普通。


それがFirst nameを形容するのに最も相応しい言葉だ。


こいつは街中で目を引くようなタイプではない。
駆け引きが上手いわけでも決してない。


総じて平々凡々。


けど、こいつには先天的に男を狂わす能力が備わっているんじゃないかとたまに思う。


上司、部下、横分け、その他諸々。
出会う男は次々と感化され囚われていく。


世間でいう小悪魔ってやつだろうか。

とにかく自覚が無いからタチが悪い。



隣に座る恋人を横目で見ながら、俺はそんなことを考えていた。




テレビに夢中になっているFirst name。

買ってやったばかりのうさぎさんのクッションを抱いて、時折おかしそうに声を立てて笑う。


見逃したバラエティ番組の再放送があるとか言って、せっかくの休日に俺を無視してこれだ。
テレビなんかの何がそんなに面白いのかわからない。

…まぁ楽しそうだからいいけど。




(ひとりで)盛り上がっているFirst nameの頬はほんのり桜色に染まって、すっかり緩んでいる。

少し開いたままの口と、思い出したようにぱちぱちと瞬きをする様子が、また。

惚れた欲目だろうか。


──いや、違う。



やっぱ可愛い。







「な、何ですか?」


俺の視線に今ごろ気付いたFirst nameはビクッと体を震わせた。
まるで小動物のようだ。



「いや別に。つーかお前さ、今まで付き合ったヤツ本当にいなかったわけ?」

「え…いないですけど」



今さらどうしたんですかと首を傾げるFirst name。



「本当かよ?」



露骨に疑わしげな目を向けてやる。
First nameはわかりやすく慌てだした。



「ほんとですよ!昴さんが初めてですから!」



ふーん、とわざとらしく目を細める俺。



「セックスだけじゃなくて?」

「セッ…!」



ぼんっと赤面した。


こいつは本当に楽しい。






あーあ!と大仰な声を出して、First nameの頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜながら立ち上がる。
ひゃあっと悲鳴が漏れた。



「可愛いFirst nameちゃん、夕飯何食いたい?」

「かわ…え?…えー、うーん、じゃあ麻婆豆腐がいいです」




何が何だかわからないままでもしっかりリクエストしてくるFirst nameに、俺はくくっと笑った。





あー。






やっぱこいつ好きだわ。






  

















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