深夜の帰宅。
リビングに入り上着を脱ぎ捨て、腕時計を外した。
時刻は3時に近い。
煙草に火を点け、開放感を謳う大きな窓から東京の夜景を眺める。
女を抱いた後、どんなに夜が深くなろうとも昴は必ず帰宅した。
朝まで一緒に過ごすことなど彼には考えられなかった。
それを求められることも多かったが、女の都合など知ったことではない。
玩具かステータス。
いつだったか、かつての同僚に酒の席でそう言ったことがある。
最低だなと大して興味も無さそうに評された。
誰になんと言われようとも俺は変わらない。
変わる必要もない。
今も、そしてこれからも。
次の警護対象は内閣総理大臣の一人娘だ。
接触は明日。
穏やかに過ごしてきたであろう彼女の生活は明日で一変する。
女好きの後輩は同情していたが、俺には関係ない。
短くなった煙草を揉み消した。
世界を変える出逢いがすぐそこにあることを、彼はまだ知らない。