「ン、っ…ぁ」
衣擦れの音と、
昴さんの荒い息遣いが耳に響く。
「First name…」
なぞるようにゆっくりと掻き回される。
いつもとは違うゆるやかなセックス。
確かめるように、あるいは刻み付けるように。
快楽の糸は静かに絡まり、二人をひとつに縛りつけていく。
五感すべてで昴さんを感じる。
繋がった場所から広がる熱。
──彼が生きている証。
私は絡められていた指を解き、昴さんの左肩へと手を伸ばす。
そこにはあるのは痛々しく巻かれた包帯。
「…っ」
触れられた痛みに、昴さんは僅かに息を漏らす。
それでも彼は腰を揺らし続けた。
汗ばんだ背中ごと、ぎゅっと抱き締める。
「…生きてて…よかった」
快楽の狭間で途切れ途切れに呟く。
独り言なのかそうじゃないのか自分でもわからない。
「…おまえを、置いて逝くわけねぇだろ…?」
耳元で響く、吐息混じりの掠れた声。
昴さんは私を抱き込むと強く腰を突き入れた。
命のはじまる最奥で、昴さんと深く深く繋がる。
「ゃ…ぁあッ…!」
波が私を連れ去ろうとする。
この熱が冷めてしまったら私たちは離れなくてはいけないのに。
いっそこのまま、ひとつに溶けてしまいたいのに。
「ゃだ…まだ…っ」
熱い体に強くすがる。
「First name…」
この世に絶対なんか無いって、私は知っている。
「──あぁ…ッ…!」
First nameがようやく寝息を立て始めても、俺は髪を撫でる手を止めなかった。
どうか少しでも安らかな夢を。
果てのない現実は何度でもお前の心を抉るだろう。
気休めにすらならないとわかっていても、
それでも俺は言い続ける。
確かなものなど無くても。
「…ごめんな…」
きつく、瞳を閉じた。