壁に押し付けた体は自分よりずっと柔らかかった。
ほんの数秒だけ重ねた唇を離す。
鼻が触れそうな距離を保ったまま二つの視線が絡み合う。
「…俺の女になれよ」
熱を籠めた声で低く囁く。
「お、んなって…」
俺を映した瞳が揺れる。
「お前が欲しい。俺だけのものにしたい」
長い睫毛を震わせ、First nameは目を伏せようとした。
だが逃げることなど許さない。
彼女の顎に指をかけ、戸惑う瞳を己のそれで強く貫いた。
「どうして、私なんですか」
問われたところで答えはない。
理由に価値などないだろう?
俺の体はこんなにも熱い。
「──お前が教えてくれよ」
二度目の口付けは深く。
奪うように貪った。
重ねた吐息が弾む頃、シャツを握り締めていた手は首に回され
世界は時を止めた。