるけど栞の優しさに感動してる今はどうでもいい。




「むらかみ先輩のサイドエフェクトのこと?」


「うんそう。攻撃手界隈では知れ渡ってるからね鋼さんの「強化睡眠記憶」は」


「強化……睡眠記憶……それってつまりどういう……?」


「あーおおまかにいうと学習能力がものすごいってこと。普通の人は勉強したり訓練したりして毎日ちょっとずついろいろ覚えていくでしょ?」


「鋼さんはそれを一眠りするだけで学んだことをほぼ100%自分の経験に反映できるんだって」


「なるほど。だから休憩はさんだのか。前半で俺の動きを覚えて後半それに対応したんだな」


「宇佐美先輩と八城先輩くわしいですね」


「鈴鳴支部はけっこう近いし合同で防衛任務もやってるからね」


「私はクラス違うけど学校一緒だからそれなりに仲いいんだよ。オペレーターの子とはクラス一緒だしね」




鋼と同じクラスには面白いやつがいるからねーもしかしたらこのまま修たちが勝ち進めばいつか当たるかもしれない厄介な相手が。




「……で?結局何対何で負けたの?」


「6対4。後半で5本取られた。あれ以上続けたらたぶんもっと差がついたな」


「まったく……相手に情報を与えるようなマネを……」


「面目ない……」


「好奇心には勝てなかったぜ。だから真李愛先輩のせいじゃない……でもおれは先に戦っといてよかったと思うよ。情報がないと対策できないからな。さ〜てどうするかな……ごちそうさま〜」




遊真が席を離れて残った栞と修で次の試合をどうするかを考えているのを黙って聞いている。確かに鋼は強敵だけど、さらに強敵なのが上位に控えている。というか強敵しかいない。ここを突破できないと上位すらも倒せずにA級も夢のまた夢になってしまう。




「……そういえば古寺先輩が「荒船さんが攻撃手やめたのは村上先輩が理由」……って言ってましたよね……」


「あー言ったね」


「狙撃手界隈に流れてるウワサだね。荒船さんと鋼さんは同い年ででもボーダーに入ったのは荒船さんがけっこう先なのね。それで最初は荒船さんが鋼さんに剣を教えてたんだけど……」


「鋼さんにはサイドエフェクトがあったから半年ちょっとで荒船さんを追い抜いちゃったってわけ」


「やっぱりそれが理由なのかな?」


「そりゃそうでしょ。やめた時期とも一致してるし」




あーその話ね、まあまあそれなりに負けず嫌いな哲治だからそれはないんだけど。まあ、いろいろあったねーあれは。言ってしまうか。




「残念ながら違うよ」


「え?そうなの?」


「てかアンタ知ってたの?」


「私と同い年の哲治と鋼にさんづけなのが解せない。でもまあ、そうだよ?時期はかぶるけどあの負けず嫌いが鋼に追い越されて攻撃手やめるわけないじゃん。深くは言わないけど」


「き、気になる」


「本人に聞いたらー?私からは言わないーじゃ」




言ってもいいのか分からないし。いや、言ってもいいのかもしれないけど一応念のために。これ以上あの場にいたら言っちゃいそうなので私も席を離れて自室に戻って寝た。










―――土曜日。那須隊、鈴鳴第一とのランク戦の日になった。今日は本部じゃなくて玉狛で観戦。まあ後で本部には向かうつもり。慶が実況らしいし気になる。




「河川敷だけかと思ったら暴風雨までつけてきたかー本気だねなっちゃんたち」


「それだけこの戦い取りたいんでしょうね」


「だよねー」




珍しい。いや、いつも本気で戦っているんだけど、なんていうか……いつもと気合の入れ方が違うっていうのかな?まあ、いつもと違う感じがした。




「転送位置を見る限り西岸は那須隊で東岸は玉狛が有利だね」


「あくまで位置だけよ」


「修と千佳は合流……橋を渡って合流すると思いますか?」


「合流するのも手だとは思うけど、私なら他の隊員にも来て欲しくないから壊すかなー千佳の大砲で」


「その手もあるわね」




そう、話し合ってすぐに千佳の大砲が橋を攻撃して、橋が崩落した。西岸は遊真に任せる。いや、信じてるって感じかな?鋼もくまちゃんもいるから西岸の戦いは楽しみかも。




「あ!さっそく鋼とクマちゃんの戦い」


「あんたはどっちが勝つと思う?」


「やっぱり鋼かな……1体1ならまず鋼。でも、茜ちゃんが確かいたよね。それ次第でもあるよね」


「遊真が動きましたね」


「修もやっかいななっちゃんとの戦い」




なっちゃんは撃つ前に弾道を設定するから相手が視界から外れようとも場所がわかれば当てることができる。これができるのはなっちゃんと公平だけで私はそこまで達してない。いずれはいきたいけど。




「あーもうじりじりするわ……!これ橋壊したのまずかったんじゃないの……!?」


「どっちにしろ那須隊が壊してましたよ」


「そーそー玉狛第二か那須隊の違いだよ。那須隊の大幅有利がやや有利に抑えられた……悪くない判断だと思うけど?」


「遊真がいなきゃどっちにしろ勝てないじゃない」


「……お前はどう見る?ヒュース」


「……こんな原始的な戦いに何を言うことがある?弱いやつが負ける。それだけの話だ」


「なにかっこつけて当たり前のこと言ってんの?」


「ぐっ……」


「支部長が気ぃ遣って話振ってんだからもっと中身のあること言いなさいよ!!」


「別に気は遣ってないぞ」




さすが桐絵!ヒュースに変わらずに接している。うちのムードメーカーさすが。私はまだ若干様子見している。




「あんたもう少し自分の立場考えなさいよね。あんた達のせいで本部の隊員がさらわれてうちの修はしにかけたんだから!」


「……こなみ。おさむは生きてるもう……すぎたことだ」


「ふふ…そうだね」


「なに大物ぶってんの陽太郎」




私の膝にのっていた陽太郎が桐絵に頭をチョップされたことで私の体にも振動がやってきた。痛そうな気がしたので頭を撫でておいた。




「……オレをこの部屋にひっぱり出したのはお前たちだ。そっちこそ回りくどいやり口はやめろ。情報を聞き出したいのなら尋問でも拷問でもやってみるがいい」


「拷問なんてする気ないよ。ああいうのはされる方もする方もしんどいから」


「ヒュースはごうもんされたいのか?マゾか?」


「あはは、そうなのかなー」


「…………」




何も答えない。無視された……けどまあ、嫌な顔をしたから違うんだろうけど。




「……それに捕虜は丁寧に扱っといた方が攫われた隊員を取り戻す時に駆け引きがスムーズになるかもしれない……ということになってる」


「でもこいつ見捨てられて置いてかれたんでしょ?捕虜交換できるほどの価値あるの?」


「いや腕がよくて頭も切れるからたぶん向こうでも相当なエリートだろうって迅さんが言ってましたよ」


「迅がこいつを……?へえ…………ホントに?」


「まあ、ウソですけど。今、適当に想像してしゃべりました」


「「「……!?」」」




ヒュース、桐絵、そして私が京介の言葉で固まった。いや、ここでそんなウソつく!?心臓が止まるくらいびっくりした……。




「京介……なんで急にそんなウソつくの。なんかヒュースかわいそう」


「場を和ませようと思って。でもまあたぶん迅さんも似たようなこと思ってますよ。迅さんが連れて来たんだから。ごちゃごちゃ言うのは後にしてとりあえず今は試合見ましょうよ」


「そうだね」




画面に視線と意識を戻すとくまちゃんが苦戦してる姿がみえた。遊真たちも大事だけどくまちゃんたちも気にしてる子だからハラハラしているし複雑な心境。




「真李愛先輩ソワソワしてますね」


「すごくソワソワだ」


「ごめんね……陽太郎、京介。那須隊が気になって……」


「あんた那須隊と仲いいもんね」


「最近射手やってるからなっちゃんともよくランク戦やってるんだー打つ直前の弾道設定も教えて貰ってる」




習いたてだからまだぜんっぜんできないけど!まず狙撃手トリガーが苦手だし……細かい調整とか狙いを定めるのが得意じゃないからだいぶ苦戦してる。




「道のりは遠そうですね」


「……今回は期間長くなりそう」


「ランク戦上位目指せるんじゃない?」


「んーどうだろうね……ってもうこんな時間か。本部行ってくるね」


「じんによろしく」


「りょーかい」




陽太郎を膝からおろすと、頭を一撫でして玉狛からすぐに出た。間に合うかなっとちょっと焦りつつ歩を進めた。






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