「なんなのよ……この数!キリがない」


「新型いないんだからマシじゃない?」


「そうだね」




あの人型を渋々レイジさんたちに任せて私と桐絵はトリオン兵が走り去っていた方角に追いかけて殲滅していた。さっきから倒しているけど新型は出て来てないから楽っちゃ楽だ。




「あっちは……」


「あっちにいるのはレイジさんにとりまるよ?あんたが心配するまでもないわ。あんたは目の前に集中しなさい」


「桐絵……まさか桐絵に言われるなんてね」


「どういう意味よそれ!」


「あはは………ありがとう」


「……ふん」




素直にお礼を言われるのは桐絵は慣れていない。というか恥ずかしがりやだから顔真っ赤にして照れている。それを私にバレないようにトリオン兵に当たって見えないようにしてる。可愛いなあ。




「早くしないと私が全部倒すわよ!」


「本当に照れ屋さんなんだからー」


「うるさいわよ!」




こっちを見る桐絵の顔はさっきより赤みは消えたけど、まだ耳は赤い。それにバレないように笑いつつ私もトリオン兵に向かっていく。さっきまでの緊張感とはうって変わって和やかな雰囲気の中トリオン兵を殲滅していく。




「ふぅ……」


「もう限界なわけ?私の勝ちね」


「一息ついただけですぅー!てか、いつの間に勝負してたの!?」


「初めからよ」




いつの間にやっていたんだ……。桐絵の事だから本気だろうし遊びでも負けず嫌いなもんで負ける訳にはいかないというわけで乗りますか。




「桐絵こそあんだけ言っといて先に限界迎えないでよねー?」


「それはこっちのセリフ!」


「んじゃ、行くよ!」




お互いの背中をくっつけていた体勢からトリオン兵へと向かっていく。あと半分!お互い今のでやる気がぐんぐん上がったからすぐに片付くだろう。




「終わったー!」


「本当に多かったわね……」


「お疲れ様」


「真李愛もね」




高い位置でハイタッチ。そしてお互いの顔を見合って笑い合う。建物や人の被害も極力に抑えられたので大満足。




「これからどうするの?」


「んーちょっと悠一に頼まれた事があるからそれをやりに行く。桐絵はレイジさん達と合流して」


「なんで言う事聞かなきゃいけないわけ?」


「たまには歳上なんだから聞いてよ」


「一応、ね」


「一応って酷くない?私完全に舐められてるよね」




だってさ、思い出してみて?綱や哲治とかみんなさん付けなのに私だけタメ口だし呼び捨てなんですけど……まあ私も悠一にはタメ口なんだけど。それは聞かなかった事にして。




「舐めてるわけじゃないわよ。あれよ!親しみ込めてるのよ。同じ玉狛なんだしね」


「桐絵は元から態度よくないしね」


「ちょっとそれどういう意味よ!」


「そのまんまの意味。じゃあ、私は行くよー負けないでよ」


「あんたもね」




さっきから動きっぱなしだったのでまだ疲れているわけではないけども体力温存のためにグラスホッパーは使わないで歩こう。そんなに距離があるわけでも急いでるわけでもないし。




「さて、他の人型どうなったかな……連ちゃーん聞こえる?」


『真李愛?どうして……』




連ちゃんが驚くのは当然。本来ならば私は栞や玉狛第一の仲間。それに本部の司令部にしか通信出来ないはずなんだけどそれは玉狛の素晴らしい技術力を使って他の隊のオペレーターだけだけど会話や傍受できたりする。これが役に立つ時がやっと来てちょっとウキウキしてる。




「それはまあ、内緒。それよりそっちの人型の方大丈夫?」


『今、出水くんが人型を押さえて古寺くんと奈良坂くん、当真くんの狙撃手組が援護して人型に少しだけどダメージを与えているわ』


「……なるほど。行けそうだねそのメンバーなら大丈夫かな?ありがとう連ちゃん!連ちゃんも頑張って」


『それはこっちの台詞よ。頑張ってね』


「うん!じゃあね」




連ちゃんとの通話は切ったけどもまだ隊の通信は聞こえるのでそれを聞きながら街を移動する。うーんやっぱりみんな人型に苦戦しているようです。まさかあんなに投入されるなんて誰も思っていない。相手が今回は金の雛鳥……知佳のようなトリオン量が多い子を捕まえようと隊員捕獲に特化した新型を投入しているから切羽詰まっているのかもね。




「なら、少し急いだ方がいいかもしれない……」




こっちが守るために本気でかかればかかるほど、見下していた相手も余裕がなくなって本気になっていく。このまま本気同士でぶつかり合えば必ず何かが起きる。大変な事がね。




「……あれ?秀次?」


「…八城真李愛…!」


「もしかして……悠一が言っていたのは秀次の事だったの?それなら悠一の言葉……納得できるかも」


「迅だと?」




悠一という言葉に露骨に反応した。つまりは私が言っていた通りだという訳か。ちなみに私がさっきから話しているのは数日前、悠一が部屋にやってきた時の話。










「入るぞー真李愛」


「もう入ってるから……で、どうしたの?」


「あー……座っていいか?」


「長くなるってことね…どうぞ。お茶いる?」


「それは大丈夫」




そう言ってぼんち揚げの袋を開けるけど、それ食べるなら飲みもの用意した方が……喉乾くよね?まあでも本人がいらないって言うならいいか。




「話ってのは例の侵攻の話だ。真李愛にお願いがある」


「なに?」


「この侵攻でメガネくんがピンチになる」


「修が…?」


「ああ、その時に助けられるのが真李愛ともう1人いる……だけどそのもう1人が厄介でなーこっちでもなんとかするが真李愛にはメガネくんを助けるというよりももう1人をメガネくんを助けるように説得して欲しい」


「説得か……分かった。それにかかってるんでしょ?悠一がわざわざ言いに来るんだから」


「ああ」


「なら、私も可愛い後輩のためにひと肌ぬぐよ」










と、いうのがあった。だから私はここに来たわけなんだけども相手は秀次かー私の話をちゃんと聞いてくれるかな?でも、やるしかないか。




「悠一から話は聞いてるよね?協力して欲しい」


「…玉狛の後輩だろ。玉狛のしまつは玉狛でつけろ」


「……相変わらずだね、秀次。とりあえずまだ敵は溢れている…移動しながら話そう」




ここで止まって時間を無駄にするのはもったいないしそんな時間があるかすら分からない。それにしても、遊真の黒トリガー奪取の時から少しは変わったかもしれないと思っていたけどやっぱり人間の考えはそう簡単に変わらない、か。




「ねえ、秀次。秀次は自分みたいな人は増やしたくないって思わない?」


「……なんだと?」


「秀次も聞いてるよね。私は両親を亡くした…復讐ももちろん考えたよ……でもある理由でやめた。それはまた、ね。それから私は私と同じ苦痛を味わわせたくないし、また大切な人を亡くしたくない……だから私はボーダーに入ったの…守りたい人増えちゃったけど後悔はしてないよ」


「……」


「秀次はお姉さんの事好きだったんだね……好きじゃなきゃ復讐考えたりしない。それに優しい。当たりはキツイけど私は秀次が優しい人間だと思ってる。だから私はなんだかんだ言いながら修を助けてくれるって信じてるよ?」




さて、もうそろそろ近いはず……私ができる限りはした。後は秀次が動いてくるかどうかは秀次次第。でも、秀次なら大丈夫だって信じてるよ。




「……来るのが遅かったかな?」


『陽介くんがC級を連れてくるわ人型近界民からガードして』


「……標的を確認した処理を開始する」


「大丈夫?修……それは千佳?」


「は、はい!なんとか」


「……………………チッ……あくまで俺を使う気か……!迅……!」




忌々しそうに言う秀次をちらっと見る。悠一に使われるのがよっぽど嫌ならしい。でも、目の前に人型がいるから秀次は絶対に逃げたりはしない。




「み……三輪先輩!千佳を……こいつを頼みます!キューブにされたうちの隊のC級です!ぼくはここで近界民を食い止めます!千佳を……千佳を助けてやってください!」


「修っ!近界民は私にまかせて千佳を……って秀次!?」




秀次が突然、修に向かって鳩尾に膝蹴りをくらわす。え、ちょ、そんなに嫌いなの!?そんなに悠一の指図を受けるのが嫌!?玉狛が嫌い!?




「知るか他人に縋るな」


「……なんだ?おまえはあいつの味方じゃないのか?」


「黙ってろ近界民。どちらにしろおまえは俺が殺す」




秀次が人型に向かっていった。私と連携する気は無しですか。入ってくるなオーラが凄いし私を入らせないようにしてる。それはそれで相手が私に気を取る時間を与えないから奇襲をかけやすいけど。




「修、今のうちに行きなさい。あなたにあれを足止めするのはまだ無理だよ」


「……分かりました」




修を先に向かわせ私は秀次と対峙している近界民に襲撃するタイミングを伺う。頭に完全に血がのぼっちゃってるなー。さて、鳥を浮かせる能力使いとワープ使いがいるからなかなか難しいけど、やるしかない。叫ぶとバレてしまうから通信機を使うことにする。




「秀次、交代して」


『邪魔するな…!』


「邪魔なのは秀次だよ。A級部隊の隊長のくせに冷静な判断ができてない。頭に血がのぼりすぎ」




カメレオンをギリギリまで使って秀次を引き剥がして人型近界民に今度は私が向き直る。相変わらず余裕の表情。




「ほう…面白いな」


「それはどーも。その余裕すぐになくなりますよ」




近界民が動きまわり住宅街へと上手く誘導させられてる気がする。さっきから逃げてばっかりだからね。後ろにいる秀次は何も言わずについてきてる。きっとさっきの私みたいに機会を伺っているんだろうけど。




「っ、修…!修と合流してしまった。レプリカ!本部までどれくらい!?」


『あともう少しだ』




さっき私の元にやってきたレプリカに話かける。あともう少し……それまで持ち堪えればいいけども。




「秀次頭冷えたー?」


「……うるさい」


「冷めたっぽいね。嫌かもしれないけど2人で行くよ」


「嫌だ」


「拒否権なし!」




そういうと秀次は黙った。嫌々ながらそれしかない。私が曲げるわけないだろとか思ってるんだろうなー。まあ、いいけど。




「修、聞こえる?」


『あ、はい!聞こえます!』


「早く知佳と一緒に本部に入って!」


『は、はい!』




修がトリオンキューブになった千佳を運びながら本部へと走る。それを逃がさまいと近界民が鳥で攻撃をしかけるがレプリカが生み出したラービットと私のアステロイドで修を守る。ラービットがやられてワープ使いの攻撃が修の身体を貫き、また鳥が攻撃をしかけようとしたが、修がトリガー解除し攻撃から免れる。




「チッ……!ミラ!やつを……」


「お前らの相手は俺だ!!」


「俺たち、ね!」


「煩いぞ」




私達の後ろにワープホールが現れたが、すかさず私と秀次が変化弾をワープホールに放ち人型2人の身体を貫く。




「くだばれ」


「隊長!!」




秀次が人型にとどめを刺そうとしたがワープ使いがワープホールを使ったのが見えて秀次を止めようと秀次を掴むが間に合わず、私たちは離された。




「引き離された…!ごめん!もっと早く動いていればっ……!」


「「ワープ女」のトリガーか……!豆粒!!敵の位置を教えろ!!!」


「秀次何をするつもり…?」




秀次はトリガー解除したかと思うと、風刃……つまり黒トリガーを起動して攻撃を放つ。まさか、秀次が持っていたとは私は聞いていなかっただけに驚いた。これが悠一が言っていた交渉手段?




「命中した」


「あの怪我ならもう無理ね……良かった……」


「!?」


「秀次どうかし……レプリカ!?」




秀次の手の上に落ちるようにのったレプリカを見ていたら、空が晴れ近界民が去っていたのに気付かなかった。どうしてレプリカは落ちたの?私の頭の中は突然の仲間の事態に混乱していた。



私なりの




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