「セミ」
「耳」
「みみずく」
「唇」
「るー、るー、ルイジアナ州!」
「うなじ」
「JAXA」
「鎖骨」
「…ツーリズム」
「胸」
だるそうにソファの肘掛けに頬杖を付いている昴さんが、私の胸元にちらりと視線を寄越した。
「…ね…寝ぐせ」
「背中」
「…かまぼこ」
「腰」
その目線が、言葉と共に下へ下へと落とされていく。
「……あの、昴さん」
「尻」
「……」
「太もも」
「昴さんっ!」
「何だよ」
私は耐えきれなくなり、隣に腰かける彼に向かって声を上げた。
「何なんですかそれっ!」
「しりとりだろ? お前がやりたいっつーから付き合ってやってんだろうが」
「内容が変です!」
「どこがだよ」
「む、胸とか腰とか…何なんですかもう」
「First nameのカラダで好きなとこ」
「…はっ!?」
さらりと発せられた問題発言に私の思考回路は停止した。
「だから、お前のカラダで好きなとこだって」
「かっ…! す…っ!」
「つーか嫌いなとこなんか無いけどな」
昴さんはアワアワする私の顎を指で掬うと、その端正すぎる顔を静かに近付けてきた。
彼の吐息が顔にかかり、慌ててぎゅっと目を瞑る。
だが、触れると思われた柔らかなものは───
「いけね。アップルパイの焼き加減見てこねーと」
昴さんはそう呟くとあっさりと体を離した。
目を開けると…そこには意地の悪い笑みを浮かべた顔。
彼はぽかんとしている私にお構いなしに立ち上がると、クマさんのエプロンを翻してキッチンへと行ってしまった。
か、からかわれた──…!
「…昴さんのばかっ!! すけべ!!」
勢いのまま手元のクッションを彼の背中に向けて投げつける。
飛距離が足りなくて床に落ちた。
もう絶対、昴さんとしりとりなんかしない。
そう誓う私だった。