腕の中で静かな寝息を立てるFirst name。
ベッドサイドの仄かな灯りを受けて輝くのは、彼女の左手の薬指だ。
生涯を共に在りたい、という願い。
丘の上の教会で今日、彼女は受け入れてくれた。
───こんな日が訪れるなんて、夢にも思っていなかった。
自分で選んだこの仕事には誇りを持っていた。
誰に何を言われようと、真摯に向き合ってきたという自負はある。
けどそれだけだった。
独りで、何かを持て余しながら生きていたのは事実。
虚無感とでもいうのだろうか。
それすらもどうでもよかった。
そんな日々にどこかで諦めのようなものを感じても、疑問を抱いたことはなかった。
馴れ合いは好まない。
他人に心を明け渡すことなど考えられない。
そう思っていた。
けれどFirst nameはいとも簡単に俺の中に入ってきて。
あっという間に心を、全身を満たした。
失くしてしまったら、きっと息が出来なくなるくらいに。
俺を強くも弱くもさせる唯一の存在。
全てを賭けて守りたい、大事なひとだ。
First nameの手に自分のそれを重ねる。
指輪を選んでいた時の幸福感と少しの不安を思い出して、思わず口許が緩んだ。
柄にもなく悩んで決めたそれは今、First nameの指で誇らしげに輝いている。
込められているのは願い。
そして誓いでもあり、約束でもある。
甘美な束縛を受け入れてくれたFirst nameを。
自分を愛してくれた彼女を、幸せにしたいと心から思う。
───そんなひとに出逢えたことを、たまらなく嬉しく思う。
重ねた手を離さぬよう、 そっと握った。
ひどく満たされた気持ちで、俺はいつまでもFirst nameを見つめていた。