カサンドラ看守日記
○月×日
今日からカサンドラ勤務になった。トキとかいう拳王様の弟の監視、世話を任された。
ちゃんとやっていけるか心配だが、先輩や同僚は「大丈夫大丈夫」と云ってくれている。
頑張ろう。
○月△日
監視と云っても、トキは動かない。寝てるのか判らないが、全く動かない。
死んでるのか? と思って声を掛けたら「何だ?」と返事をした。
良かった、生きてた。
○月□日
今日、拳王様の義弟ジャギがやってきた。檻を殴り壊して勝手に中へ入るし、あの人最悪だ。
でもトキはジャギと普通に雑談を交わしていた。ジャギも暫くしたら帰って、壊れた檻の中でトキはまた動かなくなった。
今なら逃げられるのに。
○月▽日
またジャギが来た。檻、直したばかりなのに。
鍵を開けるから壊さないでと懇願したら、了承してくれた。話せば判る人だ。
今回の会話の内容は、ケンシロウについてだった。どうしたら勝てるかとか、そういうのだった。
何気に「焼けば?」とか云ったトキが怖い。
×月○日
今日は一日暇だった。
暇だったので、トキに話し掛けてみた。
無視されるかと思っていたが、案外色々喋ってくれた。云ってることも至極まともだった。
この前の「焼けば?」発言は聞き間違いだったのかも知れない。
×月▼日
前言撤回。やはりトキは普通じゃなかった。怖い。
×月▲日
今日はトキそっくりの男がやってきた。双子かと思うくらい似ていたが、髪は黒かった。
そしてこいつも檻を壊しやがった。蹴り飛ばすものだから、檻の一部がもげた。ああああああああ後で溶接しなきゃ、畜生。
しかも雑談しに来たというより、トキに文句ばっか云ってるし。何なのあの男。
×月◆日
トキに昨日の男について聞いてみた。アミバという名前らしい。あと双子ではないそうだ。あんなに似ているのに。
「血は繋がっていないから、何をしても合法だ」とか云ってたけど、お前は何を考えているんだ。
×月◇日
今日はジャギが来た。何か妙に悟りを開いたような雰囲気だった。
ケンシロウに何かされたみたいだけど、小さな声でぼそぼそ云ってたから会話内容が判らない。
トキは「幸せになるが良い」とか云ってたけど、本当に何があったのだろう。気になる。
×月●日
今日はトキと一緒に将棋をした。だって看守俺しかいなくて暇だったんだもん。
トキはかなり強くて、一回も勝てなかった。悔しい。
△月◇日
またあの男が来た。名前はアミバだったかな。
檻壊さないでと云う前に、また蹴り壊しやがった。話聞けや。
またトキに文句かと思って聞き耳を立てていたら、トキに「ちょっと席を外してくれ」と云われた。
まあ逃げることはないだろうと、二人を放置して外で昼寝をした。
暫くして戻ったら、アミバが帰ろうとしているところだった。来た時は真っ白に近かった肌が、薄桃色になってた。それに服が何か乱れてた。
おい。俺のいない間、何をしていた。
△月●日
またアミバが来た。今日は文句でも怪しい密会でもないらしい。
ケンシロウがどうだとか云っていた。またか。
トキがまた怖いこと云うのかと思っていたら、予想を斜め上回ることを云いやがった。
「私の傍にいろ」って。って。
って。
しかもアミバも頷くなよ。帰れよ。
食費どうしよう。
□月▼日
今日はアミバと将棋をした。あいつ、手加減とかいう優しさがない。トキは手加減してくれたのに。酷い。
まあ多分手加減されても俺負けるだろうが。
□月◆日
今日、先輩が遊びに来た。アミバを隠そうかと思ったけど、トキが事情を説明したら案外大丈夫だった。
事情とか云って色々喋ってたけど、要約すれば「アミバは私の嫁だから傍に置いてる」ってことだ。嫁て。
嫁て。
何考えてんのあの病人。
□月◎日
今日はやけに外が騒がしい。
何か問題でも起こったかと思って様子を見に行こうとしたら、トキとアミバに止められた。
仕方ないから今、こうして日記を書いている。
でも大丈夫なのかな。何か悲鳴が聞こえるし。いや、毎日聞こえるけど、今日のは何か違うというか。
とにかく早く明日にな
◇月×日
前に書いた日記の最後が途切れているのは、まあ色々あったからだ。
あの後、ケンシロウが仲間を引き連れてやってきた。
何故かジャギもいた。
トキを助けに来たとか何とかで来たらしい。ヤバいと思って戦おうとしたら、またトキとアミバに止められた。
「命は投げ捨てるものではない」とか「死ぬぞ」とか云われた。確かに俺は弱いけどさ、そんな勝率0扱い止めてよ。
そんな訳で俺は温和しく道を譲り、トキ達が逃げるのを黙って見ていた。
これは拳王様に殺されるなと思っていたら、去り際に「生きろ」とトキに云われ、思わず騒ぎの混乱に乗じて逃げてきちまった。
今はとある小さな村に住んでいる。後から先輩や同僚も逃げてきて、一緒に土地の開拓に精を出している。
色々あったけど、今の生活は悪くない。
さて、今日も畑の世話に行かなきゃ。
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