幸せの数




幹部達…いや、ヴァリアーの隊員達は皆素朴な疑問を抱いていた



隊員の中で最も幼い、まだあどけなさの残るベルフェゴール

幼いながらその紛い稀な戦闘センスからヴァリアーへの入隊を許されたのだが
強かろうが才能があろうが子供は子供
怖いモノはあるに違いない
ましてや大の大人でも怖いモノをまだ幼い彼が怖くない筈がないのだが

彼はどうも怖がっていないようなのだ


「ベルちゃん、ベルちゃんはボスの事怖くないの?」
「ん?ボス?何で?怖くないよっ」
「(あっさり答えられちゃったわ)」

「オカマは怖いの?」
「そりゃ怖いわよー。でもその怖い所がボスの魅力よねーん!」
「みりょく?」
「怒られたいって思っちゃうのよー!」
「…(王子なんかオカマのが怖い)」

「って、あたしの話はいいのよっ、ほら、ボスって怖い顔してるし結構怒りっぽいじゃない?」

「王子ボスの目好き!綺麗だしウサギみたい!」
「(子供っていろんな意味で怖いわ)」


ただ単純に怖さを理解していない
そんな可能性が全くないとは言えない寧ろその可能性の方が高いかもしれない

歩いて居るボスに後ろからタックルしたり
居ない隙にボスの部屋に忍び込んでかくれんぼを始めたり
はたまた高級ワインを触ろうとしたら手を滑らせて落とすなど普通の奴なら今頃生きていないだろう

何を思ってボスが彼を見逃しているのか分からないが…


「…たまに怒ったボス怖いけど」
「あら、ベルちゃんが怒られてる所なんて見たことないけど」

「危ない事したらボス怒る」
「(ヴァリアーに入っておいて今更何が危ないって言われてるのかしら)」

「でもそれはボスが王子がの事大切って思ってるからだよね?」
「え、あぁ…そうねっ」

「だから王子はボスに怒られても恐くないの!
それだけボスが王子の事愛してくれてるって事だから!」


彼の言っている事は『大好きな人には怒られたって嬉しいの!』という普通の人は距離をとりたいと感じるリア充と同じ事だ

満面の笑顔でそう言ってのける子供なんてこの地球上彼の他に居るのだろうか

愛されてるから本気で怒ってくれる
愛されてるから本気で泣いてくれる
愛されてるから本気で心配してくれる
愛されてるから不格好でも優しさをくれる


そんなキラキラ輝いているような感情はきっと誰もが恥ずかしくて、心の奥底に隠して
いつの間にか無かった事にしてしまう


それを素直に受け入れ、言葉にできるだけ彼だからこそ口数が少なく、怒りっぽいザンザスにも
臆する事無く接する事が出来、尚且つ愛されるのだろう



結果、彼はやはりザンザスは怖くなど無いのだ

子供の純粋さというよりは彼自身の純粋さ、素直さだろう
きっとヴァリアーには彼に勝る者は居ないだろうと内心で感じつつ

彼の様に純粋に人の気持ちを受け取ったのはいつが最後だっただろうかと思い返した時全く浮かばなかった事に少し凹みつつ

なんとか変わらなくてはと意気込んだ





そんな自称ヴァリアーのおかあさん
ルッスーリアなのでした





......

(う゛ぉぉぉい!気色悪いぞぉこのオカマ野郎がぁ゛!!)

(あらやだスクアーロったらあたしが大好きだからそんな事言うのねぇ!)

((ガチで気色悪いぞぉ))




幸せの数

(それは涙の数、笑顔の数、愛情の数)





← →
Back