下半身にだけ服を身に付けた昴さんが、備え付けの冷蔵庫の扉を開ける。
いつもと違うベッドに横たわったまま、私はそれをぼんやりと見つめていた。
少し迷った指先が取り出したのは緑色の瓶。
彼は手早く栓を開けるとそのまま口をつけて煽った。
喉仏が上下し、月明かりに照らされた液体が瓶の中で踊る。
「…それ、何ですか?」
手の甲で口元を拭う昴さんに尋ねた。
「ジンジャーエール」
答えながらベッドへ戻ってくる。
「私も飲みたいな」
「辛いぞ」
裸の胸を布団で隠しながら起き上がる。
「辛いの?」
ん、と差し出す昴さんから瓶を受け取る。
「ウィリキンソンだからな」
目を凝らしてラベルを見ると、確かに私の知らない名が刻まれていた。
慣れ親しんだ甘味を持つメーカーのものではない。
「へー…初めて飲みます」
彼と同じように勢いよく煽る。
その瞬間、強烈な辛味が鼻へ抜けた。
「うっ…!」
慌てて瓶から口を離して突き返した。
「だから辛いっつったろ?」
涙目で昴さんを見上げる。
「よく一気飲みできますね!」
「美味いじゃねーか」
返された瓶に彼は口を付け、飲み干した。
私は刺激でピリピリしている舌を出す。
「大人のジンジャーエールだ…」
「かもな」
不意に顎に掛けられた指で上を向かされ、視線がぶつかる。
そして唇を塞がれた。
「ん…」
舌を絡め取られる。
覆い被さられてベッドに倒れ込んだ。
強く吸われては甘く噛まれ、息を継ぐ間もなく口内を犯される。
頭がぼうっとして何も考えられない。ただただ彼に翻弄される。
やがて離れた唇の間を銀の糸が引いた。
「…まだピリピリするか?」
低い声に滲むのは濡れた色。
けれど私は、それ以上の潤みと期待を湛えた瞳で昴さんを見上げた。
「…する…」
艶っぽくも男らしい笑みを浮かべ、彼は再び唇を寄せた。
首に腕を回して目を閉じ、肌を辿り始める指先に熱を預ける。
灼けるような刺激に呑み込まれて───
私たちはひとつに溶けた。