「昴さん、おかえりなさい」

「ただいま。First name」



玄関まで出迎えてくれた愛妻の唇にキスを落とす。



「先に寝ててよかったのに」

「もう…そんなことできませんってば」



脱いだ上着と鞄をリビングに置いて、寝室へと向かう。


静かにドアを開け、オレンジの明かりが灯る室内へ足を踏み入れた。
耳をすませば小さな寝息が聞こえてくる。


振動で起こしてしまわないように気を付けながら、ベッドに腰掛けた。



「パパが帰ってくるまで起きてるって頑張ってたんですけどね。やっぱりだめだったみたい」



反対側に腰掛けたFirst nameはくすくすと笑いながら、少しはだけていたタオルケットを掛け直してやる。



「そうか…」



すうすうと可愛らしい寝息を立てている愛娘の姿に目を細めた。
額にかかる柔らかな髪を払ってやるとくすぐったそうに身じろぐ。


小さな右腕には、自分が作ってやったパンダのぬいぐるみがしっかりと抱かれていて。


愛しさが胸に溢れる。



「明日たくさんお祝いしようね、だって」



これ以上無いくらいに優しい微笑みを浮かべて我が子を見つめるFirst name。
慈愛に満ちた母の顔を、心から美しいと思う。


出逢って、恋をして、家族になって。

母となり父となった今でも、彼女への想いは変わらない。



「もう日付変わっちゃったけど…」



ベッドサイドの時計を一瞥してから、ふわりと笑った。



「お誕生日おめでとう、昴さん」



「…ありがとう」



数年前のあの頃には思いもしなかった。


自分の存在を喜んでくれる人がいることが、こんなにも幸せだなんて。



この命があることに。

巡り逢えた奇跡に。

愛しき存在に。


すべてへの感謝を胸に、



俺はこれからも生きていく。



確かな幸せを噛み締めるように、あるいは誓うように。


そっと、瞳を閉じた。



Happy Birthday Subaru.











  

















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