「…ごめん。付き合えない」



部活に行こうと教室を出たところで呼び止められた。
なんとなく見覚えのある女生徒は1年の時のクラスメイトだった。



「部活に集中したいんだ」



ここじゃちょっと、と言われて移動した柔道場の裏で告白された。

柔道に力を入れたいのは本当だ。
けど全部じゃない。

こういうことは何回も経験した。高校に上がってからは特に増えた。正直なところ慣れている、と言い切ってしまったら俺は嫌な男なんだろう。

だが今日ばかりは小さく、けど確かに心を刺すものの存在を否定できなかった。



泣くのを必死に堪える姿があいつに似ていたから。



もう何年も会っていない思い出の中の存在に、俺はまだ囚われている。



忘れたい。
忘れられない。
忘れたくない。



姿を重ねることに罪悪感を抱くのは目の前の彼女に対してなのか、
それともあいつに対してなのか。俺はわからない。



あまりにも陳腐で独善的なそれから逃げるように、静かに踵を返した。



「…最低だな俺は」



いつの空にも在り続ける太陽が、罰するように背中を焦がしていた。












  

















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