X'mas一色に染まった夜の街。
誇らしげに輝く街灯をぼんやりと眺めながら、私はひとり駅へと向かっていた。
昴さんと連絡を取らなくなってから、十日が経とうとしている。
まめな彼はいつも時間を見つけては電話やメールをくれるけど、今はそれも困難な程の激務を強いられているらしい。
すごく寂しいけど、忙しい彼の負担になりたくないから、私も自分から連絡するのは我慢する。
こういうことは過去にも何度かあった。
だから大丈夫。
やがて訪れるその日を思い描けば耐えられる。
決して慣れはしなくても。
だけど、12月の雰囲気のせいだろうか。
今までよりずっとつらい。
彼の声が聞きたくて。
会いたくて会いたくてたまらなかった。
着信にすぐ気付けるようにと握り締めて持ち歩くのが癖になった携帯を、今にも開いてしまいそうな自分がいる。
(…だめ)
叱咤するように強く握る。
パンダのストラップが悲しげに揺れた。
そのとき
ふわり、と。
全身で覚えている、大好きな──
昴さんの香りが鼻を掠めた。
顔を上げて勢いよく振り返る。
けれど私の目に映ったのは、遠ざかっていく見知らぬ男性だった。
(バカだな…私)
いるわけないのに。
視界が滲む。
泣いちゃだめ。
泣いたってつらくなるだけだ。
待つって決めたんだから、もっと強くならなきゃだめなのに。
痛いほど下唇を噛み締めたとき──
手の中の携帯が震えた。
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